2014年06月13日
ここでいう「バランス」とは、燃えるような情熱と冷静な分析にもとづく戦略です。
このバランスこそが、院長に求められる最大の資質といっていいでしょう。
情熱があることは、尊敬される院長としての条件です。
情熱がなければ、スタッフを率いたり、導いたりすることは難しいでしょう。
それどころか、自分自身ですら、マネジメントできない可能性があります。
情熱の発信源となるのは、本連載の最初に取り上げたミッションです。
ミッションとは、自分が本当に大切に思っている目的や価値観のことです。
私たちはミッションを持つことではじめて、情熱的に行動できるようになります。
たとえば、サッカーの本田圭佑選手であれば「ワールドカップ優勝」がそうでしょう。
中には「無理なことをいうな」などと揶揄する人もいますが、明確な目標を持つことが人を情熱的にさせます。
もちろん、情熱だけでは勝負には勝てません。それは野球でも、ゴルフでも、サッカーでも同じでしょう。
では、情熱のほかに何が必要でしょうか?
実力はもちろんですが、勝つための戦略が欠かせないのです。
戦略とは、勝利を得るための道筋、あるいは夢や目標を実現するための計画のことです。
世の中の成功者は、偶然、成功したのではありません。
成功することを強く望み、そのための戦略を立てて、自らの努力で成功を引き寄せたのです。
それは偶然のことではなく、必然なのです。
情熱があっても戦略がなければ理想の結果は得られませんし、戦略を持っていても情熱がなければ行動に移せなかったり、勝つまで続けたりすることができません。
成功している院長は、明確なミッションと、それを実現しようとする情熱のほかに、勝つための戦略をバランスよく備えています。
戦略は、自己分析や現状分析をすると立てやすくなります。
つまり、自院の強みと弱みをはっきりとさせ、目的や目標を達成するにはどこを伸ばし、どこを補えばよいのかを見極めることです。
先ほどのサッカーの例でいえば、シュート力が弱いのであれば、蹴る力を高める、ボールのキープ力が弱いのであればドリブルを練習する、決定力が低いのであれば、どのような状況からでもゴールを狙える力を磨く……など。
こうして勝てる確率を高めていくのです。
今、改めて若いころの仕事を振り返って驚くことがあります。
自分でいうのもなんですが、とてもよくできているのです。
「若いから」とか「技術が未熟だからできていない」ではなく、情熱を持って取り組んだ仕事は、客観的に見てもよく仕上がっています。
おそらく「情熱」が、若さや経験不足からくる未熟さを補ってくれたのでしょう。
情熱は感動を生み、感動は人を動かします。ただし、それも結果があってこそ。結果を出すためには、勝つための戦略が欠かせません。
一生懸命にやっているのに、スタッフから信頼されない――そのような院長は「ミッション」「情熱」「勝つための戦略」のいずれか、あるいはすべてが足りていないのかもしれません。
医療法人社団いのうえ歯科医院理事長
歯学博士・経営学博士
井上 裕之
⇒ http://www.inoue-dental.jp/