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【1】糖尿病についてざっくり学ぼう

2016年10月03日

はじめまして、医師・歯科医師の米永一理(よねなが・かずみち)です。

今回、6回に渡って、ざっくりと医学知識をまとめていきます。

とくに教科書には書いてないけれど、患者さんや家族から「歯医者さんのお話ってわかりやい!」
と言われるような内容をまとめてみようと思います。

超高齢社会を迎え、歯科医療においても、全身状態の把握をしっかりとしないといけない患者さんが増えてきています。

とくに国の方針もあり、できるだけ住み慣れた地域での在宅医療が進められており、
一般歯科においても最低限の医学的知識を整理しておく必要があるかと思います。

また、多職種連携にかかわるためには、共通言語として有病者治療の考え方を把握しておくことも重要です。

さらには皆様も、ご自身やご家族が有病者であったり、いつ有病者になるかわからない状況かと思います。

主な病気のことを知っておくことは、病気にならない、症状を悪化させないために、
そして、健康で楽しい人生を送るために大切ではないでしょうか。

1.糖尿病のメカニズムには「金平糖理論」

初回は糖尿病に関してお話をします。

日本においては、糖尿病予備軍を含めると2,210万人いると推計されています。

じつに成人の約20%にあたります。

糖尿病は、発症のメカニズムによって、1型、2型などに分類されます。

ざっくり言うと、1型は約5%を占め、若年性でやせ型であることが多く、主に自己免疫疾患で、治療はインスリン注射が必要です。

一方、2型は約95%を占め、中年以降発症で肥満型であることが多く、遺伝性・家族性の場合もあり、
治療は食事・運動慮法、投薬などがまずは行われます。

今回は、この糖尿病をできるだけイメージしやすいように解説します。

糖尿病を語るうえで、金平糖(こんぺいとう)を思い出していただけるとわかりやすいかと思います。

私は小さい頃、祖父母の家に置いてあった金平糖が印象に残っています。

小瓶に入れてあり、食べて美味しいだけでなく、色とりどりできれいだなと感じたことを思い出します。

糖尿病は、ざっくり言うと、血中にこの金平糖がたくさん流れている状態です。

つまり高血糖状態は、ギザギザの金平糖が血管内にぎっしりあり、これらが周囲の血管壁を傷つけることで、
動脈硬化やプラークの形成を行う状態と言えます。

さらに、糖尿病の3大合併症として、末梢神経障害、網膜症、腎症がありますが、これらの発症も「金平糖理論」で考えるとわかりやすくなります。

つまり、末梢では血管と神経が伴走していることが多いですが、
金平糖がたくさん血管内、とくに毛細血管にあると、毛細血管だけでなく、周囲の神経も傷つけてしまいます。

これが糖尿病性末梢神経障害です。

さらに目に金平糖が集まると、血管と近接する網膜を傷つけ糖尿病性網膜症となります。

同様に、腎に金平糖が集まると、ろ過装置である腎の糸球体を傷つけたり、金平糖が詰まることで腎機能が低下し、糖尿病性腎症となります。

これらの合併症は、糖尿病発症後10年以降から徐々に現れることが多いです。

しかもその順番は、末梢神経障害、網膜症、腎症の順です。

この「金平糖理論」から言えることは、血管径と障害の順番が関係する傾向にあるということです。

末梢神経は毛細血管、網膜は毛細血管と小血管、腎は中小血管が近接しておりより細い血管周囲のほうが、
近接した周囲組織が金平糖の障害を受けやすいと言えます。

2.糖尿病の診断基準、覚えていますか?

さて、そもそも皆さんは糖尿病の診断基準を覚えているでしょうか。

これもざっくり言うと、空腹時血糖値が126mg/dl以上、またはHbA1cが6.5%以上が糖尿病領域となります。

そして血糖値は直近の糖代謝の状態を表し、HbA1cは1~2か月の状態を表します。

つまり、HbA1cは数か月の生活の成績表みたいなものであり、その上がり下がりに一喜一憂する患者さんも多いです。

糖尿病の重症度はこのHbA1cを体温として考えるとわかりやすいです。

つまり、HbA1cに30を足すとその人の全身状態が見えてきます。

たとえばHbA1cが7.5%であれば37.5℃であり、微熱があるような全身状態と言えます。

HbA1cが12%であれば42℃であり、生命の危機的な発熱がある状態と同じ程度である判断できます。

つまり抜歯などの観血的処置をするにあたって、熱が治まってから行うべきであり、7.5%未満が1つの目安となるかと思います。

傷や歯周病の治りという点でも「金平糖理論」がわかりやすいのではないでしょうか。

血糖が高いとは金平糖が血管内にたくさんあるので、観血的処置をすると、金平糖があふれでてくることとなります。

そうすると傷が治る過程で、金平糖が挟まっていると組織どうしがうまくくっつかず創傷治癒不全となります。

また細菌にとって餌となる金平糖がたくさんあると、細菌増殖が起こりやすく、易感染性となります。

つまり血糖コントロールをしない限りは、創の治癒や歯周病のコントロールには難しいと言えます。

ひと昔前までは厳密な糖尿病のコントロールが求められていましたが、
現在高齢者の場合、糖(グルコース)をコントロールし過ぎによる低血糖状態の生命予後の不良例も指摘されています。

よって、HbA1cが7%前後であれば許容されることが増えてきています。

また、金平糖によって血管が傷つけられて、合併症がでるまで10年単位でかかるため、重度の糖尿病合併症を発症する前に、
寿命を迎えてしまうとの考え方もあることも理由として挙げられます。

3.糖尿病を予防するには?

では、糖尿病にならないようにするため、また、なっても進行しないようにするためにはどうしたら良いのでしょうか。

1型糖尿病では、インスリンをそもそも作ることができないので、インスリン注射が必要ですが、
2型糖尿病ではインスリンの働きが悪くなるため、対応方法がさまざまです。

運動療法や、投薬により摂取したグルコースを早く代謝させるような改善方法ももちろんありますが、
まずはグルコースの供給源である炭水化物を減らすことが先決かと思います。

つまり、ごはん、パン、麺類などを減らすことです。

とくに寝る前の炭水化物摂取は、エネルギーとして使われず、蓄積される傾向にあるため、できるだけ控えたほうがよいと言われています。

ちなみに1食あたりの適切なごはん摂取量はグーをした量であるとされ、
麺類はごはんより1.3倍ほど炭水化物が多いため、さらに量は少なくする必要があります。

ケーキ、ジュース、ラーメンなど糖分が含まれるものは、ヒトを一時的に幸せにします。

でもその幸せは長くは続きません。

そして、いずれしわ寄せがきます。

糖尿病を防ぐには、いかに炭水化物を減らすことができるかが重要となります。

ちなみに私は夕方以降、炭水化物はほとんど摂りません。

また食事自体も日々の生活に忙殺されて、結果的にカロリーリセッションになっていると感じています。

ヒトはもともと動物として飢餓状態で生きてきたことを考えると、普通の方であれば必要とされているカロリーの70%でも生きていけるかと思います。

つまり、現在通常量のカロリーが摂れている方は、炭水化物を減らした分をあえて、タンパク質や脂質で補わなくても、
ある程度は大丈夫な方が多いのではないでしょうか。

そのようななかで、最近の私のお気に入りは缶に入った炭酸水です。

糖分が入っていないので糖尿病を気にしなくて良いですし、喉ごしを楽しむことができます。

炭酸自体に疲労回復効果や消化管運動改善効果、腹部膨満効果があるとも言われています。

そして何よりも安いです。
 
さて、今回のまとめです。

[1]糖尿病は、血中にギザギザした金平糖がたくさん流れているイメージ。

[2]HBA1cは「+30」をして、体温と同じように考えると重症度がわかりやすい。

[3]糖尿病予防のために、炭水化物をいかに減らすかがポイント。

次回は高血圧に関して記そうかと思います。

※本メールマガジンは、わかりやすくするために「ざっくり」とした内容です。
 詳細は各領域の成書をご参照ください。

東京大学医学部附属病院顎口腔外科・歯科矯正歯科 助教
医学博士(東京大学)
米永 一理