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【2】接着システムの性能を引き出すために

2018年04月16日

前回は、接着システムの開発の経緯についてのお話でしたが、
今回はユニバーサルアドヒーシブの臨床使用に関してお話したいと思います。

ユニバーサルアドヒーシブをデュアルキュアモードで用いる場合、
化学重合性を付与するためにアクチベータを添加して混合する必要があります。

この点からは、臨床的には使いにくいという意見があります。

また、エッチングモードとしてセルフエッチ、
トータルエッチおよびセレクティブエッチのいずれでも使用可能であることもユニバーサルアドヒーシブの特徴となります。

しかし、どのような症例にいずれのエッチングモードを用いればよいのか、
臨床現場からは疑問が発せられるところです。

さらに、さまざまな被着体に対して接着するという特徴を有しているものの、
製品によってはシリカ系のセラミックスの場合には、
被着面にセラミックスプライマーを塗布することを指示しています。

このように考えると、多様性が付与されるとともに自由度が増した感のあるユニバーサルアドヒーシブではあるものの、
臨床にあたっては使用する製品の指示書をしっかりと確認する必要があるのです。

すなわち、ユニバーサルアドヒーシブという名称は、
これら一連の製品における特徴を示すものと理解すべきと考えるべきなのです。

臨床使用に際しては、
従来までの接着システムとの違いを理解するとともに、
製品に添付する指示書を確認することがやはり大切になります。

たとえば、即時重合型レジンというカテゴリーの製品は、
その多くが粉・液タイプとして製品化されています。

基本組成はMMAとPMMAですが、
重合触媒や架橋剤などは製品によって異なるものとなっています。

多くの製品で、
ベンゾイルパーオキサイドと促進剤の芳香族第三アミンとのレドックス重合が用いられています。

この重合触媒の欠点としては、硬化物が経時的に黄変することなどが挙げられ、
その改善が望まれているところでした。

そこで、バルビツール酸誘導体、第4級アンモニウム化合物および有機金属化合物からなる触媒を用いることで、
変色を防止することを可能とした製品が開発されました。

しかし、この触媒の欠点としては、液成分が粉末に対して量的に多くなると、
急激に重合硬化特性が低下することが挙げられます。

これは、粉液を混和する際には通常の重合時間ではあるものの、
筆積みにすると急速に効果時間が遅延することを意味します。

このように、同じような即時重合型レジンでも、それぞれの特性が異なり、
臨床使用においても製品ごとの特性を理解する必要があるのです。

ユニバーサルアドヒーシブにおいても即時重合型レジンと同様なことが言えるわけで、
同じような製品であったとしても、それぞれの特性があり、
それを引き出すためにも臨床における使用法を含めて添付文書などを確認することをお勧めします。

とくに確認すべき事項としては、
[1]アドヒーシブ混合の有無、[2]塗布時間、[3]塗布法(放置or擦る)、
[4]エアブローの圧力、[5]エアブローの時間、[6]光線照射の有無、ならびに[7]光強度などとなります。

ここに挙げた7つの事項は、
それぞれの接着製品が有している性能を発揮させるためにも重要なチェック項目となり、
一度だけでも確認すればよく、これによって優れた予後を得るための一助となるはずです。

私たちの行っている実験の結果から、
ユニバーサルアドヒーシブを臨床使用する際のいくつかの示唆も得られています。

考えてみればあたりまえのようなものばかりですが、
いくつかご紹介しようと思います。

エッチングモードについては、
エナメル質に対してはリン酸エッチングすることで接着性は向上します。

象牙質に関しても、
耐久性を考慮してもエッチングしても変化はない製品が多いのですが、
前回に記載したようにMMPの影響を考慮するとお勧めできません。

リン酸によるエッチング効果は極めて短時間で発揮されるところから、
エナメル質は大丈夫でも、象牙質に対しては細心の注意が必要です。

また、アドヒーシブの塗布ですが、できるだけ多くの量を、回数も2~3回行うことが推奨されますし、
塗布時には歯面を擦るようにすると接着性は向上します。

私たちの研究室では、
できるだけ臨床を行っている皆さんの役に立つ研究を行い、
臨床に役に立つような情報を提供できるように努力しているつもりです。

ぜひとも、日々の臨床における疑問点、
あるいは改良の方向性などをお知らせいただければと考えております。

これが、臨床と研究のコラボレーションであり、
歯科医学の発展につながることだと思います。

日本大学歯学部保存学教室修復学講座
宮崎真至
http://www.dent.nihon-u.ac.jp/graduate/field/o/04/index.html