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【3】コンポジットレジンの発展にも歴史あり

2018年05月02日

さて、今回はコンポジットレジンの発展の歴史を振り返ってみたいと思います。

アクリル(MMA)系の即時重合型レジンが充填用として市販されたのは、1941年のドイツにおいてでした。

この背景には、第2次世界大戦による歯科用合金の不足があったものと推察されます。

終戦後、ドイツの技術が米国に渡り、1947年以降に数種類の製品が市販されます。

本邦においても、1951年から4~5製品が市販されました。

華々しく登場した感のあるアクリルレジンですが、臨床評価においては散々なものがあり、
脱落、変色あるいは歯髄刺激などが多発しました。

これにともなって、アクリルレジン市場は急速に縮小することになります。

しかし、高分子材料を歯科臨床に応用することの魅力は大きいものがありました。

そこで、アクリルレジンという材料が有している欠点を、臨床使用術式を改善することによって補うという試みがなされました。

その代表的な術式として、Nealsonの筆積み法(brush-on technique)が挙げられます。

この手法は、従来の加圧充填法では重合収縮によって窩洞からの脱落が多かったものを、塗布積層充填法によって改善するというものです。

また、ヨーロッパにおいては、流し込み(一挙塗布充填)法も試みられ、広く臨床で応用されるようになりました。

本邦においては、窩洞への円形穿下の付与とともに筆積み法を応用することで、臨床応用範囲が拡大しました。

その結果、1958年にはレジン充填が保険診療に採用されました。

しかし、アクリルレジンによる充填においては、
機械的強度が低いうえに黄変するという決定的な欠点があるところから、その克服のために、

1)アクリル以外のレジンの使用
2)新しい重合起媒方式の採用
3)無機フィラーの添加

などが製品開発の方向となりました。

そこで、常温で重合し、収縮量も小さく色調も安定しているエポキシレジンに着目したのが、
米国の歯科医師であるBowenでした。

開業医であったBowenは、自宅の裏庭にあるポーチに作った研究室で、趣味として研究を行っていました。

その後、彼の研究が米国標準局に認められ、そこで本格的な研究開発がスタートすることとなります。

こうして、ビスフェノールAとグリシジルメタクリレートからBis-GMAが合成されることになったのです。

このモノマーは、室温で数分内に重合硬化し、しかも重合収縮量がMMAの1/3と優れた特性を有し、現在も使用されています。

もちろん、Bis-GMAの開発とともに、無機質フィラーを配合することで複合(コンポジット)化させる研究も進められており、
1965年には米国で製品化され、1967年には日本に輸入されることとなりました。

その後、1974年には、コンポジットレジンが保険導入されました。

ちなみに、酸処理が保険導入されたのが1978年、エナメルボンディングの導入は1979年になります。

コンポジットレジンが臨床使用されるにつれて、その研磨が極めて難しいこと、それに起因する着色や摩耗などが問題となりました。

そこで、研磨器具や研磨法の開発あるいはグレーズ材の応用などが行われたのですが、
フィラーそのものの改良がない限りは本来の解決法とはなりません。

そこで、コロイダルシリカをフィラーとして使用するMFRタイプのコンポジットレジンが1970年代後半に開発されました。

さらに1983年には、ゾル-ゲル法を用いることでサブミクロンオーダーの球状フィラーを製作し、
これを用いたコンポジットレジンが本邦において開発され、SFRタイプのレジンと呼ばれました。

微細なフィラーを使用することで、研磨性は確かに向上しました。

しかし、その含有量は50wt%以下であり、機械的性質とともに重合収縮量が大きいという欠点を有していました。

そこで、フィラーをマトリックスレジンと混合して重合硬化させ、これを粉砕してレジンに混合する方法が考案されました。

このフィラーは、無機質と有機質の複合体となっているところから、有機複合フィラーと呼ばれています。

フィラー技術の進歩は、さらに微細なフィラーを高密度に充填することを可能としてきました。

こうして、ハイブリッド型、セミハイブリッド型、そしてナノハイブリッド型のコンポジットレジンが開発へと進んできたのです。

このように、コンポジットレジンの開発は、多くの研究者とともに、
臨床現場における意見が取り入れられることによって進められ、今日の臨床があるのです。

日本大学歯学部保存学教室修復学講座
宮崎真至
http://www.dent.nihon-u.ac.jp/graduate/field/o/04/index.html