2017年01月05日
読者の皆様、はじめまして。
ほうじょう歯科医院新日本橋の北條と申します。
このメールマガジンは、若手の先生、開業を考えている先生、開業して悩みがあるけれど、なかなか相談相手がいないという先生に向けて
執筆させていただこうと考えております。
歯科向けの悩み相談に関する書籍は多く出版されており、さまざまな切り口で展開されていますが、私は今回、
「エビデンスに基づいたお悩み解決」をめざして執筆しようと思っております。
「日々の臨床はエビデンスに基づくものでなくてはいけない」、これは歯科医師なら誰しもが言われてきたことと思います。
そこで、診療以外のこと、
たとえばエビデンスに基づく自由診療のコンサルテーション、
エビデンスに基づく人材教育、
エビデンスに基づく経営など、
いずれも“エビデンス”に基づきながら、私見も交えて書きたいと考えています。
なぜなら、ぽっと出の私が偉そうに何を言っても、おそらく読者の皆様は「本当かなあ、今ひとつ信用できないな……」と思われるからです。
ですから、しっかりとした根拠があってこそ説得力のある話ができると思います。
私は数年前に、まったく開業をしようと思っていなかったにもかかわらず、
ひょんなことから開業してしまった経緯があります(後日書かせてもらいます)。
開業前に知っておくべきさまざまなことを知らずに、困ったことがあると毎回、場当たり的に対処してきて、なんとか今日まで診療してまいりました。
ですので今回、私自身の本当に辛かった実体験によって、読者の皆様の「転ばぬ先の杖」になれたらと思い、筆をとらせていただきました。
これは国税庁調査による会社生存率のデータベースから引用させていただきました。
ここからわかるのは、「事業を始めて5年存続させることは本当に大変だ」ということです。
100件あったら85件は5年で倒産してしまうということです。
さらに99%以上の会社は10年以内になくなってしまうという現実があります。
一方、歯科医院はどうでしょう。
患者さんに歯科医療を提供して健康に寄与するためになくてはならない医療機関ということもありますが、
2000〜2012年で倒産した歯科医院は135件だそうです(帝国データバンク調べ)。
6万8千件以上の歯科医院があることを考えると、一般企業とはだいぶ異なることがわかります。
私が学生の頃は、
「今の歯科業界は大変なことになっている。きちんと考えて行動しないと路頭に迷うことになる」
と言われましたし、勤務医時代には
「昔の歯科は本当にいい時代だった。先生たちのような若い世代は気の毒だ」
とも言われました。
たしかに昔に比べたら大変な時代かもしれませんが、それでも日々患者さんに誠意をもってきちんと診療していれば、患者さんからは
「先生、ありがとうございます」「先生、助かりました」
と言ってもらえます。
歯科医師は本当にやりがいのある幸せな職業だと思います。
また、歯科は暗黒の時代と言われていますが、その根拠はどこにあるのでしょうか。
「歯科医師数ピラミッドの推移」をあらわしたもので、左が男性歯科医師数、右が女性歯科医歯数です。
2014年のデータでは一番層が厚いのは55~59歳までの男性歯科医師となっています。
歯科医師に定年はありませんが、仮に65歳までを精力的に診療すると仮定した場合、
2025年頃にかなりの数の先生が引退されることが予想されます。
つぎに、表3をご覧ください(文献1から抜粋)。
これは35~44歳の業務別の歯科医師数の推移ですが、1990年台初頭を境に急激に開設数が減っております。
近年では開設者より勤務医のほうが多い構図になってきました。
たとえば「40歳で開業→65歳で引退」を一般的なモデルとして考えると、
歯科医院の一世代は25年くらいと考えることができます。
そうしますと、「1990+25」の2015年以降、経営的に安定していても閉院を考える先生が大勢出てくることが考えられます。
歯科医院の継承問題もいわれていますが、開業を考えている若手の先生にはこれは大きなチャンスであり、
経営的に安定しているクリニックを居抜きで開業するには絶好のタイミングといえます。
居抜き開業のメリットは歯科医師側だけの話ではなく、患者さんも慣れ親しんだクリニックに通い続けられるという側面があります。
歳を重ねれば重ねるほど、今までと違う病院に新たに通いはじめるというのはなかなか難しいものです。
私自身、居抜き開業を経験しておりますが、前の歯科医院に20年以上通っていたご年配の患者さんも多くいらっしゃり、
引き続き来院していただいております。
ここまで、歯科医師数の推移などをもとに、今後の歯科医師需給関係を考えてきましたが、以上のことから、私がお伝えしたいのは
「2025年以降、歯科医師は足らなくなる」というものです。
「開業する先生<閉院する先生」という構図になる時代はもう目の前まで来ています。
安藤雄一先生(国立保健医療科学院)はこれを「歯科界の2025年問題」と名付けております。
じつはこれはかなり深刻な問題だと私は考えています。
皆様もお感じだと思いますが、歯科は最近ネガティブキャンペーンばかりが目立ちます。
そのためか、この将来の需給問題が置き去りにされていると感じます。
歯科医師が足りなくなって困るのは、なかなか歯科医師に診てもらえなくなる患者さんです。
たとえば介護の現場では、訪問歯科の重要性が認識され久しいわけですが、
2025年には後期高齢者は約2,179万人、
65歳以上の前期高齢者も含めると3,658万人にもなります。
訪問歯科の分野にも歯科医師の人員をかなり割かなくてはならないはずです。
出生率も若干回復に向かっている日本。
歯科医師が足らなくなる時に真剣に向き合わなくてはならないのは、
「どうやって国民の歯科疾患を予防して、少ない歯科医師の人数で対応していくか」になると思います。
第1回目は、いくつかのデータをみながら、若手歯科医師でも
「今の苦しい現状を乗り切れば、近い将来に光が見える」
というお話をさせていただきました。
2回目以降は
「未来は明るいのはわかったけれど、実際は目の前の日々が大変なんです……」
というお悩みに、エビデンスに基づく解決策を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
次回もよろしくお願いいたします。
参考文献
1.安藤雄一.データでみる女性歯科医歯数の変遷と今後の見通し.the Quintessence 2016;35(7):130-137.
ほうじょう歯科医院 新日本橋
北條 弘明
⇒ http://www.hojoshika-shinnihonbashi.com/