2014年05月16日
「オレは院長なんだから、スタッフのやることなどできない」という院長がいます。
院長だから、院長しかできないレベルのことをやるべきだという考えです。
それも一理あります。
でも、そこに頑なにこだわると、院内がギスギスした雰囲気になってしまいかねません。
たとえば、医院の床にゴミが落ちていました。
さて、あなたならどうしますか?
・自分でゴミを拾ってゴミ箱に捨てる
・部下に「ゴミが落ちていること」を伝えて、拾っておくよう指示する
尊敬される院長は、自分が拾っている姿を見せて、スタッフに「ゴミが落ちていたら、最初に見つけた人が拾うのがマナー」と気づかせます。
けっして「自分はゴミ当番じゃないから……」とか「ゴミを拾うのは部下の役目だ」とはいいません。
院長は、目配り、気配りができ、観察力に優れています。
壁にかかっている絵がほんのわずか、0.5ミリ曲がっていたとしても気づきます。
「患者さん用のスリッパを見て、汚れていたら、そろそろ交換時期だな」と気づくものです。
「患者さん用のトイレの掃除が終わったようだが、ふたの裏側もきちんと掃除されているか」と目配りします。
そして、何か問題を発見したら、人に頼むのではなく、院長、自らがそれを正し、あとから担当者にそのことを伝えます。
スタッフに任せっぱなしにして、デスクの前にで~んと構えているのが院長ではありません。
尊敬されるリーダーは、誰よりも先に気づき、誰よりも先に動き、すべての人の模範になろうとします。
そうした院長の姿が、スタッフに行動を促すのです。
院長は、スタッフにとってよい手本であるべきです。
だからといって、何から何まですべてできる必要はありません。
スタッフを育てるためには、自分のできない部分をあえて見せることも大事です。
そうすることで、院長ができない部分を補完してくれる者が現れたり、自分たちが「院長と病院を支えている」という、仕事に対する満足感や喜びが生まれます。
尊敬されない院長は、この点を誤解しています。
「模範になる人」イコール「何でもできる完璧な人」と思い込み、すべてのことを自分でやろうとしてしまいます。
これでは逆効果です。
リーダーにも、何かできないことがあったほうがよいのです。
院長があまりにも完璧すぎると、スタッフが成長する機会を奪い取ることになります。
仮にすべてできるようであっても、あえてできないフリをしたり、知らないフリをしたりして、スタッフに自分自身を磨くチャンスを与えましょう。
こうした気配りができるのも、“尊敬され、成長し続ける医院の院長の条件”といえるでしょう。
医療法人社団いのうえ歯科医院理事長
歯学博士・経営学博士
井上 裕之
⇒ http://www.inoue-dental.jp/