2017年02月20日
このメールマガジンもいよいよ後半に突入です。
前半は、主に今後の歯科界の展望や、自費率の話、スタッフ&患者教育などを書かせてもらいました。
今回は、私が最近多く相談される、
「どうやってマイクロスコープを使った診療を始めたらいいか?」
について書きたいと思います。
一時期、諸外国で安易に抜歯してインプラントで補綴するという流れがありました。
しかし、2000年代後半からインプラント周囲炎などの問題が報告され、現在では“歯の保存”へ揺り戻しが起きていると感じます。
そんななか、歯の保存、とくに根管治療においてマイクロスコープが有用であることが、
最近さまざまな文献からわかってきました。
たとえば、2010年のSetzer FCらの論文では、
マイクロスコープを使用しない歯根端切除術(12歯)の成功率と、
マイクロスコープを使用した歯根端切除術(9歯)の成功率を比較した結果、
前者が59%、後者が94%という驚愕のデータがあります。
しかし、マイクロスコープの良さを耳にしても、コスト面などで導入に踏み切れない先生方も多いのではないでしょうか。
もし、CTをお持ちの先生がこのメルマガをお読みでしたら、
マイクロスコープはここ数年で保険診療でもかなり有用であることはご存じでしょうか。
たとえば、樋状根およびMB2のある歯に関して、
2016年からCTとマイクロスコープがそれぞれ保険で算定できることになりました。
具体的には、CTで1,170点、マイクロスコープ加算で400点が保険で算定できます。
樋状根はアジア人に多く、下顎7番の30%が樋状根といわれています。
また、上顎6番は文献によりばらつきがありますが、
40~60%程度にMB2があるといわれており、
臨床の場面でかなりの確率で治療機会がありそうです。
また、歯根端切除術も、マイクロスコープなしでは1,350点ですが、マイクロスコープがあれば2,000点が算定できます。
ただ、マイクロスコープ加算をするためには届け出が受理されねばならず、購入したら届け出をする必要があります。
いざマイクロスコープを購入したら、
まず根管治療が導入編として適していると思いますが、
マイクロスコープではミラーテクニックが大切です。
しかしミラーに呼気が当たり曇ってしまうことが問題となります。
その際、ラバーダムをしていればミラーの曇りを防止できます。
根管治療におけるラバーダムの重要性をお話しすると、
日本の抜髄の成功率が50%以下(2012年東京医科歯科大・須田教授調査)といわれているのに対し、
欧米では古くから90%以上成功しているとされています。
その差はラバーダム使用の有無によるものが大きいといわれています。
ラバーダムは最初は面倒に感じるかもしれませんが、慣れてしまえば誰でもできるようになります。
またラバーダムは安価ですし、使用することで治療の難易度を格段に下げてくれます。
患者さんのためにもなり、術者のためにもなる、まさにウィンウィンの関係といえます。
また、多くの先生は日常臨床でコンポジットレジン修復をしない日はないかと思います。
ボンディング材は水分を嫌います。
ボンディング材の臨床データの多くは実験室でとっているので、
口腔内と実験室の環境を極力近づけないといけないわけですね。
ラバーダムがないと呼気の水分で、
ボンディングがもつ本来の力を十分に発揮できないのです。
その意味からもラバーダムをする意義はあるかと思います。
また、マイクロスコープを使用して、今までインレーにしていた隣接面う蝕がコンポジットレジンで修復できるようになれば、
半年もあればかなり上達します。
すると、新たに自由診療としてのコンポジットレジン修復という選択肢を患者さんに提供できるようになります。
コンポジットレジン修復を始めて実感しているのが、意外と褐線が出ない、変色しないということです。
現在、製品にもよりますが、フィラー含有量が80%程度の製品が多いため、
変色の原因は研磨不良による着色である可能性が高く、レジンそのものが日焼けしてしまうことは少ないのです。
エッチングを適正に行い、ていねいにボンディングを行うと、驚くほど褐線は出にくいものです。
また、補綴物のフィットの確認にもマイクロスコープを使用しています。
II級インレーの隣接面のフィットは肉眼では確認しにくいですが、
マイクロスコープではかなりの精度で観察することができます。
縁上マージンのクラウンならば問題ないかもしれませんが、
縁下マージンの形成の確認でジャンピングマージンになっている場合も、
マイクロスコープであれば簡単に確認することができます。
先生方のなかに、補綴物装着後、患者さんから
「しみる」
と言われたり、
「この前の詰め物が合ってないのでは?」
と言われて困った方はいないでしょうか。
実際は、健全歯質を削った場合にHys症状が出ることも多く、
経過観察していると症状が消退するケースが多いと思いますが、
患者さんにそれを説明してもなかなかわかってくれないことも多いですよね。
そんな場合に、マイクロスコープを通して見える画面をモニターに映し、
「このように、ヘリはしっかり合っていますから、もう少し様子を見てみましょう」
とお話ししてあげると、患者さんも安心してくれます。
最近、マイクロスコープを使った診療を行う先生が増えており、
「マイクロスコープ=自由診療」という先生が多いように思います。
しかし、まずは保険診療で使用して、慣れ親しんだ手法を少しずつ変えていくのがよいのではないかと思います。
今回はマイクロスコープの臨床における有用性についてお話しをさせてもらいました。
次回もよろしくお願いいたします。
ほうじょう歯科医院 新日本橋
北條 弘明
⇒ http://www.hojoshika-shinnihonbashi.com/