2013年10月18日
【1】歯科医院経営が本当に厳しいワケ
歯科医院の経営は厳しいと、久しくいわれ続けています。
しかし、他業種と比較して見ても年間の倒産件数が異常に多いわけではありません。
かえって他業種を取り巻く経営環境のほうがはるかに厳しいといえます。
ひと昔前までの歯科医院は、開業さえすれば最低限の収入が確保できるという環境にありました。
歯科医院を開業しても、「技術」を身に付けてさえいれば、「経営」に関する知識がなくても困らない、そんな恵まれた時代が長年続いたために、他社との厳しい生存競争を繰り返してきた他業種の企業と比べると、厳しさへの耐性が低かったといえます。
恵まれた時代が終わり、歯科医院も生存競争にさらされ始めると、耐性が低かった分、余計に厳しさを痛感しているようです。
これからの歯科医院にとって、他業種同様に「経営」に関する知識を備えておくことは、生存競争を勝ち抜くための必須条件なのです。
【2】これからはホワイトオーシャン戦略で・・・
「ブルーオーシャン戦略」という言葉をご存知でしょうか。
市場を海(オーシャン)になぞらえ、企業が生き残るためには競争の激しい既存市場である「レッドオーシャン(互いにパイを奪い合う状態)」で争いあうのではなく、競合の少ない未開拓市場である「ブルーオーシャン(競争と無縁で青く澄み切った穏やかな状態)」を切り拓いていくことが重要であるとした経営戦略の考え方です。
かつての歯科医院は、まさに「ブルーオーシャン」を優雅に泳いでいたといえます。
競争が始まり「レッドオーシャン」に突入した歯科医院にとっては、いつかまた「ブルーオーシャン」が現れることを祈って待つか、自分で大きな労力や投資をして、新たな「ブルーオーシャン」を開拓するか、いずれか一方を選択するしかないのでしょうか。
これからの歯科医院にとっての新たな経営戦略として、私どもが主宰する医療従事者のためのビジネススクールDBS【Dental Business School】の講師である田中道昭氏が提唱する「ホワイトオーシャン戦略」という考え方が一つの方向性を指し示してくれます。
「ホワイトオーシャン戦略」とは、これからすすむべき道は自身の持つ潜在的な力を引き出す方向にあるという考え方です。
つまり、いますでに持っているものを再認識しフル活用することによって、持続的成長を可能にする仕組みです。
競合相手との比較に左右される「レッドオーシャン」や「ブルーオーシャン」ではなく、自分自身の中にあるまだまだ伸びる余白部分=「ホワイトオーシャン」こそが、大海の中で生き残るために目指すべき新たな領域であるとしています。
では、歯科医院においてすでにある資源とは何でしょうか?
それは院長ご自身、勤務医、歯科衛生士、歯科助手、受付事務、歯科技工士等のスタッフ、ユニット、CT、レントゲン、レーザーなどの医療機器、そして自院がすでに潜在的に持っているマーケットシェアや患者も含まれるでしょう。
すでにある資源を有効に活用することには、次のようなメリットがあります。
(1)コストが掛からない/すでにある人的資源やノウハウを活用するため、新規採用やノウハウ導入のコストが不要である。
(2)効果が出やすい/新しいものを採用したり導入したりすることに比べ、既存のものを活用するため、効果が表れるまでの時間を大幅に短縮することが可能である。
(3)すぐにできる/大掛かりな準備が必要なものではなく、経営者の決断だけで開始することができる。
(4)すぐにやりたくなる/コストが掛からずに、効果が出やすく、すぐにできるし、自己否定ではなく自己肯定から始まる作業であるため、スタッフに受け入れられやすい。
そして、すでにある資源を有効に活用するためには、自院を改めて見つめ直すことが必要となります。
それには「やりたいこと」「できること」「やるべきこと」の3つの項目で自院を考えてみることです。
1)「やりたいこと」:自院のビジョン、経営理念などを指す。最終的に目指す価値や5年後10年後どのくらいの規模に成長していたいかといった願望などがあてはまる。
2)「できること」:現時点での自院のキャパシティを指す。ここがまさに、自院が今持っている「強み」となる。
3)「やるべきこと」:自院が抱えているクリアしなければいけない問題や課題を指す。「やりたいこと」と「できること」から導き出される取り組むべき課題が該当する。
この3つを常に洗い出し意識することで、自院が今何をなすべきなのか、優先順位が明確になり、日々の行動で必要以上に悩んだり迷ったりすることがなくなるでしょう。
【3】あらゆる問題も、その答えは“自分の中”にある
悩みや迷いの答えは、実は自分の外ではなく自分自身の内にあります。
自分を見失った時はまず自分の足元を見る、そうすることで気がついていなかった自分を再発見し、答えを見つけることができます。
経営も同様で、迷った時はもう一度自院を振り返ってみる、すると今まで見落としていた自院の強みや可能性に気づくことができるはずです。
そもそも何のために経営をするのか、自院の存在意義、つまり自院の使命(=「ミッション」)です。
次回は「いまこそ求められる歯科のミッション経営」についてお伝えいたします。
フォーユーメディカル株式会社代表取締役
Dental Business School 代表
廣田 祥司
⇒ http://www.d-bs.org/