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税にまつわる話 ~その2~ 申告漏れと脱税

2007年06月04日

最近ある噺家が、国税局から1億2000万円の申告漏れを指摘された・・という事件があったことはご記憶に新しいと思います。なんでも“襲名”の時に受け取ったご祝儀の一部を申告せず、自宅の地下室に隠していたとのこと。このほかにも、同じ時期に歌舞伎役者の方が同じくご祝儀の申告を忘れていたとかで4000万円ほどの追徴を受けています。1億円以上ものお金をもらったことを忘れる・・どれほどの収入があればそういう金銭感覚になれるんでしょうね?

こういう話題には事欠きませんが、少し遡って7年ほど前には、今年世界ナンバーワンとなり、最高の決算でわいている自動車メーカーT社でも会長と社長の就任披露パーティーで、これまたご祝儀のうちの約4000万円を裏金としてプールした所得隠しを指摘されています。このときは過去3年分で計約10億円の所得隠しを指摘され重加算税1億円を含め約4億円を追徴課税されました。ご祝儀の魅力なのか、名だたる企業でも、個人でも考えることは同じということでしょうか。

■□ 申告漏れ ■□
さて、問題となるのが事実が発覚したあとですが、「見解の相違があったが、当局の指導にもとづき適正に申告し納税をすませた。」とかいろいろな表現をご覧になったことがあると思います。時折、「経理担当のせいで私は知らない」だとか、「税理士にまかせてある」とかいう怒り会見も散見されますが、おおむね過失をみとめて税金をおさめることになっています。ホリエモンの事件でもお分かりの通り、経営者には経営者責任があるので、他人のせいは通用しません。「申告漏れ」とは、税務署と納税者との見解の違いによって、納税額に差が生じた場合を云います。とりあえず、隠していたにせよ、うっかりしていたにせよ「申告漏れ」となります。

■□ 脱税 ■□
脱税とは、所得税法238条に、「偽りその他不正の行為により所得税を免れた者は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」という規定があります。「脱税」と認定されると、7年まで遡って更正され、重加算税も課せられます。(税理士さんが証憑等資料は7年保存ですよ!というのはこのためです。)

この「脱税」とは、本来は納めるべき税金を納めないことをいい、税法を知らないで、または勘違いから税金を納めなかった場合のどちらも「脱税」になります。見解の相違も、うっかりも「脱税」になるということです。

■□ 意図の有無 ■□
ただし、意図的に不正な処理をした場合と、単なる勘違いで税金を少なく納めた場合では、処罰の重さが違ってきます。

悪質な場合や、金額が大きな場合は、告発されて懲役刑をうけたり、重加算税が課せられます。軽微な場合は税務署の指導によって修正申告をして、延滞税と過少申告加算金だけで済みます。又、税務署から指摘される前に、自発的に修正申告をすると過少申告加算金は課されません。ただし、指摘があることを察知して出した修正申告は自発的とはみなされないことがあります。

この重加算税を課せられてしまうと、その遡る税金と利息、罰金の金額もさることながら、後の調査が頻繁になるなどの不都合が生じてきます。ですから、めんどうがらずに「意図的」と「うっかり」の違いは徹底的に主張する必要があります。

ちなみに、税務署の方は独自の指標のようなものをもっていて、それに照らし合わせて申告書から例外値を抽出し、時が熟すのを待たれるようです。すぐに調査に入らずに、この熟考期間が長いのは、調査をされているのか、それとも、遡ったときの利息が多くなるから?・・と時々悩むことがあります。