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吉野流・自費率を高める6つの方程式【2】自費をすすめられた患者さんは、なぜ来院しなくなり悪口を言いふらすのか?

2015年01月15日

「近所の、一般の患者さんが、保険証をもってやってくる」

もしあなたの医院が、このタイプの歯科医院だった場合、自費診療を患者さんにご提案する場合、一番気になるのは、次のことではないでしょうか。

「上質な治療を勧めたいけど、“あそこの歯医者に行ったら、高い治療勧められるよ~”と悪口をいわれ、患者さんがこなくなるんじゃないか? 減るんじゃないか?」という心配……。

私が歯科界で講演をするようになった最初に、質問されたのがこれでした。

「うちにはそんな低レベルの患者さんはきてないよ」と言い切れる先生は別として、上質で高額な診療を患者さんにご提案する場合、誰もが一度は気にするテーマだと思います。

今回は「自費を提案した結果、患者さんがこなくなる。悪口をいわれる」を避けるためにどうしたらいいのか? というテーマでお伝えしていくことにします。

まず、実際、このような「悪口をいわれる、患者さんが減る」というのは、歯科界の杞憂なのか? それとも現実に起こるのか? どちらなのでしょうか。

残念なことに「現実に起こる」というのが答えです。
私はこの目で何度もその現場を確認してきました。

実体験をお話させてください。

私の母は、30代から入れ歯だったようです。
幼少期の思い出といえば、歯医者に通う母に連れられ、商店街の2階の、急な階段を登ったところにある歯医者に行くことでした。
そして、あるタイミングをきっかけに、母はピタリとその歯医者に行くのをやめたのです。
そして、別の歯医者に行き始めます。
で、しばらくすると、そこにも行かなくなり、また別の歯医者に通う、ということを繰り返すのでした。

近所の人と母が立ち話しをしてしゃべっているときに、こんな言葉を耳にしました。

「◯◯歯科って知ってる~? あそこ絶対行かんほうがいいよ! ニコニコ感じ良く治療してくれていると思ったら、いきなりものすごく高い治療すすめるのよ! 120万円も払えっていったのよ。びっくり! 私、行くのやめたわ。◯◯歯科だけは、絶対やめたほうがいいわよ!」

これを受け、「◯◯歯科ね! わかったわ。私も絶対いかない!」という近所の奥様……。

私の母は「経済的に余裕がなかったのか?」「上質な治療を理解する知性が欠けていたのか?」といった疑問もあるのではないでしょうか。
正直申し上げて、家庭はどちらかというと裕福な部類に入っていたと思います。
父の年収は1,000万円以上。
当時で考えれば、余裕があったことになります。
また、母は、短大で栄養士の資格を取り、口にするものや全身の健康管理についてはかなりの勉強、実践している知的な女性でした。
しかし、そんな母が、120万円の上質な治療を断り、それまで通っていた歯科医院の悪口をいっているのです。
なぜ、経済的に余裕があり、知的であるにもかかわらず、自費診療を断るのか?
また、自分が断るのはしかたがないとしても、近所の人に悪口をいいふらすという行動に出るのか? このあたりを解明したいと思います。

これは、前職のときの私の悩みと同じなんです。
約100万円の英語教材を扱っていたのですが、「とても良い!」と絶賛してくれるお客さんと、逆に、猛烈に悪口をいうお客さんがいることに気づいていました。
そこで、私は、絶賛するお客さんと、悪口をいうお客さんについて研究しました。
そして、面白いことを発見したのです。
絶賛するお客さんは、100%買った人でした。
逆に、悪口をいっているのは100%買ってない人だったのです。

買った人は、自分が迷ったけれども購入を決断し、お金を払った人です。
そして「自分の決断は正しかったんだ! これでよかったんだ!」と後づけで満足します。
逆に、買わなかった人の心の中は「良さそうだけど、自分は断った。買わなくてよかったんだ。私の決断は正しかったんだ!」と、後づけで自分の決断を肯定したくなるのです。
これを自分に言い聞かせるように、周りの人にも言いふらします。
「自分が手に入れられなかったものを、他人が手に入れたら悔しい」という嫉妬心も手伝って、悪口をいうという行為に出るのです。低レベルかもしれませんが、一般的な人間の心理です。

では、どうしたらいいのでしょうか?
営業の世界では、出会った見込み客に対して、提案する前に「見込みを育てる」というプロセスを置きます。
「見込みを育てる」とは、聞きなれない言葉かもしれませんが、わかりやすくいうと、「欲しがらせる」ということです。
「欲しがらせる」は、歯科的には「デンタルIQを上げる」です。
具体的には「見込みを育てる」「欲しがらせる」「デンタルIQを上げる」ために「前倒しで情報提供」することです。
相手に「情報」を与え、これから提案するものが「価値あるものなんだ」「安心なんだ」「怖くないだ」「他よりも優れているんだ」「後でやるより今やったほうがよい」「実はコストパフォーマンスはいいんだ」ということを、十分に知らしめるのです。

このプロセスを経て、「デンタルIQ」を育てた上で、患者さんに上質な治療を提案すると、事前情報により育った患者さんは、理解もよく、受け入れ体制があり、当然成約率ははるかに高くなります。

当然ながら、よく理解し、自費を申込み、お金を払った患者さんは、自分の決断を後づけで「肯定」したくなるため、「◯◯歯科はとってもよいわよ! 安心よ! ◯◯先生に頼んで大正解だったわ!」と絶賛し、近所で良いうわさを立てる人になっていきます。

次回は、この「前倒しで情報提供」し、「デンタルIQをアップする」方法について、具体的にお伝えしていきます。
どうぞお楽しみに。

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(社)国際医療経営学会代表理事
吉野真由美
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