2017年05月01日
皆さん、こんにちは。
東京都葛飾区で開業しています、鈴木真名です。
前回は、「切開・剥離がうまくなるコツ」についてお伝えしました。
歯周外科に対する苦手意識を克服するには、模型や豚・羊の顎骨を用いてトレーニングを積むことが、確実な上達への道であることを解説しました。
そこで今回は、切開・剥離後の「縫合」について、その目的とともに解説したいと思います。
●縫合には主に2つの目的があります
そもそも、縫合は何のためにするのでしょうか。
1つは、切開・剥離して開いた弁どうしを再度閉じることで、創面を閉鎖すること(closing suture)にあります。
もう1つは、縫合によって目的の部分に歯肉を位置づけること(stayning suture)にあります。
縫合には、単純縫合、8の字縫合、マットレス縫合、懸垂縫合、連続ロック縫合などいくつか方法があります。
歯周外科の初心者の先生は、まず単純縫合とマットレス縫合の2つを習得すればよいと思います。
さて、第1回からお伝えしているように、筆者の歯周外科の判断基準は、「フラップを開けないと起炎物質(歯石)を除去できない場合」です。
歯周外科のなかでも、もっとも基本的な術式がフラップキュレッタージです。
切開・剥離で歯肉弁を開くことによって、
それまで見えなかった歯根に付着した歯石などが見えるようになり、
見えればアプローチして起炎物質を除去することができます。
起炎物質を除去した後には、速やかに縫合に移ります。
つぎに、縫合の際に、私が重要だと思うポイントをお伝えします。
それは、「この糸を引っ張ったら、この歯肉がどうなるか?」を頭のなかでシミュレーションすることです。
歯肉は、患者さんや部位によって薄い歯肉もあれば、厚い歯肉もあります。
すべての患者さんに同様に行うのではなく、状況に応じた判断が大切です。
縫合において、もう1つ重要な点として、縫合糸の選択があります。
縫合糸の種類はあくまで手術範囲の広さや種類、部位によって適宜選択すべきであると感じています。
縫合の原則は、組織に対して強いテンションがかからないような優しい縫合を心がけることにあります。
そのためには、均一な力が加わるような縫合が必須となります。
具体的には、等間隔かつ等深度が条件となるでしょう。
針を刺した位置と創面との距離(a)が、
創面と針の出す位置との距離(b)を等間隔にすることが重要といえます。
歯周外科にて起炎物質を除去できたにもかかわらず、
縫合がきちんとできなければ、その隙間から細菌やプラークが入り込み、良好な治癒を導くことができません。
では、どうしたら縫合がうまくできるようになるでしょうか。
●縫合がうまくなるマル秘テク
縫合がうまくなるためには、切開・剥離のトレーニング同様、模型で練習したり、豚や羊の顎骨で実習することが大切です。
模型での練習を行うことで、針を刺入する角度や、創面との距離が等間隔であるかなどを、何度もチェックすることができます。
とくに、歯肉弁の断端どうしがぴったり合わさるように縫合することが重要で、それがきちんとできるようになるまで練習することが大切だと思います。
ただ、切開・剥離のトレーニングと同じことがいえますが、模型や顎骨と、実際の口腔内では状況が異なります。
実際の手術では患者さんの口腔内で行うため、それを想定して、どの角度からどのように行うかをイメージトレーニングする必要があります。
また、手術部位から出血がある場合は、血液で術野が見づらくなったり、焦ってしまって思うようにいかない状況も起こり得ます。
ですから、トレーニング時には、そういったさまざまな状況を想定して行うことが重要となります。
歯周外科では、さまざまな器具を用いることになるため、器具の受け渡しや補助など、アシスタントとの連携も重要なポイントです。
アシスタントは当然のことながら、
術者がどのような歯周外科を何を行うのか、
次のステップが何かを事前に把握し、
臨機応変に対応できる知識と技術が必要です。
なお、私は日常臨床でマイクロスコープを用いており、自分が行った縫合が正しくできているかを拡大視野下にて確認することができます。
マイクロスコープを用いることは、
じつは最先端の診療を行っているわけではなく、
自分が基本に忠実な手技をきちんとできているかという、
原点に立ち返ることを意味すると私は思っています。
その積み重ねがアドバンスな治療につながり、
高度かつ精密な治療を実現すると考えています。
やはり、縫合の際にもっとも重要なことは、「妥協しない」という点に尽きると思います。
創面が完全に封鎖できていなくても、
「このくらいの隙間ならいいか……」と決して思わないことです。
自分がイメージしたとおりの縫合ができるまで、妥協せずに行うことが何より大切ですし、それがなければいつまでたっても成長はないでしょう。
●まとめ
今回は、歯周外科で用いる「縫合」のポイントをお伝えしました。
次回はここまでの基礎的な内容を踏まえたうえでの応用について、そのコツを解説したいと思います。
鈴木歯科医院
鈴木 真名
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