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厳しい歯科医院環境下で、院長がやってはいけないこと【3】スタッフに経営者感覚を求めてはダメ

2013年03月01日

【1】リスクを背負う経営者とリスクを背負っていないスタッフの違い

「スタッフが、もっと経営者感覚を持ってくれれば・・・」

歯科医院経営者の口から、そんなセリフを聞くことがよくあります。
少しでもスタッフに経営者感覚を持たせようと、自分が読んで勉強になったり、感動した本を渡したり、セミナーや研修に参加させたりします。
スタッフに感想を聞くと「とても勉強になりました」というし、確認すると内容もしっかりと理解できています。
ところが、相変わらず仕事は指示待ちだし、経営状況が厳しくなっても、まるで他人事。
権利は主張するけど、経営者から見て、義務は果たしていないように見えます。
つまり、自分はスタッフが経営者感覚を持てるように、いろいろと手を尽くしているのだけど、スタッフが経営者感覚を持ってくれないというのです。

断言しましょう。

スタッフが経営者感覚を持つことはできません。
ですから、それを持たせようとすること自体がナンセンスだとさえいえます。

ご自身のことを振り返ってみてください。
勤務医の時に、経営者感覚を持っていたでしょうか。
その地域で、生涯歯科医院をやっていく経営者と同じ感覚で、患者様に接し、より良い関係を築き、その患者様のお口の健康に責任を持とうとしていたでしょうか?
毎月の支払いがどれくらいあるのかを理解し、利益率を意識しながら素材を使い、収益目標をクリアするために、どうしようかと心を砕いていたでしょうか?

失礼かもしれないが、ほとんどの歯科医院経営者の答えは「ノー」でしょう。
将来、経営をすることになる勤務医ですらそうなのですから、その他のスタッフに経営者感覚を持たせることが不可能だということは、誰の目にも明白です。
その地域で生涯、医院を運営し、借金を背負って経営をしている経営者と、いつでも他の職場に移ることができ、リスクを背負っていないスタッフでは、ベースが違います。
経営のことをどんなに勉強させても、スタッフと経営者ではベースが違うので、本当の意味での経営者感覚を持たせることはできないのです。

【2】スタッフにはサポーター感覚を求めよう

スタッフに「経営者感覚」を求めるのではなく、「サポーター感覚」を育てることです。

サポーターとは、応援するだけでなく、チームを支えようとする存在ですから、歯科医院経営者の夢やビジョンに共感し、事情や状況を理解した上で、その実現を支えるために協力をしたいと思う感覚を育てるのです。
そのためには、まず歯科医院経営者の夢やビジョン、別の表現をするなら理念やミッションを明確にし、スタッフにアピールすることです。

多くの歯科医院経営者にとって、それらは表現の違いこそあれ、「理想の医療の提供」や「患者様の幸福」を実現するものとなるはず。
それは、スタッフにとって、自分たちの仕事を「作業」から、「価値ある行為」に変化させてくれるものともなります。
ミッションを明確化し、スタッフにアピールする具体的な方法については、紙面の都合上、詳しく説明することが難しいので、クインテッセンス出版から昨年末に出版された『図解:ドラッカーに学ぶ歯科医院経営50のヒント』を読んでください。

そして、忘れてはいけないのが、「なぜ、それを実現したいと思うようになったのか?」という理由をしっかりとシェアすること。

なぜその夢を持つようになったのか・・・
なぜそれをミッションにしたのか・・・

など、夢やビジョン、理念、ミッションを持つに至った体験や経験、そこで感じた心情を共有するのです。
人は、その人間の体験や想いに共感を起こし、それに心が震わされたときに、本気でその人を支えたいと思うものです。
多くの歯科医院で、理念やミッションを作っているにもかかわらず、それが単なる「壁に掲げた標語」になってしまっているのは、その背後にある経験や想いを伝え、共感を起こしてないからです。
「画龍点睛を欠く」というコトワザがあります。
中国の張という絵の名人が金稜の安楽寺の壁に竜の絵を描き、最後に瞳を描き入れたところ、竜が昇天したという唐時代の画史書『歴代名画記』にある故事から作られた言葉です。
夢やビジョン、理念、ミッションの背後にあるものこそが、この「点睛」なのです。

厳しい歯科医院経営環境下で、院長がやってはいけないことのひとつは、「スタッフに経営者感覚を求める」ことです。
でも、サポーター感覚を持たせ、育てることはできます。
価値転換をして、名サポーターに囲まれ、夢やミッションを実現していきましょう。

 医療法人社団いのうえ歯科医院
 理事長 歯学博士・経営学博士
 井上 裕之
 http://www.inoue-dental.jp/