2018年05月19日
毎日の臨床で欠かせない材料となったコンポジットレジンですが、その臨床使用におけるポイントについて、今回は考えてみましょう。
まずは、レジンペーストの選択です。
フロアブルレジンは、市販された当初はライニングを主な用途としていたものが、その機械的性質が向上したところから、臼歯部咬合面へも応用されるようになりました。
また、流れる程度を数段階とした製品が市販されたことも、臨床使用の拡大につながりました。
比較的硬いレジンペーストを窩洞に加圧填塞した場合と、フロアブルレンを窩洞に流し込んだ場合とで窩壁適合性を比較すると、フロアブルレジンを用いたほうが良好な結果を示すことが明らかとなっています。
このように、操作性とともに基礎的研究の結果などを含めて、その評価には高いものがあります。
ちなみに、米国のクインテッセンス出版から『Restoring with Flowables』という書籍が出版されており、その著者はレイヤリングテクニックで有名なDouglas A. Terryです。
この書籍の中でも、フロアブルレジンを使用することで、治療の選択肢が広がるとともに良好な予後が期待でき、さらにチェアタイムを短縮することが可能になったことが強調されています。
フロアブルレジンは、確かにこれまでのレジン充填の幅を広げた材料であると位置づけられます。
フロアブルレジンの選択に関しては、流れる程度は術者の好みが大きく影響すると思われます。
筆者自身は、Middle Flowという中間的な流れの製品を好んで用いています。
窩洞の裏層、歯頸部くさび状欠損および臼歯部咬合面充填まで、幅広く使用できるのがその理由です。
また、とくに前歯部修復では、エナメル質用の光沢感を付与することが求められます。
そのために、フィラー粒径ができるだけ小さいことが重要な事項となるので、ナノサイズあるいはスープラナノサイズのフィラーを高密度に充填している製品を選択しています。
また、各社から数種類のフロアブルレジンが発売されていますが、最高のテクノロジーを有した製品を使うべきであり、その観点からはできるだけ新しい製品を用いるべきと考えます。
フロアブルレジン選択の重要事項の1つとして、ペーストの色調が挙げられます。
多くの場合、A2あるいはA3などの色調を重要視しますが、そのことはある面で正しいといえます。
しかし、コンポジットレジンは半透明の材料であること、審美性獲得には色相、彩度および明度のうちでも、とくに明度を重要視する必要があることを十分に理解することが求められます。
明度とは、黒から白までの明るさの度合いを指すものであり、口腔内では不透明なほど明度が高くなります。
比較的透明なレジンペースト、たとえばエナメルシェードでは、口腔内の暗さが修復物に反映し、結果として青黒い色調が強調され、審美性が損なわれることがあります。
このような観点から、レジンペーストの色調選択にあたっては、OPA2(オペークシェードのA2)あるいはDentin A2(象牙質様の不透明性を有するA2)などのシェードを選択することが必要となるケースがあります。
これは、油絵のキャンバスを想像すると理解できると思います。不透明であるものの、真っ白で明度が高いキャンバスに、絵の具を重ねて絵を描くようなイメージです。
レジン修復で色調適合性が悪いと感じる症例では、色相の適合性よりも明度の調整を考えるべきなのです。
すなわち、明度をコントロールできれば、比較的容易に色調適合性が得られるのです。
逆に考えると、黄色は明度が上昇するとその区別がつきにくくなるので、明度が高い歯では色相の判断が付きにくいのです。
コンポジットレジン修復においては、歯の有している半透明性をいかに模倣するかがポイントとなります。
修復処置にあたっては、残存歯質の有する“明度”に着目し、不透明であるとともに明度が高いレジンペーストを用いることが重要となります。
レジンペーストを填塞している最終段階で、明度が低いと判断したケースなどでは、ホワイトニング色(WDなど)のフロアブルレジンを表層に薄く塗布して明度をコントロールするなども、実践的テクニックとして応用することをお勧めします。
審美性の高いレジン修復を行うためにも、使用するレジンペースト有している特性を理解するとともに、色相、彩度および明度のうちでも、とくに明度を重要視した色調選択を心がけてください。
日本大学歯学部保存学教室修復学講座
宮崎真至
⇒ http://www.dent.nihon-u.ac.jp/graduate/field/o/04/index.html