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MAIL MAGAZINE メールマガジン

【1】歯周外科を行ううえでキーポイントとなる検査・診断

2017年04月03日

皆さん、こんにちは。

東京都葛飾区で開業しています、鈴木真名です。

このメールマガジンでは、歯周外科に苦手意識がある先生でもそれを克服できるように、
そして歯周外科がうまくなるマル秘テクニックを、6回に分けてお伝えできたらと思っています。

要点を絞ってお話しすることになるため、歯周外科全体を網羅することはできませんが、その点ご了承いただければ幸いです。

では、はじめましょう。

●歯周外科はなぜ必要か?

そもそも、歯周外科に苦手意識をもたれている先生は、

「患者さんに痛い思いさせてまで、歯周外科は必要なの?」
「外科手術の説明をすると患者さんに嫌がられる……」
「切開・剥離・縫合が難しく、それらの処置をしても結果がだせるか自信がない……」

など、いろいろな考えがあるかと思います。

一般的に、歯周外科はどのようなときに必要となるのでしょうか。

日本歯周病学会のガイドラインでは、歯周外科の適応や注意事項について、
以下のように明記しています(文献1より引用)。

<歯周外科治療の適応>
[1]歯周基本治療を行っても、深い歯周ポケットが残存している場合
[2]軟組織、および硬組織の形態異常によりプラークコントロールの不良や歯周炎の再発が起こりやすい場合
[3]審美障害や適切な修復・補綴物の装着を妨げるような解剖学的形態異常

<術前に満たしておくべき条件>
[1]患者への説明が行われ同意が得られていること
[2]患者の全身状態がよいこと
[3]患者の口腔衛生状態がよいこと
[4]喫煙していないこと

そして、

「歯周基本治療後の再評価時におけるプロービングポケットデプスが概ね4mm以上、プロービング時の出血が(+)のときが適応ですが、プロービングポケットデプスがこれより浅かったり、プロービング時の出血がなくとも、歯肉の形態不良改善のために手術が行われることがあります」

と記載されています。

これらを踏まえたうえで、以下に、私が考える歯周外科の判断基準をお示ししたいと思います。

●歯周外科の判断基準と、その診断に必要な検査

私は、歯周組織に炎症を生じさせている根本原因(起炎物質)が、
フラップを開かない限りアプローチして除去できない場合に歯周外科を行うこととしています。

もちろん、それを患者さんに伝えて、同意を得られた場合にのみ施行します。

では、術前にどのような検査を行う必要があるか、見ていきましょう。

まず、一般臨床家がおさえておくべきものがあります。

X線、口腔内検査、スタディキャストによる検査です。

・X線検査

X線検査では、骨欠損の状態を把握します。

最近では、CBCTを用いた三次元的な検査も可能となってきています。

二次元であるデンタルX線診査では、
骨欠損の状態を三次元的には把握できないため、
あくまで「こういう欠損形態だろう」という予測となります。

その予測のうえに、口腔内診査を行うことが大切です。

・スタディキャストによる検査

いわゆる口腔内模型ですが、このメリットは、口腔内をさまざまな角度から観察できる点です。

患者さんの口腔内を観察する場合、前歯部はよくみえますが、奥にいくほど観察するのが難しくなります。

それを模型にすることで、歯や歯肉形態を細かく把握することができるようになりますし、
いざ歯周外科が必要と判断した際にも、切開や剥離のデザインを考えるのにとても役立ちます。

・口腔内診査

これは、歯周組織の炎症の有無、そして程度を把握するために必要です。

プローブでポケット深さを測定することで侵襲の度合いを調べます。

プローブ時出血(BOP)の有無の確認も重要です。

出血がある場合、そこに炎症がある根拠、すなわち炎症起炎物質が歯根面にあることが予測できるのです。

・診断のステップ

まず、初期治療を徹底的に行います。

いくらポケットが深かったり、歯肉に炎症があっても、まずは初期治療が大切です。

患者さんにより個人差がありますが、初期治療のみで十分良くなる方が多いものです。

ですから、初期治療後の再評価がとても重要で、歯周外科の判断基準となります。

そして、繰り返しになりますが、歯周外科を行う際の判断基準として、
まず1つめは、歯石をフラップを開けないで確実に除去できるかどうかです。

複根歯のように形態が複雑な場合、
フラップを開けないでアクセスするのが難しいことは想像に難くないでしょう。

2つめの判断基準は、口腔内の環境改善のためです。

患者さんの口腔内を生涯にわたり良好な環境を保つためには、

時間軸を考慮したアプローチが大切です。

つまり、現状のリスクと将来のリスクを勘案し、
将来のために環境改善をしておいたほうがよい場合は歯周外科を検討します。

たとえば、歯周形成外科手術も歯周外科の1つですが、歯肉退縮で露出した歯根面に対する根面被覆術なども、
審美的な改善だけでなく、根面う蝕予防としての環境改善にもなります。

●今回のまとめ

まとめに入りますが、

「なぜ骨吸収が起こっているのか」

という根本原因を把握することがまず重要です。

つまり、炎症起炎物質であるプラークや歯石が存在するという事実に対し、
“フラップを開けないとアクセスできない場合”に歯周外科の適応であると筆者は考えています。

ただ、これも繰り返しになりますが、
あくまで患者さんの同意が得られなければ歯周外科は行えませんので、
まずは歯周外科のメリット・デメリットをきちんと患者さんに説明することが大切となります。

今回は、歯周外科を行う際の検査・診断のポイントをお伝えしました。

次回は、歯周外科の際によく用いられる「切開」とその目的についてお伝えしたいと思っています。

参考文献
1.日本歯周病学会(編).歯周治療の指針2015.東京:医歯薬出版,2016.

鈴木歯科医院
鈴木 真名
http://www.suzuki-masana.com/