2015年02月10日
(1) 院長が受付業務に関心を持てば、受付のレベルも売上も上がる
受付スタッフの能力次第で、歯科医院の売上はもちろん、治療・サービスの質も大きく変わってきます。
受付は、歯科医院のレベルを左右する重要なポジションといっても過言ではありません。
多くの院長先生は、勤務医時代に受付業務に関心を持つ必要性がないまま過ごしてきました。
そのため、受付業務には重要性を見出せず、担当者に盲目的に任せてしまう傾向があるようです。
歯科医院経営を適切に行おうとするのであれば、「受付は、自分の領域ではないから自分には関係ない」という考えで、受付業務をスタッフ任せにせず、受付業務への関心を高め、優秀な受付スタッフを育成するノウハウを習得することが欠かせません。
受付の役割は、保険証確認や診察券発行、カルテ作成、予約管理、会計業務、自費入金管理、待合室や受付の環境整備……など、多岐にわたります。
今回は、その中でも、とくに院長が知っておくべきポイントを3つに絞って解説します。
(2) なぜ予約管理が重要なのか?
予約が適正に入っているかどうか(時間の偏りがないか、効率的になっているか、治療時間は適切かなど)を、毎日確認するのも院長の重要な役割です。
新規開業の歯科医院の悪い事例をあげると、開業した月の新患が150人、それ以降の5ヵ月間、毎月80人(6ヵ月通算で550人の新患)の新患があったにもかかわらず、6ヵ月後の月間レセプト数が200枚を超えていない歯科医院がありました。
中断率を調べてみると、その数値は30%を超えていたのです。
中断率はレセプトに対して10%以内に抑えたい数値なので、その基準の3倍にもなっていたのです。
患者さん1人ひとりが、どのような治療で何回目の来院で中断になったのかを詳細に調査してみたところ、予約の取り方が中断に大きく影響しているという結果にたどりつきました。
受付担当者が、次回の予約をとらないまま、患者さんからの連絡待ち状態の方が多数発生していたのです。
「次回の予約は、こちらから電話を入れます」という患者さんの声を尊重しすぎてしまい、結果的に中断を数多く生んでいたようです。
アシスト業務全般を熟知した上で、受付業務に取り組むことが望ましいのですが、この歯科医院では、治療の知識のないまま、受付業務に取り組んでしまっていたのです。
開業したばかりで、治療やサービスレベルに問題がなかったわけではありませんが、
・受付のアポイント管理がズサンだったことが最大の要因であること
・それを放置してしまった院長の経営に関しての危険察知能力
に問題があったのです。
気づかないうちに、さまざまなマイナス因子が発生しているケースがあるので、アポイント管理および受付の対応が適切かどうかを確認してみましょう。
(3) なぜ受付での現金管理が重要なのか?
レジ金額の誤差の発生頻度は、レジ金の確認回数に影響を受けるようです。
多くの歯科医院でのレジ金の確認は、診療開始前、午前の診療の終了時と診療終了時の3回というケースが多いようです。
受付の熟練度が低い場合には、とくにレジ金の確認頻度を上げる必要性があります。
1時間ごとに現金の確認を行うくらい徹底されたほうがよいでしょう。
その他、レジ金管理での留意点には、次のようなものがあります。
・院長が現金管理についてシビアになる
・受付担当者は、預かり金を声に出していう
・預かり金、釣銭を2回数える
「当院の現金差は0ですよ」という医院がありますが、毎日0円はちょっと考えにくいでしょう。
人間が計算するのですから間違いは必ずあります。
プラスの場合も、マイナスの場合もあるはずですから、スタッフがその差を補う行為を行っていることが推測されます。
その行動を見逃すと、次第に売上金を操作することに罪悪感がなくなり、やがて現金を横領してしまうケースも生じます。
犯罪者を生まないためにも、現金管理の重要性を院長は理解する必要がありますし、そのための対策を講じることが必須となります。
(4) クレンリネス、受付・待合室の環境管理を徹底する
クレンリネス(清掃、清潔)は、歯科医院が永続的に発展するための重要課題のひとつです。
どんなに最高の治療・サービスを提供したとしても、トイレや洗口コーナーが汚れていたり、スピットンに汚物が付着していたりすると、歯科医院自体の質を疑われかねません。
対策として重要なのが、受付を中心とするスタッフの定期点検です。
受付スタッフが定期的にトイレや待合室、診察室に汚れやゴミが落ちていないかを点検するルールを決め、点検の頻度を高める必要があります。
ただし、こうしたことを詳細にルールとしてマニュアルに記載すればよいかというとそうではなく、基準があることはもちろん重要なのですが、過度に基準を規定してしまうと、マイナス面もあるという側面も考える必要があります。
基準だらけになると、スタッフ自ら何も考えない組織、指示待ちの姿勢になり、自立して行動することが難しくなってしまいます。
マニュアルに記載せずとも、本人が自ら率先して気づき、行動する能力を磨くことこそ重要なのです。
患者数が増え、医院の治療・サービスの質が上がれば、予約がとりにくい状態になります。
そういう状態になると、キャンセルをすれば、次回の予約が2週間先や1ヵ月先になってしまうため、患者さんも簡単にキャンセルをしなくなります。
その結果、医院の質がさらに上がり、増患につながり、売上・利益が拡大し、さらに質が高まり、もっと患者数が増えていくといったよいサイクルが回りだします。
そうなると、医院経営はすべてがよい方向へ転換していくこと請け合いです。
(株)デンタル・マーケティング 代表取締役社長
寳谷 光教
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