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《経営相談室》 今後の給与体系についての考え方

2001年05月21日

※この原稿は、4/21の友の会「Fax Box」の「経営相談室29」に掲載されたものです。
グラフについては、「DENTAL PLAZA」の友の会ページの、バックナンバーをご参照ください。

【質問】—————–

当院には職員として衛生士が2人、歯科助手が1人、受付が1人の計4人おり、勤続年数が一番短い職員で5年、一番長いのは衛生士で15年になります。昨年の給与総額(賞与を含む)が13,345万円になり、収入に対する給与賃金の比率が26.3%にもなります。

年々収入が下降傾向にあり、給与賃金比率が上昇してきているのですが、今後の給与体系はどのようにすべきかご教示ください。

【回答】—————–

人事院が発表している「民間給与の実態」(毎年公務員の給与を決める目的で民間の給与の実態を調査した報告書)では、企業規模が500人未満の場合で、看護婦や準看護婦は大体35~36万円前後で頭打ちになり、企業規模が500人以上でも45万円前後で頭打ちになっています。

これに対して栄養士の場合は500人未満の規模で37万円程度、500人以上の規模で50万円前後で頭打ちになっています。栄養士の方が若干ですが高くなっているのです。

栄養士の場合病院ばかりでなく、一般の企業の食堂やレストラン等に勤務しているからではないか、病院の場合は生産性が低いから、自ずから昇給が限定されるのではないかと思います。「医療サ-ビス」は「人手をかける」ことがサ-ビスの基本になっていると思うのですが、従って生産性に限界がでてくるのはやむを得ないことで、「医療サ-ビス=低生産性=給与額の限界」にならざるを得ません。

しかし給与の頭打ちが他の職種に比べて低くなることはやむを得ないこととしても、それがどの程度で頭打ちになるかは、その医療機関の医療生産性によるわけです。特に歯科医院の場合は医科に比べて生産性はかなり低くなります。

 

さて今後の給与体系ですが、ある程度の金額で給与が頭打ちになるような体系にならざるを得ません。

従って、歯科医院の場合現時点での生産性の額からみて、高くとも職員1人の最高月額給与額は、せいぜい30万円前後ではないかと思います(ただし技工士は別)。

これらは平均的な給与についてであって、例えば歯周、予防歯科等の方針をとり、衛生士の挙げた点数に対して何%かの歩合給与を採用されている場合は、 これとは全く別の給与体系にすべきでしょう。

いずれにしても収入に対する給与賃金の比率も福利厚生費を含めて30%までに押さえないと経営上問題になるでしょう。

ということは職員の給与賃金だけで、収入の約26.7%程度に押さえる必要があります。先生の場合26.3%で、このままでは昇給の余地は余り無いということになります。

これ以上収入が低下していくようなら職員の削減も視野にいれなければなりません。
昇給の頭打ちも医院の生産性と職員個々の評価によって、どの程度の金額で頭打ちにするかを決めておくことが必要でしょう。

能力は基本的には下がらないという前提で評価されますから、能力給は原則として下がらない仕組みになっています。

しかし勤務態度や業績は低下することは常にあります。

そこで能力だけでなく、勤務態度(欠勤、遅刻等)とか業績も評価内容に含めて、場合によっては減給するという仕組みも必要でしょう。

給与が頭打ちになったり、減給すると勤労意欲が減退するのではないか懸念されますが、現実にも大手企業では45歳を境に給与は低下しているのが実態で、それによって勤労意欲が極端に下がることはありませんし、絶対額が生活するに十分であれば問題はないと思います。

今後一般企業でも、給与は常に右上がりに昇給していくものという考えはなくなっていくのではないかと思います。