2015年01月30日
(1) 人を育てられない3つのタイプ
開業当初は、歯科医師としての治療経験があるのは当たり前として、経営やマネジメントに関しては誰もが初心者です。
自分自身の医院経営を経験していく中で、中心メンバーになってほしいと育成したスタッフの突然の退職や造反など、さまざまな失敗を繰り返しながら、やがてスタッフから頼りにされる経営者へと成長していくのです。
院長1人、スタッフ3~4名のクリニックであれば、採用・教育・評価などは院長の感覚でかまいませんが、10人以上の規模にするのであれば、マネジメント技術を学ぶ必要があります。
計画にもとづく適切な募集・採用にはじまり、採用したスタッフに対する教育・トレーニング、客観的な評価制度などの仕組みづくりが、クリニックの長期的発展には必須となります。
「金を残すは三流、事業を残すは二流、人を残すは一流」
人を育てることの重要性について、このような格言がありますが、歯科クリニックの院長には、人を育てることを苦手とするタイプの方が多いようです。
技術が一流だからといって、一流の経営者であるとは限りません。
うまくいかない院長を例に挙げてみると、次のようなタイプに分かれます。
★タイプ1:自分の腕に自信がある技術屋タイプ
歯科治療が好きで、研究熱心、常に自身の技術を磨くために向上心を持って取り組んできたため、うまくできなかったり、時間のかかったりするスタッフに対して厳しくあたってしまいます。
自分自身へ厳しいハードルを課してきたため、他人にも厳しさを求めてしまうのです。
こうした院長の場合には、人が離れていくことが多く見られます。
また、患者さんに対しても、自分の考えに固執する傾向があるので、口腔のみを見て患者さん自身を知ろうとしません。
このような視野が狭い思考では、患者さんが逃げていくことは否めません。
★タイプ2:何でも自分でやってしまう個人プレイヤータイプ
現場で問題が発生した際に人に任せることができず、院長自身が何にでも首を突っ込んでやってしまうタイプです。
他人に任せることによって起こるリスクに対して敏感で、他人の失敗を許せない傾向があります。
そのようなタイプですと、人材が育つことは難しいでしょう。
★タイプ3:相手を受け入れない唯我独尊タイプ
自分に自信があるために、相手を下に見てしまい、いつも自分が正しく、相手が間違っていると考えてしまうタイプです。
このような院長の場合、スタッフが委縮してしまい、院長の指示がないと何もできない消極的なスタッフが多くなります。
連合艦隊司令長官・山本五十六は、「人を使う」上での多くの金言を残しましたが、とくに知られているのが次の言葉です。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」
タイプによってそれぞれ対処法は異なるので、自身のタイプを見極めて、山本五十六のように対処するとよいでしょう。
(2) 人材育成の2つのポイント
★全体を底上げするよりも中心メンバーを育てる
育成には、2つのタイプがあります。
1つは組織全体を底上げする方法、もう1つは中心メンバーとなる資質のある人材を発掘し、集中して育成する方法です。
人は変わることを嫌がります。
変化したいという気持ちはあるのですが、いざその変化を目の前にしたときに、そのままのほうが安全と感じて、変化することをやめてしまいます。
そして、変わらないメンバーの空気が、変わろうとするメンバーの空気に勝ってしまうと組織は変化しません。
組織全体を底上げするのは難しいことなので、やる気とスキルを持ち合わせている優秀な人材を伸ばすことに力を注ぐことが重要です。
★教育プラン明確にする
思いつきでトレーニングを実施していては、人を育成することは難しいもの。
やはり、教育プランを立案することが重要です。
誰をいつまでに、どこまで育成するのかを、文字にすることが欠かせません。その際には、教える時間よりもセルフトレーニングを重視することです。
勉強は教わるものではなく、あくまでも自分で取り組む主体性が重要であることを教える必要があります。
そのためには、院長として、誰をどんなレベルに引き上げたいのかを明確に伝え、それにあったトレーニング計画を立て、適切な教材を用意しなければなりません。
組織を改善するうえで、もっとも重要なことは「人材を育てる仕組みづくり」であることを肝に銘じること。
これは経営するものとしての使命なのです。
(株)デンタル・マーケティング 代表取締役社長
寳谷 光教
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