スマートフォン版サイト

MAIL MAGAZINE メールマガジン

【5】健康で整った顔立ちになるために、知っておかなければならないこととは!?

2017年03月03日

小児の口呼吸に関する実態調査より、

「口呼吸が疑われる園児の割合は22.3% で、1/4近くの園児が口呼吸を行っている可能性がある」

という報告がされています。

また口呼吸が長期的に続くと、
「アデノイド顔貌」と呼ばれる特徴的な顔つきになります。

この実態調査のなかでさらに注目すべきは、

「鼻疾患 、アデノイド疾患との関連も示唆されたが、口呼吸群においても71.1%の園児は、1分以上口唇閉鎖可能であると回答していることから、習慣性口呼吸の割合が高いのではないかと推察された」

つまり現在口呼吸を行っている7割以上の小児は、意識すれば鼻呼吸ができるということです。

また「口呼吸が口唇や口内の乾燥、開咬や上顎前突の不正咬合、食べ方の問題とも関連していることが示唆された」とも報告されていることからも、
口呼吸を鼻呼吸に改善できれば、口呼吸にともなって、将来的に発現する開咬や上顎前突を予防、または寛解することができる、ということが考えられます。

そこで今回は、患者さんに口呼吸とアデノイド顔貌についてよく知っていただき、患者さんと保護者が生活習慣の改善を意識することで、
歯科疾患の予防につなげることを目的として、正しい情報をわかりやすくまとめました。

さらに口呼吸とアデノイド顔貌は、全身的な健康に悪影響をもたらすことも説明していきますので、
ぜひ、かかりつけ歯科医で患者さんの「アデノイド顔貌」をいち早く見つけ、口呼吸の改善をしていただきたいと願います。

●アデノイド顔貌とは

アデノイド顔貌とは、口蓋垂の奥にあるリンパ組織であるアデノイド(=咽頭扁桃)が肥大している人に起こりやすい、独特の顔つきを指します。

通常、アデノイドは2歳頃から自然と大きくなり、5歳頃に大きさのピークを迎え、
その後少しずつ小さくなって、思春期には目に見えない程度になります。

アデノイドが肥大化するのは、免疫力が弱い幼児期に、鼻や口から入ってきた細菌やウイルスなどの侵入によって、炎症を起こしているためです。

アデノイドが肥大化することによる問題は、気道が狭くなり鼻呼吸をしづらくなることです。

本来、成長とともに免疫機能が成熟すると、アデノイドは小さくなり鼻呼吸が安定します。

しかし、思春期を過ぎても長期間、口呼吸の習慣が続いていると、アデノイドが肥大したままになります。

口呼吸により細菌やウイルスが体内に侵入しやすくなり、アデノイド肥大が繰り返されて、結果的に肥大したままになってしまいます。

口呼吸の習慣がついてしまうと、成人でもアデノイドが炎症により肥大化してしまうことがあります。

●アデノイド顔貌の特徴

1)無表情顔貌、鼻唇溝の消失
口呼吸が続き口唇閉鎖していないと、口腔周囲筋が十分に発達せず、頬や口元がたるみ、しまりのない面長な顔になります。

加齢により、だんだん頬のたるみが目立ってきます。

2)舌癖(低位舌、異常嚥下癖)
アデノイド肥大があると、低位舌が認められることが多く、低位舌により下顎骨は後方回転します。

口腔周囲筋が発達せず、口唇閉鎖できない状態で咀嚼嚥下をしていることで、異常嚥下癖が発現する可能性が高くなります。

3)不正咬合(上顎前突等)
アデノイドによる顎顔面の変化について、長期間口呼吸を続けていた者は、
口輪筋、頬筋が弱くなり、開口状態となり口唇も上下に分離され、その結果上顎前歯への後方への圧力が減少し、
前歯が唇側に押し出されます。

さらに舌の悪習癖から上顎前突で狭窄したV字型の上顎歯列弓と高口蓋、交叉咬合および下顎骨の後方回転を呈することもあります。

口呼吸時には開口筋が下顎を後上方へ引くように作用する。

これによって下顎歯列は正常より遠心へ移動し、下顎遠心咬合による上顎前突が確立される。

次に気道を大きくするために、舌は口蓋へ接触せずに上顎の臼歯部は舌からの外圧を失うことになり、
内外の筋力のバランスを失う。

すなわち外側からの力のみが作用し、上顎臼歯は内側へ圧迫されることになります。

4)口唇閉鎖不全、口呼吸
アデノイドの肥大が著明なものは、口呼吸を訴える確率が高く、これがアデノイド顔貌と密接な関連をもつといわれています。

初期の頃は口呼吸が習慣になっているため、無意識にいつも口を開けている状態といえます。

しかし、口呼吸が長く続いた結果上顎前突になると、前歯が唇側傾斜しているために、意識しても口唇閉鎖が困難になってしまいます。

5)口唇乾燥
口呼吸をしているということは、乾燥した冷気を取り込むことになるので、
乾燥、冷気の刺激が存在することとなり、口や口唇の乾燥が生じることにつながるといわれています。

6)鼻閉塞、睡眠中のいびき
咽頭扁桃が肥大すれば、小児では鼻咽腔が狭小なため鼻閉塞が起こりやすく、
さらに炎症が加われば、炎症性分泌物により気道が狭くなり、
鼻閉塞はいっそう著明となると考えられています。

アデノイドが肥大して、鼻の奥の気道が狭くなり呼吸しづらくなるために、いびきの原因になります。

これがもっと悪化すると、睡眠時無呼吸症候群と呼ばれる睡眠中の呼吸障害になります。

7)猫背姿勢
下顎骨の後方回転により上顎前突の不正咬合になると、体の重心のバランスが悪くなり、姿勢が猫背になりやすくなってしまいます。

また口呼吸時には、頭位を上方に偏位させるのが楽な姿勢であると報告されており、
鼻呼吸時には見られない僧帽筋の収縮が見られることから、猫背であることとの関連がうかがえます。

●口呼吸が引き起こす悪影響

「アデノイド顔貌」の原因の1つに口呼吸がありますが、口呼吸が引き起こす悪影響は、他にもたくさんあります。

・う蝕罹患率が高まる
・歯周病罹患率が高まる
・異常嚥下癖、低位舌といった舌癖が発現する
・上顎前突を主とした不正咬合が発現する
・歯が変色する
・口臭が悪化する
・風邪やインフルエンザなどの感染症の罹患率が高まる
・アレルギー罹患率が高まる
・姿勢が悪くなる

●「アデノイド顔貌」の治療

すでにアデノイド顔貌になってしまっていても、矯正治療でアデノイド顔貌を治すことができます。

ただし、矯正治療を行っても口呼吸が続いていれば、またアデノイド顔貌に戻ってきてしまうため、
アデノイド顔貌になった原因の口呼吸がなぜ起きているのか、個人個人の原因を明らかにして、口呼吸を鼻呼吸にしなければなりません。

慢性的な鼻炎、鼻閉塞、アデノイド肥大、鼻中隔彎曲症など鼻の異常があれば、正常な鼻呼吸をすることができないため、
点鼻薬や飲み薬を使ったり、薬だけで治らない場合は外科手術が必要な場合もあります。

●「口呼吸」を改善するための方法

・食事中の水分摂取を控えて、口を閉じてよく咬む
・口腔筋機能療法(MFT)で口を閉じるための筋肉を鍛える(有名なものに「あいうべ体操」があります)
・就寝時、口にテープを貼る
・就寝時、鼻呼吸を楽にするグッズを鼻につける
・前歯の唇側傾斜で口唇閉鎖が困難な場合は、矯正治療で自然に口を閉じられる状態にする

かかりつけ歯科医だからこそ、地域の小児と保護者にふれあい、口呼吸とアデノイド顔貌を早期に発見することができるはずです。

正しい情報を伝えて患者さんを健康にすることで、患者さんとの信頼関係を強化し、
クリニックに通院する患者さんの満足度が高まれば一石二鳥です。

参考文献
1.守屋由佳子,猪狩和子,小松偉二,真柳秀昭.小児の口呼吸に関する実態調査―保育園年長児の保護者に対するアンケート調査―.小児歯科学雑誌 2002;40:432.
2.坂本敏彦.日本人顔面頭蓋の成長に関する研究―Sella turcicaを基準として―. 日本矯正歯科学会雑誌 1959;18:1-17.
3.Linder-Aronson S. Adenoids. Acta Otolaryngol Suppl 1970;265 : 1-132..
4.McCoy JD. Applied orthodontics. ed 5. Philadelphia:Lea &Febiger, 1941.
5.Massler M, Poncher HG, Schour J. Textbook of pediatrics. ed 4. Philadelphia:Saunders, 1945.
6.Negus VE. Disease of the nose and throat. London:Cassel Co., 1955.
7.Moyers RE. Handbook of orthodontics. ed 2. Chicago: The Year Book Publishers, 1963.
8.Neivert H. The lymphoid tissue problem in the upper respiratory tract. Am J Orthod 1939;25 : 554.
9.Cooke RA. Proceedings of the dental centenary celebration. Baltimore:Waverly Press, 1940.
10.Reed GF. Nasal obstruction : causes and treatment. Postgrad Med 1963;34:464-469.
11.伊藤英夫. 咽頭扁桃のX線高圧撮影による観察. 日本耳鼻咽喉科学会会報 1968;71: 1.
12.張信彦. レントゲンセファロメトリーによるアデノイドの顎顔面におよぼす影響についての研究.日本口腔外科学会雑誌 1973;19:4.
13.宮崎総一郎,鈴木賢二,西村忠郎,岡本牧人,千葉伸太郎.小児の睡眠呼吸障害:いびき,無呼吸. 日本口腔咽頭科学会雑誌 2005;17:169-176.
14.Vig PS, Showfety KJ. Phillips C. Experimental manipulation of head posture. Am J Orthod 1980;77:258-268.
15.Ribeiro EC, Marchiori SC, Silva AMT. Electoromyographic analysis of trapezius and sternocleidomastoidens muscles during nasal-and outh-breathing children, J Electromyogr Kinesiol 2002;12: 305-316.
16.長谷川誠.鼻呼吸障害と全身疾患.Johns 1996;12:675-678.
17.小久江由佳子,猪狩和子,小松偉二,真柳秀昭.小児の口呼吸に関する実態調査―保育園年長児の保護者に対するアンケート―.小児歯科学雑誌 2003;41:140-147.

宮島悠旗ブライトオーソドンティクス
宮島 悠旗
http://www.dr-miyajima-yuki.com/profile/