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【6】エンドのイノベーション

2016年06月20日

皆様こんにちは。

東京都杉並区にて歯内療法を専門に診療しております田中利典です。

このメルマガでは、「チェアサイドトークで活かす歯内療法の話」として、エンドって面白いな、自分もエンドに力をいれたい!
と思っていただけるような内容をお届けしています。

最終回は「エンドのイノベーション 」です。

今回のG7伊勢志摩サミットでは、日本政府広報展示として日本の技術が海外に向けて大きくアピールされました。

クモの糸の研究からタンパク質素材を製品化したアウタージャケット。

植物繊維を解きほぐして作ったセルロースナノファイバー。

不可能と言われていたものに発想と先端技術で取り組み、持続可能な社会や環境負荷の少ないものづくりへとつなげる。

イノベーションはさまざまな分野で起こっています。

医科でもiPS細胞をはじめ、再生医療に大きな期待が集まっていますが、歯科は大変面白い立ち位置にあります。

というのも、歯科はマテリアルサイエンスとバイオサイエンスの両輪で発展していく面が大きいからです。

歯周病においては、全身との関連からエピジェネティクスという学問領域に広がりをみせていますが、ではエンドの場合どうでしょうか。

今までの既成概念や通法といわれる治療コンセプトや術式に、新しいイノベーションの波はやってくるのでしょうか。

今回は、前回の組織工学的な歯髄再生とは別の切り口で、エンドのイノベーションの可能性を探ってみましょう。

1)GentleWave System (Sonendo社)

年に1回、米国歯内療法学会学術大会(AAE Annual Meeting)が行われますが、そこでのSonendo社の展示に年々注目が集まってきています。

これは、機械的拡大を最小限にして根管洗浄のみで感染除去を行うという装置で、ハンドピース部分と本体とがセットになっている医療機器です。

どんなものかというと、歯科用レーザーのような大きさの装置、というとイメージしやすいでしょうか。

この機器の注目すべき点は「根管形成を最小限にとどめる」ところです。

現在の根管治療では、根管内のデブライドメントのために機械的・化学的清掃が行われています。

その際、根尖付近まで根管洗浄を適切に行うためには、ある程度の根管拡大が不可欠。

これにより根管内の歯質は一部失われてしまい、器具の操作によるトランスポーテーションやパーフォレーション等の危険も存在します。

もしNi-Tiファイル・手用ファイルで根管形成せず、根管洗浄のみでデブライドメントができるなら…。

これをかたちにしたものが、Sonendo社のGentleWave Systemです。

実はこのコンセプトは、90年代にも別の国、スイスのベルン大学保存科の教室で、noninstrumented techniqueとして試みがなされていました。

当時は根尖部の組織学的評価で洗浄が不十分となり、その後の関連研究は途絶えていました。

しかし、ここ数年でGentleWaveとして製品化と関連する論文が出てきて、注目を集めています。

根管は10号や15号くらいの細いファイルで穿通を確認する程度で、あとは歯冠部にハンドピースを当てて、一定時間根管洗浄。

ハンドピース先端にはニードルのようなものが付いており、ここから多量の根管洗浄剤とマルチソニックが発せられ、同時に吸引も行われます。

次亜塩素酸ナトリウムとEDTA、滅菌精製水がそれぞれタンクに入れられるようになっており、
時間内に自動で有機質溶解から無機質溶解までを行ってくれるという優れもの。

誰がやっても同じような結果が得られ、パーフォレーションやヒポクロ事故などが防げるのであれば、
術者の技量に大きく依存しやすい根管治療に大きなパラダイムシフトをもたらすでしょう。

非常に興味深い装置ですので、直接ウェブサイトをご覧いただければと思います。
 (参考文献:Sonendo社ウェブサイト http://www.sonendo.com)

2)Ni-Tiファイル

Ni-Tiファイルの数々の種類については、もうみなさんご存じでしょう。

断面、ピッチ、熱処理、形状など、メーカーはさまざまな工夫をして、新しいファイルを私たちに提示してくれます。

特徴的な形状のファイルとしては、SAF(ReDent NOVA社)とXP-endo finisher(FKG社)(同じくXP-3D finisher/Brasseler社)が挙げられます。

前者のSAF(self-adjusting file)は、網目状の刃が付いた中空状のファイルで、洗浄も同時に行える不思議な形。

ファイルがゆっくり回転しながら上下動するハンドピースを用いて、複雑な形態を有する根管にフィットしながら根管壁を擦っていきます。

後者のXP-endo finisherは、スプーンのような湾曲が付いた細いファイルで、コールドスプレーを吹きかけるとまっすぐな形状に。

根管内では湾曲が付いた状態で回転させ、ハンドピースを上下動させることで、通常のファイルでは触れることのできない根管内面を触っていきます。

根管は単純な筒状をしているわけではなく、楕円形の断面、イスムス、フィン、湾曲、と複雑な形態をしています。

どちらのファイルも、通常のファイルでは触れることのできない根管壁をいかに触れるようにするか、の工夫といえるでしょう。

じつを言うと、これらのファイルによってインスツルメンテーションのパラダイムシフトが起こったかというと、それほどではありません。

今後よりインパクトのある商品の登場に期待したいところです。

以上、GentleWaveと変わった形状のNi-Tiファイルについてご紹介いたしました。

新製品に飛びつくだけの新し物好きでは困りますし、かといって変化を好まず殻にこもったままでは時代遅れになります。

何事もバランスが大事ですが、やはり新製品の動向やトレンドをうかがうには、学会の学術大会やデンタルショーはよい機会です。

歯内療法であれば、日本歯内療法学会学術大会は毎年6,7月頃に、米国歯内療法学会学術大会は毎年4,5月頃に行われています。

日本の各地域で行われているデンタルショーや、4年に一度行われるワールドデンタルショー、
その他ニューヨーク(GNYDM)やケルン(IDS)の大きなデンタルショーも有名です。

この連載を通じてエンドに興味をもっていただけたなら、ぜひ日本歯内療法学会に加入していただければと思います。

さて、全部で6回という限られた回数のなかで、エンドのお話を進めてまいりました。

文字のみでお伝えする難しさとの格闘でしたが、少しでもエンドの楽しさが伝わっていれば幸いです。

最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。

東京都杉並区・川勝歯科医院
田中 利典
⇒ http://www.kawakatsu-dental.com/cn22/index.html