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再建歯周外科のためのストラテジー(1) 術前の歯肉のコントロール

2001年10月15日

歯周病の治療は、従来の歯科治療と異なり、患者側と医療提供側とが相互参加する医療と言われている。

言い換えると、患者側の疾患に対する認識と理解、さらには治療に対する姿勢と協力等が得られなければ成功しない治療である。

当然、原因除去のプラ-クコントロールが達成されなければ、治療成果が得られない。

とくに外科手術の適否は、患者の歯肉縁上プラ-クコントロールと術者の歯肉縁下プラ-クコントロールの達成された後に、両者のニーズと技術レベルとの中で決定されるものである。

このような背景を認識しながら再建歯周外科のためのストラテジーについて、以下のような項目について、臨床に役立つ情報提供を行うことにする。

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第1回 術前の歯肉のコントロール
第2回 手術1~2週前の準備
第3回 手術中の管理
第4回 基本テクニック1“切開・剥離”
第5回 基本テクニック2“手術部の処理”
第6回 基本テクニック3“縫合”
第7回 GTR法における自家骨移植
第8回 MGS法におけるテルダーミスの応用
第9回 創傷治癒と術後管理
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【第1回 術前の歯肉のコントロール】——————————–

初期治療における、歯肉の炎症のコントロールが、すべての治療の基本となる。

歯肉の炎症の捉え方に差異はあるが、手術前にはプロービング時やポケット辺縁歯肉擦過時に出血しないことが重要である。

炎症存在下での歯周外科のリスクは、歯肉退縮に伴う根面露出や知覚過敏、縫合不全による上皮の根尖側移動や治癒不全等であり、審美的要求のある前歯部や小臼歯部にもしばしば認められる。

このことは、歯肉の厚みや幅に関連すると考えられる。

では初期治療についてみると、歯周組織の状態を把握してスケーリングやルートプレーニングを実施しているであろうか。

たとえば、歯肉の薄い下顎前歯部や歯肉幅の少ない下顎小臼歯について、出来るだけ軟組織を損傷させないよう慎重かつ丁寧に行うとして、通常のキュレットを使用するか、もしくはミニファイブやオオタタイプのような刃先の短いものを使用するかの選択である。

初期治療時の歯肉退縮や角化歯肉の狭小化を極力防止するこが、戦略的な再歯周外科における“角化歯肉の保存”として重要である考えられる。