2017年04月17日
皆さん、こんにちは。
東京都葛飾区で開業しています、鈴木真名です。
前回は、「歯周外科を行ううえでキーポイントとなる検査・診断」について解説し、筆者が歯周外科を行う基準は、
“フラップを開けないと歯石などの起炎物質にアクセスできない場合である”
とお伝えしました。
そこで今回は、いざ歯周外科を行うことになったとき、
まず第一歩となる「切開・剥離」について、その目的とともに解説したいと思います。
●切開・剥離の目的をはっきりさせることが大切
切開にはいろいろな方法と名称があります。
歯肉溝切開、歯槽頂切開、水平切開、垂直切開、斜切開、縦切開など。
しかしこれは、切開の場所や位置関係によって決まったものであり、名称をおぼえることにあまり意味はないと私は感じています。
名称をおぼえるよりずっと大切なのは、
「切開・剥離の目的をはっきりさせること」
「その切開・剥離によって、何を得たいのかを明確にすること」
です。
切開・剥離で重要なポイントとして切開線のデザインが挙げられますが、私がとくに重要視しているのは、以下の5つです。
・術野の確保
・血液循環
・縫合の可否
・縫合の安全性
・術後の審美性
では、そのためのアプローチにはどのようなものがあるでしょうか?
まず、はじめに「骨にアプローチするか否か」が大きなポイントとなります。
骨にアプローチするならば骨膜を剥離し、骨にアプローチしないならば骨膜は剥離しません。
それによって、全層弁か部分層弁かの判断基準になっていくと私は単純に考えています。
●全層弁・部分層弁のポイント
全層弁を形成する際は、骨面に接する切開が必要となります。
ブレードがしっかり骨面に当たった状態で動かさないと骨膜まで届きません。
軽いタッチではアプローチできないため、かなりしっかりとかみこませることがポイントとなります。
なお、全層弁の形成時に主に用いるものは骨膜剥離子となります。
一方、部分層弁では、骨までメスが達したと感じたらいったんメスを引き、そこから軽いタッチで進めていくことがポイントです。
部分層弁の形成時に主に用いるものはメスかマイクロシザー(鋏)になります。
これら全層弁と部分層弁が確実に行えるようになれば、いろいろな歯周外科への応用も可能となってくるでしょう。
しかし、歯周外科に苦手意識をもっている先生にとっては、
「うまくいくかどうか……」
「失敗したらどうしよう……」
といった不安が残ったままだと思います。
では、どうしたらうまくなるでしょうか。
私なりのコツを以下にお伝えします。
●切開・剥離がうまくなるマル秘テク
歯周外科がうまくなるための近道はありません。
ですが、まちがいなくうまくなるコツはあります。
そう、「トレーニング」です。
切開・剥離の術式を学び、トレーニングしたいのであれば、「口腔内模型」を用いるのがよいでしょう。
「この部位ではメスが届きにくいな。だから、こっちの方向からアプローチしてみよう」
「この骨欠損にアプローチするには、こういう切開線がいいだろう」
など、事前にシミュレーションすることが可能です。
ただ、切開線のデザインの設定やシミュレーションには適していますが、当然のことながら模型と実際の口腔内では硬さも違うことから、
切開・剥離の”感触”を学ぶにはあまり適していないと思います。
切開・剥離の”感触”を学ぶには、
豚や羊などの顎骨を用いた実習がよいと思います。
メスが骨膜まで達しているか、手指感覚として伝わってくるからです。
しかし、これも当然ながら、豚や羊の口腔内の形態は人間のそれとは大きく異なるため、
その点を考慮したうえでトレーニングする必要があります。
現在、全国でいろいろなコースや実習が開催されていますので、一度チェックしてみるとよいでしょう。
●まとめ
今回は、歯周外科で用いる「切開・剥離」のポイントをお伝えしました。
次回はそれにつづく「縫合」について、そのコツを解説したいと思います。
鈴木歯科医院
鈴木 真名
⇒ http://www.suzuki-masana.com/