2016年04月18日
こんにちは。
埼玉県開業の関根です。
前回はスタッフマネジメントについての私の考えと、スタッフに対する接し方についてお話をしました。
今回からは、院内の仕組みづくりに関する部分をお伝えしていきたいと思います。
まずは“医院理念”についてです。
1)医院理念は必要?
私は2013年から、これから開業する先生や、開業して間もない先生を対象に、院内の仕組みづくりについてのセミナーをさせていただいています。
そのセミナーで最初にお伝えするのが、この医院理念についてです。
開業にあたって、形にばかりとらわれると、どうしても「ユニットを何台にする」とか「CTがあったほうがいい」といった、
ハード面に頭が行きがちです。
しかしそれよりも大切なのは“何のために開業するのか”ということです。
「何のためって、歯科医療を行うために決まってるだろう!」という声が聞こえてきそうですね。
実際、セミナーのなかで皆さんにご自身の医院の理念を考えてもらうと、
“質の高い歯科医療”とか“地域医療に貢献”など、
とても立派ではあるけれど、ちょっと漠然としたものが出てくることがあります。
いくら立派でも、自分にとってピンとこない理念では、ないのと同じになってしまいます。
私は、自分自身にとっての“何のために”をはっきり自覚しているかどうかが、後々大きな違いを生むと感じています。
そこで、セミナーのなかでは、皆さんそれぞれにとってピンとくる“何のため”を見つけていただくためにいくつか質問をします。
まずお聞きするのは、
「歯科医師として、“これはやりたくない”というものは何ですか?」
です。
なぜわざわざこんな質問をするかというと、
「何をやりたいですか?」と聞かれるとすぐに出てこない方でも、
「何が嫌ですか?」と聞くと、嫌なことはすぐに思いつくようなのです。
たとえば勤務医の先生には、
「院長が言うから」、「勤務先のルールだから」
という理由で仕方なくやっているけど、
「自分が開業するなら本当はやりたくない」というものがあるかもしれません。
このように、「自分がどのように感じているか」を知ることは、本当にやりたいことを知る第一歩です。
気楽に考えてみてください。
そして次は、
「歯科医師として、何をしている時が楽しいですか?」
という質問をします。
自分が何をしているときに充実感をおぼえるか、時間を忘れて夢中になれるか、満たされた気持ちになるのかを見つけてもらいます。
「そんな個人的な気持ちが、医院理念に何の関係があるの?」と思うかもしれませんが、私は大いに関係があると思います。
開業は、多くの先生にとって人生で一度の大きなチャレンジです。
そう簡単に「うまくいきませんでした」とあきらめるわけにはいきません。
開業すれば多少の困難や苦労はつきものです。
そんなとき、「自分のやりたいことを自分で選んでやっているんだ」という気持ちと、
「みんながやっているから仕方なく自分も……」という気持ちでは、踏ん張りに差が出てくると思うのです。
じつは、その積み重ねが大きな結果の違いを生みます。
ぜひ一度、時間をとって、「自分が大切にしたいこと、優先したいこと」を反映した医院の理念を考えてみてください。
2)医院理念で自分のスタイルを
この“医院理念を考える”ことは、決してこれから開業する先生にだけ大切というわけではなく、
すでに開業されている先生が現状から一歩踏み出したいと見直す機会にもとても有効だと思います。
世の中には多くの歯科医院があります。
歯科医療を提供するという共通の部分はありますが、
どんな患者さんを対象としているのか、
医院としてどんな結果を得たいのか、
そのためにどのような設備や人員が必要なのかはそれぞれの医院で異なってきます。
“この医院は、誰に、何をするための医院なのか”
これが明確になってこそ、医院理念というものが決まります。
ちなみに関根歯科医院の医院理念は、
「関根歯科医院を訪れた人に、歯科医療を通じて“安心”を提供する」
というものです。
これは、私が自分の生まれ育った地元で開業し、日々地域の患者さんの診察をして、
その特性やニーズを感じながらやってきたなかで自然と落ち着いたものです。
私のなかでも、毎日の診療がそのために行われているということに自然な愛着と喜びを感じています。
つまり、“誰に”は、「地元を中心とした関根歯科医院を訪れた地域の患者さん」です。
“何を”は、「その患者さんにとって必要とされる、安心につながる治療や処置」です。
この理念をもとに、何かが起きた時にもスタッフと一緒により“安心”につながるのはどちらかを考えています。
多くの医院で院内の改善のために目標や計画を掲げていると思います。
しかし、それがある程度長期的なビジョンに沿ったものでなければ、
毎回目の前のことに右往左往したり、いろいろ手を出したけど残ったものはほとんどない、ということになりかねません。
その長期的ビジョンは、「医院がどうありたいのか」という理念があってのものです。
当院の場合も、医院の理念に基づき、方向性を決め、長期的な目標、短期的な目標、計画というように具体的にしていく作業を毎年行っています。
医院理念に基づいて、自分の歯科医院を自分がやりたいスタイルにしていくことが、楽しみながら長く続けるためにとても重要だと感じています。
3)スタッフに伝えよう!
医院理念は、先生自身のモチベーションを維持していくためにも有効ですが、働くスタッフにとっても大きな指針になります。
たとえば、新しいスタッフを雇用するために面接をするとしましょう。
その時に「うちはこんな医院です」「うちの医院ではこういうことを大切にしています」ときちんと伝えることができるでしょうか。
新しく入社したスタッフは、社会人としての能力や経験に違いはありますが、
「どのような方向性で努力をすれば、早くこの会社の一員になれるのか」というポイントを探しているという点では同じです。
「うちではこういうことを大切にしているから、それを踏まえて取り組んでね」と最初から伝えることができれば、
新入社員にとってもありがたいことなのです。
これは今後お話していく院内のマニュアル作成や教育を行う際にも同様です。
このように、つねに医院理念を意識し、優先順位を考える機会を設けることで、自分自身もスタッフに対して一貫した態度で接することができますし、
スタッフ同士も個人的な判断を越えた会社の優先順位を意識できるようになります。
理念ができたら、大切にしまっておくのではなく、ぜひ日常で判断基準として使ってみてください。
そうして初めて社内の全スタッフに浸透していきます。
大切なことは、理念が共有されていることです。
日常のなかで繰り返し優先順位を明確にし、判断基準を示すことで、共通の認識が生まれていきます。
それがさらに教育としてスタッフ間でも伝えられていくようになれば、いずれは医院の文化になると思います。
理念が医院の文化にまでなると、もう院長が1つひとつのことを細かく指摘する必要はありません。
きっと先生方自身も、自分以外のスタッフと一緒に働くなかで生じるさまざまなストレスから解放されるのではないでしょうか。
まずは先生方にとっての”何のために”を考えることから始めてみましょう。
埼玉県北本市開業・医療法人惠仁会関根歯科医院
関根 聡
⇒ http://www.sekine-dc.jp/