MAIL MAGAZINE メールマガジン

【6】患者さんが集まる歯科医院づくりに必要なこと

2017年03月21日

こんにちは。

早いもので、このメルマガも今回で最終回となりました。

最終回は、私がどうやって患者さんを増やしたのかという実体験を
お話ししたいと思います。

その前に、私が開業までの道のりを少しお話しさせてください。

私は2014年4月、都心にあるビルの2階に居抜きで開業しました。

この居抜き開業の話をもってきてくれたのは大学の先輩で、2013年12月末のことです。

物件を見学したのが翌年1月で、前の先生は2013年4月ごろまで診療をされていたとうかがいました。

物件は閉院時のまま、機材などもほとんど残してあって驚いた記憶があります。

ユニットは3台のうち2台は使えましたが、1台は相当年季が入っており使えませんでした。

壁紙も至るところが剥がれかけ、天井も黄ばんでおりました。

見学して数日、この年季の入ったクリニックを引き継いだとして、
まずどこから手をつけるべきかと考えていたところ、
先輩から「明日までにどうするか決めてください」と電話がありました。

そこで、「何事も経験」と思い、開業することに決めたのです。

正直それまで開業についてまったく考えていなかったため、
資金繰り・集患の考えなど何もなく、今思うと本当に愚かな行為でした。

もし、もう一度はじめから開業するとしたら、

1.開業地の選定
2.業者、機材の選定を行い、見積もりを出してもらう
3.必要な資金の概算を出し、銀行に融資の相談にいく

ここまで準備してからすべてが始まるのが一般的だと思います。

しかし、私の場合、

1.居抜き物件を見に行く(とくに縁もゆかりもない)
2.開業

という、何の戦略もなしにスタートしてしまいました。

孔子の言葉で
「己を知り、敵を知れば百戦危ぶまれず」
という言葉がありますが、己はさておき、開業予定地の患者層や動線を「敵」と仮定すると、
何も知らずに戦いを始めてしまったようなものです。

これではうまくいくわけがありません。

実際、開業後1年で準備していた運転資金も底をつき、
勤務医時代に購入したマンションも売却し、土日もバイトに明け暮れ、
これ以上ないほどの苦しい日々を過ごしました。

では、そこからどうやって医院を立て直したかをお話しします。
(この話の前提として、開業地によって戦略は変わるため、私と同じことをしてもうまくいく保証がないことをご了承でください)

まず、集患には2つの要素があります。

[1]場所
[2]広告にお金をかける

[1]の「場所」ですが、そのクリニックの前をどのくらいの人が通るのかがポイントです。

存在が容易に認知されれば広告の必要性が薄れてきます。

当院の前は人通りは多いものの2階にあるため、なかなか認知されず序盤はかなり苦戦しました。

ビルのオーナーの考えで外に看板も出せず、窓にカッティングテープで医院名と電話番号を書くだけになってしましました。

地方でお年寄りが多い場所では、大々的にネット広告などを打ってもあまり効果は望めないと思いますが、
逆に認知されやすい場所であればネット広告に経費を割かなくても患者さんは来てくれるかもしれません。

[2]の広告ですが、当院の場合、ネット広告がメインです。

前述のとおり、看板すらないので入口もわかりにくく、
「ふらっと来ました」という患者さんはほぼゼロだからです。

ネット広告の業者選定については、
知り合いの先生から紹介してもらうに限ります。

「SEO」という単語を聞いたことがある先生もいると思いますが、
ホームページはいくら頑張って作りこんでも上位表示されなければ意味がありません。

おそらく患者さんは「歯科・場所」で調べることが多いと思います。

そこで2ページ目以降に出てくるようでは患者さんは見てくれません。

ホームページ業者はSEO対策がしっかりできているところを選ぶべきです。

SEO対策は業者によってさまざまです。

私は、更新頻度が大事だからこまめにブログを書くことを薦められました。

また、「得意分野がある」ことはとても大事です。

私は「マイクロスコープを使った根管治療が得意です」とネットに書いているせいか、
「根管治療をしてください」という主訴の患者さんがほとんどです。

「インプラント治療が得意です」と書けば、
インプラントでお悩みの患者さんがきっと来るのだと私は思います。

注意すべきは、何でも得意であるかのように書かないことです。

患者さんはその先生の得意なものが何かがわからなくなってしまうからです。

得意分野がない先生は、今からでも勉強できます。

私も卒後数年はお金を貯めてさまざまなエンドのコースに通いました。

卒業直後は歯科の基本を覚えるのに必死で、しかもお金もなかったので、
憧れのマイクロエンドは同級生の保存科に残った友人にだいぶ遅れをとってしまいました。

でも、遅れをとったけれど今はできています。

勉強をするのに遅すぎるということはないのです。

また、私は開業して数年経ちますが、いまだにアルバイトをしています。

ブログでも、そのアルバイトネタをよく書いています。

これが良かったと最近思うようになりました。

「あの先生は採算を考えないで頑張っているから応援したくなる」

という患者さんが意外にも多いのです。

世の中捨てたものではないですね。

メルマガも最終回となり、書ききれなかったことはたくさんありますが、以下に過去5回の内容をまとめてみます。

【1】今後10年で歯科医師は不足する。

全体を占める割合がもっとも多い団塊世代の先生が引退し閉院するからである。

一方で、中高年以上の歯科受診率が高いため、
歯科界として歯周疾患等の予防を現時点でしっかり行わないと歯科医師不足で対応できず手遅れになると思われる。

【2】自由診療は伝え方が大切である。

歯がとても大事であることをうまく伝えられなければ保険診療のサイクルからは抜け出せない。

逆に、保険診療だけで経営が安定している場合は中途半端に自由診療を勧めるべきではない。

今いる患者さんが離れていく可能性もよく考えて自身のスタイルを確立するべきである。

【3】スタッフ教育、患者教育はまずは相手の立場を考えて行う。

他のスタッフがいる前で叱ったりしてはいけない。

患者教育はもっとデリケートである。

長く患者さんと付き合いながら、少しずつ口腔内環境の向上をめざす。

【4】マイクロスコープは患者さんとのコミュニケーションツールとして有効である。

静止画や動画を撮影し患者さんに見てもらうだけでも信頼度は格段に上がるはずである。

【5】設備投資は自身の診療スタイルに必要であれば積極的に行う。

「お金が貯まってから」では、今良い機材で診てもらえていない患者さんがかわいそうである。

医療はその先生が出せる今のベストを尽くすべきである。

その信念が患者さんに伝われば、結果は後から付いてくる。

私自身、何も考えないで居抜き開業し、医院を潰しかけたが、信念が患者さんに浸透してきたせいか、
今ではある程度経営も軌道に乗っている。

以上が今まで書かせていただいた内容になります。

また読者の皆様にお会いできる時までに、
もっとスマートに皆さんの悩みを解決する術を探していきたいと思います。

6回にわたりお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

ほうじょう歯科医院 新日本橋
北條 弘明
http://www.hojoshika-shinnihonbashi.com/