2001年12月17日
医療改革の取り組みと、情報革命との接点で重要なのは、まず患者への治療方針にかかわるインフォームド・コンセントでの役割ではないでしょうか。
インフォームド・コンセントは「医療は本来POS(Patient oriented system)であるべきで、医療を受ける側にその主体がある」という立場から、声高に主張されています。
私は、この問題提起を、今まで余りにも医師主体のDOS(Doctor oriented system)により治療方針のほとんどが決定されてきたことを反省すべきである、という視点から捉えています。
しかし、すべてがPOSに取って替わるとは考えられません。
すなわち、治療方針の決定は、あるときはやむなく家族にゆだねられたり(意志の伝達ができない、本人に正確に告知されないケース等)、あるいは必然的に、医師側にその判断がゆだねられたり(緊急医療等)するものだからです。
情報革命で、患者さん個人が、医師レベルの情報を得ることが可能になったとしても、完璧なるPOSはあり得ないということです。
日々診療に携わっておられれば、これらのことは、容易に理解していただけるでしょう。
要するに、POSとDOS、いずれの考え方も偏ることなく常にバランスをもって考え、「本来、両面の考え方が必要なのだ」との認識が大切なのだと思います。
主体性も守るべきルールも医師、患者さん双方にあるということだと思います。
メディアの伝達手段は、アナログからデジタルへ移行することに、異論はありません。
しかし、アナログなくして創造することはできません。
情報は生まれそして伝わる、そして人間が考え判断する。その過程において両者が必要なのです。
今迄の、アナログ手段だけでは不十分で、かつ非効率なところをデジタルが補完する。
この状況が、医療の現場でも求められているのだと思います。
たとえば、さきほどの患者へのインフォームド・コンセントを得る場合、デジタル的手段で、正確により多く、患者さん主体で、情報を獲得する権利を不可侵のものと保障しつつも、医療を提供する側は、患者さんが情報を選択する場面を支えなくてはなりません。
情報伝達は、効率良く、双方向的で正確であるべきです。
そして、益々社会が発展してくると、そのスピードの早さが求められる、ということでしょう。
しかし、デジタルも「過ぎたるは及ばざるがごとし」の面があることは確かです。
アナログによる創造的発想と、効率は悪いかもしれないが、心温まる情報伝達(医師と患者間の対話)は、今世紀中も今までと変わらず、大切なものとして残って行くと思います。