2013年11月29日
【1】自院が提供する治療・サービスと、患者さんのニーズを徹底的に分析する
ひと昔前までは、マーケティングといえば「非営利の医療にマーケティングなんて不適切だ!」などといわれました。
販売や宣伝などの側面だけを強調して、マーケティングはあたかも消費者の購買意欲をうながす手段であるかのように誤解されてきたからでしょう。
私は、医療業界のマーケティングを「医療消費者にとって有益な情報を、医療提供者が伝達・共有するための一連のプロセスである」と定義しています。
医療において患者さん(医療消費者)と医療機関(医療提供者)との間のコミュニケーションが重要なことに、誰も異論はないと思いますが、まさにこの双方向のコミュニケーションこそが、医療におけるマーケティングなのです。
私たちが主宰するDental Business Schoolのマーケティング講座を担当する経営コンサルタントの田中道昭講師は「マーケティングの視点とは、自分自身のクリニックの強みを冷静に見極め、患者さんの真のニーズを把握し、競合クリニックの競争戦略を見極め、これらの3つのポイントを同時に抑えたときに、合理的に導き出される自分自身のクリニックのポジショニングを明確にしていくこと」といっています。
マーケティングでは、この「自院の強み」「患者さんの真のニーズ」「競合の競争戦略」の3つをおさえて、自院が提供するサービスと、その顧客である患者さんのニーズを徹底的に分析していくことが必要です。
これらを分析する上で、もっとも活用されるフレームワークとして「3C分析」というものがあります。
3Cとは、「市場(customer)」「競合(competitor)」「自社(company)」の頭文字を現わします。
3C分析とは、外部環境の市場と競合の分析から自院の強みを見つけ出し、自院の戦略に活かす分析をする枠組みです。
・自院分析のポイント/自院の経営資源や活動について、定性的・定量的に把握する
・市場分析のポイント/自院に来院する可能性のある潜在患者のニーズなどを把握する
・競合分析のポイント/自院を取り巻く競合他院の状況を把握し自院と比較する
たとえば、ホームページを作成する際の3C分析は、次のようになります。
・自院の強み(「自院の強みを生かしたHPとは何か?」)
・患者のニーズ(「患者が求めるHPとは何か?」)
・競合の状況(「競合はどのようなHPを作成しているか?」)
このように、3つを同時に抑えて答えを導き出すのが3C分析の要諦となります。
【2】院長はマーケティング展開の中心に位置すること
「マーケティングが必要なことはわかったけど、そんな余裕はない!」という声が聞こえてきそうなので、院長の役割についてふれておくことにします。
朝から晩まで必死で働いているにもかかわらず、思うように成長できない理由は「院長の努力不足」ではありません。
ただでさえ、必死で医院を切り盛りしているのに、これ以上何をすればいいのか。
そのような疑問を持たれている院長先生に、ひとつの切り口として、スモールビジネスコンサルタントのマイケル・E・ガーバーの「3つの人格」という考え方が参考になるでしょう。
彼のいう経営者が持つべき3つの人格とは――
「起業家」としての人格
「マネジャー」としての人格
「職人」としての人格――の3つを持つことです。
「起業家」は理想を好み、「未来」を見ています。
「マネジャー」は管理や実務を好み、「過去」を見ています。
「職人」は自分自身で手足を動かすことを好み、「現在」を見ています。
そして、事業を始めた時点においては、経営者には「職人」タイプが多く、また「職人」にとどまっているのが、万国共通・業種共通の特徴であると指摘しています。
これは「職人」としてスタートした経営者が、その事業の中心となる職人としての専門的な能力が備わっていれば、その事業を経営する能力も十分に備わっていると勘違いしがちであり、失敗に終わる理由でもあるからです。
これを歯科医院に置き換えていうと、「院長が歯科医としての仕事だけをしていたら、開業しても失敗に終わるケースが多い」ということです。
院長が不在でも、歯科医院がしっかりと機能して持続的に成長する体制を構築するためには、「経営者としての仕事」「マネジャーとしての仕事」「歯科医としての仕事」の3つをバランスよくこなしていくことが必要なのです。
マーケティングも経営者としての仕事であり、院長としてマーケティングを無視していたのでは、これからの医院間競争に遅れをとってしまいます。
フォーユーメディカル株式会社代表取締役
Dental Business School 代表
廣田 祥司
⇒ http://www.d-bs.org/