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手元資金をどう把握するか

2001年10月01日

※この原稿は、5/21付・友の会「Fax Box」の「経営相談室30」に掲載されたものです。グラフについては、「DENTAL PLAZA」の友の会ページの、バックナンバーをご参照ください。

 
【質問】—————–

当医院の昨年(平成12年)の経営実績は次の通りですが、所得が1,125万円も出ているのに専従者給与から借入しないとお金が回っていかないのです。
どうしてこのようになるのか教えていただけませんか。

・収     入 48,658,478円
・材料薬品費(原価)   3,499,216円
・差  引  額 45,159,271円
・経     費 33,907,813円
・所     得 11,251,458円

経費のうち
(1)減価償却費  1,546,453円
(2)専従者給与  4,800,000円
借入返済額
(3)事業用    3,908,160円
(4)非事業用   1,856,837円

その他生計費等
(1)生活費       3,020,000円(子供の学資・利息含む)
(2)生命保険      1,643,400円 子供2人
(中2女、小5男)
(3)歯科医師会非経費分 1,861,630円
(4)税金支払額     2,157,873円(所得税、住民税)
 

【回答】—————–

所得(損益収支)と現金(資金)収支は必ずしも同じではないのです。
つまり上記の収入から原価及び経費を差し引いた所得と、実際に入ってきたお金と出て行ったお金の差額(現金収支)は同じになりません。

例えば収入に加算されていても昨年の11月及び12月の社保、国保の振込み額は今年の1月及び2月に入金になっているはずですから、それだけでも違ってきます。

また減価償却費はお金の出て行かない経費ですが、上記のように所得を計算するときには経費としてさし引かれますが、お金は出ていないのです。

一方借入元金の返済額(事業用)や非事業用の元利返済額は経費になりませんから、上記の経費には含まれていません。ということは所得から支払われていることになります。したがって所得=資金ではないのです。

収入48,658千円から材料薬品の原価と経費を合計した37,407千円を差し引き、それにお金の出て行かない減価償却費の1,546千円を加え、税金2,157千円を差し引きますと10,640千円になります。これを可処分所得といいますが、これから借入返済の5,764千円を差し引きますと、「年間手元資金残」は4,876千円になります。

式で表しますと、

可処分所得=所得-税金+減価償却費=
11,251-2,157+1,546=10,640千円

年間手元誌金残=可処分所得-借入返済額(非経費の利息を含む)
=10,640-5,764=4,876千円

になります。

経費にならない生活費、生命保険料、歯科医師会から控除される金額で経費にならないものの合計が図のように6,524千円になりますから、資金は1,648千円不足することになります。

専従者から借りてもよいのですが、夫婦間の貸し借りは税務署の方でも注目しますので、借入返済額を落とす(従って返済期間を伸ばす)か、生活費の見直し、生命保険の見直しをするか、歯科医師会から控除される経費にならない支払いを見直して削減する努力が必要でしょう。

このままであれば、専従者給与からどれだけ税金が差し引かれているか分りませんが、少なくとも4,800千円は残りますから、そこから生活費として2,000千円程度出すことにすれば問題はないでしょう。