モリタ デンタルプラザ / 歯科医療従事者のためのポータルサイト

飲食店は、食事をするところ。
食事がまずければ、どんなに頑張ってもお店を流行らせることはできません。

でも・・・。 食事が美味しければ、それで流行るのかというと、そうではありません。 たとえば、味は美味しいけど、雰囲気が悪い、店員さんの対応が悪い・・・では、行きつけにしようとは思いませんよね。

なぜなら、食事をするために訪れるところであるものの、食事の味以外にも飲食店に対して求めているものがあるからです。

一般的には「味」「雰囲気」「接客」「立地」「価格」などが、飲食店には求められる要素です。
味がいいのは当然。
食事がまずければ、そもそも飲食店として成り立ちません。

でも、味に加え、他の要素でも、顧客が魅力を感じるものが多ければ多いほど、お客様は増えるのです。

さて、ここで考えてみましょう。

歯科医院は、歯科治療を受けるところ。
この治療技術が低ければ、そもそも歯科医院として成り立ちません。

でも、治療技術が高ければ、それだけで流行るのかというとそうではありません。

なぜなら「治療技術」「説明力」「設備（環境）」など、より良い医療を受けていただくための核となる要素、それから「対応力」「雰囲気」「フォロー」「人間性」など、安心して医療を受けていただくための要素、そして｢立地｣や「駐車場の有無」などの利便性など、複数の要素の中で、患者様が魅力を感じる要素が多いほど、患者数は多くなるからです。

つまり、より高いレベルの医療を提供するのは、医療機関として当然のこと。
それ以外に、患者様が魅力を感じる要素をどれだけ持っているのかで、「売れる歯科医院」になるのか、それとも「売れない歯科医院」になるのかが決まるということです。

このような、顧客が購買するかどうかを決定する要素のことを、

「ＫＢＦ（キー・バイ・ファクター）」

といいます。

歯科医院の院長は、仕事人として２つの側面を持っています。

ひとつは「歯科医師」としての顔、そしてもうひとつは「経営者」としての顔です。

歯科医師としては、純粋に、より高いレベルの医療を追求するべきです。
でも、経営者としては、このＫＢＦを意識して、より魅力を感じていただける医院づくりをしていくべきなのです。

時々、「本当に良い医療を提供していれば、患者数は増える。コンサルタントを入れるなんて、医療機関としての本筋から外れている」というご意見を耳にすることがあります。

でも、「高いレベルの医療技術を提供」することと、「魅力を感じていただける医院づくり」をすることは、相反するものではありません。
より高いレベルの医療を、より安心でき、利便性の高い医院で受けるということは、患者様にとって有益なことであり、生活者の権利を守ることでもあるからです。

ですから、「経営者としての仕事」を手助けしてくれるサポーターの力を借りることは、何ら本筋から外れることではないのです。

ただ、ここで誤解をしてほしくないのは、必ずしもコンサルタントを入れる必要はないということ。

組織内の都合や常識で、市場のことを考える思考のことを、「プロダクツアウト型の思考」といいます。
つまり、医院側から患者様のことを考えたり、判断したりするものです。
一方、市場から、組織や商品のことを考える思考法のことを「マーケットイン型の思考」といいます。
つまり、患者様側から医院のことを考えるものです。

この２つの思考は、どちらも重要です。
プロとして、医院から患者様のことを考える、と同時に、患者様の立場から医院のことを考える――この２つをバランスよく考えることができれば、コンサルタントなんて入れなくても、「高いレベルの医療技術を提供」し、「魅力も感じていただける医院」にすることができるからです。

仕事をしていると、「お客様のために・・・」と思っていても、その「お客様のため」という考え自体が、組織からの視点で考えた自己満足のものになってしまうことはよくあります。
この傾向は、技術系の仕事をしている人間に、とくに多いといわれています。

患者様のために、より高いレベルの医療を提供しようと、熱心に勉強することは、医療人として素晴らしいことです。
それに加え、患者様に魅力を感じていただくためには、マーケットイン的な思考。
つまり、患者様のＫＢＦを意識した医院づくりをすることが重要なのです。

患者様が、歯科医院に対して、医療以外にも求めているものがあることを理解していただけたと思いますので、次回からは、その心理にそって、どのような取り組みをしていけばいいのか、具体的なお話をさせていただきます。

　有限会社　ＭＵＳＵＨＩ
　代表取締役
　妹尾　榮聖
　　⇒　http://dental-no1.net/