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食物繊維と歯 その2

2007年05月21日

食物繊維のほとんどは植物性食品に由来する。そして、水に溶けない“不溶性”と“水溶性”の食物繊維がある。今回話題にしたいのは、“不溶性食物繊維”である。これは、別名“粗繊維”と呼ばれ野菜のスジなどに含まれる硬い繊維のことである。それでは、この繊維は、どうして硬いのだろう?

動物細胞の特徴は、軟らかい細胞膜で覆われていることだ。そして動物には、骨がありこれで体を支えている。一方、植物には骨がない。これでは、葉や花の重さに耐えきれないし、空に向って伸びることもできない。そこで植物細胞は、周りに硬い“細胞壁”を持っている。ちょうど大きな建物の鉄骨と同じである。

また、動物が果物を食べるときには、種も一緒に飲み込む。種の表面は硬く消化できない。だから動物が離れた場所で排泄することで、種子は発芽し子孫を残すことができるのだ。このような理由から細胞壁が、不溶性食物繊維として体に良いことがわかる。

それでは食物繊維と歯との関係。ある幼稚園で野菜の摂取頻度と齲蝕との関係について調べた。その結果、野菜をよく食べる子の乳歯の平均齲蝕歯数は5.1歯。一方、ほとんど食べない子は8.1歯であった。野菜をよく食べる子は、齲蝕が少ないことがわかる。これは自浄作用のおかげだろう。

それを示唆する別の研究。ネズミにデンプン(14%)と砂糖の混合食を与えたら、約70%に齲蝕がみられた。一方、セルロース(14%)と砂糖の混合では、40%以下となった。硬い食物繊維をよく噛むことで、齲蝕の発生が抑えられることがわかる。

ところで、齲蝕が多いから野菜を食べる事ができないことも考えられる。「歯を抜いたら便秘になった。」とか「歯を治したら便秘が治った。」などの話も耳にする。なかでも根菜類は、歯がないと食べられない。いくら体に良い食物繊維でも、噛まずに飲み込んだら消化不良を起こす。実際に、高繊維食は低繊維食に比べ、20回以上噛む回数が増える。すなわち食物繊維の摂取は、噛める歯の存在が重要であったのだ。
 
 
□■ 岡崎先生のホームペ-ジ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/