2017年06月19日
皆さん、こんにちは。
東京都葛飾区で開業しています、鈴木真名です。
前回は、「創面保護から抜糸、初期清掃までのコツ」について解説しました。
良好な治癒経過を得るには、切開・縫合・剥離だけでなく、その後の創面保護や抜糸など、
外科後の処置も治療結果を左右することがおわかりになったと思います。
さて、最終回となる今回は、外科後の再評価のタイミング、その後の補綴治療の時期とメインテナンスの間隔などについて解説したいと思います。
●歯周外科後は、再評価が大切
歯周外科後の再評価は、一般的には術後3か月くらいとされています。
「3か月か、それ以上か」という点については、外科処置の内容や治療範囲によって変わってきます。
場合によっては、もう少し待ってからの評価を行ったほうが良いこともあります。
たとえば、軟組織の治癒は3か月で一巡するといわれていますが、
再生療法の場合、軟組織のみならず硬組織も含めた支持組織の治癒になるため、
早期にプローブを入れることに疑問の声もあります。
その際は、再評価のタイミングは3か月以上期間を置いたほうがよいということになります。
経過観察を行いながら、手術部位の治癒状況をみて判断していきます。
●「動揺」のチェックも大切
その後、再評価を行います。
まず、外科部位のポケットデプスやBOPを確認し、術前との比較を行っていきます。
歯周組織の評価が得られたとして、つぎにわれわれが評価すべきは、支持組織としての歯のクオリティです。
その際、考慮しておきたいのが、歯の「動揺」になります。
歯周外科後の咬合の安定を考えたとき、当然、力学的配慮が必要になります。
その際、ワイヤーなどによる暫間固定か、補綴による固定かの判断が必要です。
補綴処置の場合、動揺度がキーポイントとなります。
ですから、動揺度をきちんと把握して対応することが大切です。
もし多数歯にわたって動揺があった場合は、プロビジョナルレストレーションで連結していきます。
再評価と動揺度のチェックは、
このように補綴処置につながる大きなチェックポイントになるのです。
●メインテナンス間隔は治療結果によって変わります
メインテナンスの期間については、いろいろな考え方があると思います。
治療後まもなくは来院間隔を短くおき、
徐々にメインテナンス間隔をあけていくのが一般的です。
ただ、補綴治療は必ずしも理想的な形で終了できるわけではありません。
その治療の完成度によって、メインテナンスのあり方も変わってきます。
当然、理想的な治療結果が得られた場合、メインテナンスも楽になります。
問題点が残った結果の場合は、
メインテナンス時につねにチェックする必要があります。
患者さんのプラークコントロールの確認もきちんと行い、
状況によってはメインテナンス間隔を再考する必要があります。
定期的にメインテナンスに通っていたのにどんどんわるくなってしまった、
ということにならないように、つねに患者さんのリスクファクターや生活背景を考慮して、臨機応変に対応する力が求められます。
治療の予後は、術者側の技術も影響しますが、
患者さんの普段のプラークコントロールや生活習慣も大きくかかわってきます。
生活習慣病になって手術を行っても、
手術後に今までと同様な生活習慣を送ればまた同じことが起こるのと同じです。
●まとめ
これまで、6回にわたって歯周外科の各ステップでのポイントをお伝えしてきました。
歯周外科に苦手意識があった先生も、
基本的な1つひとつのステップをきちんと踏んでいけば、結果がついてくるのがわかったのではないでしょうか。
歯科臨床においてもっとも大切なのは、「妥協しないこと」だと思います。
その熱意が伝われば、患者さんもきっと協力してくれますし、スタッフもついてきます。
地域のホームデンティストとして必要なことは、
患者さんが健康になるために歯科医院と患者さんが同じ方向に二人三脚で歩んでいくことではないでしょうか。
そのために、日々知識や技術の研鑽はかかせません。
最後になりましたが、この連載が読者の皆さんの明日の臨床に少しでも役立ったなら幸いです。
鈴木歯科医院
鈴木 真名
⇒ http://www.suzuki-masana.com/