2015年03月10日
患者さんが多く集まる歯科医院の特長は、活気のある歯科医院です。
「幸せだから笑うんじゃない。笑うから幸せになれるんだ」という、ちびまる子ちゃんのワンフレーズがあるそうですが、「患者さんが集まるから活気があるのではなく、活気があるから多くの患者が集まる」のです。
人間が事の善し悪しを判断する際に、印象や感覚が大きなウエイトを占めています。
歯科医院にとっても、患者さんの印象や感覚は重要なポイントになります。
では、活気や笑顔であふれている歯科医院では、どのような取り組みを実践しているのでしょうか?
医院の業務マニュアルに“笑顔の重要性について”記載して、笑顔づくりのトレーニングをし、笑顔あふれる医院になっているわけではありません。
マニュアルに記載するだけで、スタッフの笑顔あふれる歯科医院になるならラクなものです。
医院が、自然に活気や笑顔のあふれ出すような組織風土・土壌をつくっているから、院内に笑顔があふれるのです。
ここでいう組織風土・土壌とは、適切な人材採用、適切な人材育成、適切な評価があって、さらにスタッフを成長させ、スタッフ自身の自己実現へのサポートを行っていることを意味しています。
経営的側面において、歯科医院の組織風土・土壌として必要なポイントを第1回から5回で説明ましたが、今回は、即実行できる良い組織づくりのポイントをまとめました。
(1) スタッフリーダーには、役職ではなく役割を与えよ!
あなたの医院では、チーフやマネージャーという役職のスタッフは存在しますか?
そのチーフやマネージャーに、地位や役職を与えているだけになっていませんか?
多くの歯科医院では、長期間勤務したリーダー格のスタッフに役職が与えられていますが、どのような役割が求められるのか、あまり明確になっていないケースが見受けられます。
「何を、どのように取り組んでほしい」のか、院長の期待する役割が明確になるからこそ、成長速度が加速し、医院全体の成果に結びつくのです。
スタッフマネージャーに必要な役割として考えられるのは――
・採用面接
・スタッフの勤務評価
・スタッフの勤務シフト作成
・仕入管理・在庫管理の適正化によるコストコントロール
・診療データの把握と改善策の立案
・損益計算書の把握……などです。
(2) “あこがれの先輩”を育成する!
後輩スタッフが「あこがれるスタッフリーダーの存在」は欠かせません。
退職率の高い歯科医院では、あこがれの先輩が存在しない場合が多いものです。
男性は、幼少時代から自立心や目標を達成することを求められますが、女性は優しさや相手への思いやりを求められることが多く、自己目標の設定に慣れていないケースが多いからです。
○○先輩のような「歯科衛生士になりたいな……」という身近な目標をイメージすることができれば、ゴールへの道筋を設定して、主体的に仕事に取り組めるようになりますから、目標に対するPDCA(計画・実行・評価・改善)を自分自身の力で回せるようになります。
プロ意識が高く、一人の女性としてスタッフたちのあこがれの的になるような、魅力あるスタッフを1人でも育成することで、共通の目標を追う組織に変化しますから、雰囲気はプラスの方向に成長していきます。
(3) スタッフ間での適切な関係性をつくる!
「良い組織=仲良しグループ」ではありません。
ダメなことをダメと指摘し合える強固な関係性をつくることが、良い組織を創造できるのです。
プロ意識の高いメンバーがそろう歯科医院の特長として、クリニック内では診療以外の場でも、友達言葉で会話するようなスタッフがいないことがあげられます。
「患者さんのいないところだから大丈夫……」では通用しません。
適切な距離感を保ちながら関係を維持する大人の関係だからこそ、他者に依存しないプロフェッショナルな仕事ができるのです。
それがまた、「この歯科医院は折り目正しい、しっかりしたところだ」と、患者さんに感じさせることにもなります。
目の前の患者さんに誠心誠意取り組んでいれば、必ず経営上の成果があらわれるわけではありません。
組織の風土・土壌を整えること、人が最重要であるという認識をもつことによって、患者さん、スタッフ、歯科医院や地域社会など、あらゆる側面から、医院が良くなる全体最適の視点に立って、歯科医院の抜本的改革をすすめることが重要です。
(株)デンタル・マーケティング 代表取締役社長
寳谷 光教
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