2015年10月05日
(1) 「運は食なり」――食べるものが偏っている人は運も悪い
1772年から1840年、つまり江戸時代の中期に活躍した人相・手相の研究家であった水野南北という人物がいます。
日本の人相・手相占いの元祖ともいわれている運命学者です。
彼の著書である『南北相法』は占い師の古典とされており、占いを志すものが必ず目を通さねばならないともいわれている本です。
水野南北は、人相・手相など観相の勉強をするために、まず髪結いの弟子として3年間修業し、髪結いの仕事をしながら人相の研究をしたそうです。
そして、次の3年は当時の大衆浴場、銭湯の流しの仕事を修業しました。
人間の裸の姿を観察しながら、顔とからだの結びつき、からだの特色を研究したのです。
普通ならわからない人間の骨の状態やからだの様子を調べたわけです。
このようにして、人間の運を顔やからだつき、手相を中心として研究を続け、最後にたどりついたのが、運のいい人には共通している特色がある、ということだったそうです。
死体を切り開き解剖し、運の悪い人は内臓とくに胃や腸の中の色やツヤ、残存物が悪いことを発見したのです。
このことから、彼は「運は食なり」という結論にたどりつきました。
食べるものが偏っている人は運も悪いというのです。
こうして水野南北流の運命判断法が考案され、やがてその弟子が日本各地に、3千人を超えるほどの運命学者となっていったのです。
水野南北は、人相や手相に関するさまざまな判断法を考案し、その「相法」を弟子たちに教えるとともに、占い師としての生活の戒めを書き残したり、言い伝えています。
水野南北の占いが300年近くもの長い年月の間受け継がれているのも、彼のこの占い師としての生活の戒めの効果が大きかったと思われます。
水野南北の家憲として残されているものの中に、次のようなものがあります。
「人の貴くなること、また賤(いや)しくなることは、みな飲食のつつしみにあるべし」
このように水野南北は、食事に対してかなりこまかな注意を書き残しています。
食事の量を見ると、その人の性格や運がわかるとさえいっています。
たとえば、食事量の少ない人は、一見人相が悪く見えても、よく見ると実は福相で長命型が多いそうです。
人間の欲望の中でいちばん強いものは「食べる」という欲望です。
その「食べる」欲望をどのようにコントロールするかが、本能的な欲求をどの程度コントロールできる人物であるかを物語っていることが多いと語っています。
(2) 人びとの食生活を支えている「歯科医」は、人びとの幸運も支える
日本で今や一般的に行なわれている「自然食」「玄米食」「納豆」などの健康食の元祖も、この水野南北であるという説があります。
テレビなどで紹介されている健康食の発想法のかなり多くのものが、この水野南北の研究からヒントを得たものであるともいわれています。
食べるものを変えることは、ただ単に健康にいいだけでなく、なにをやっても思うようにならない凶運を吉運に変える開運法なのです。
食べるものを変えることで、からだも心も信じられないくらい変化していくのです。
何をやっても開運できない、イマイチ調子が出ないといったときに、基本に戻って、毎日の食生活を変えてみるといった方法を試してみるのもよいでしょう。
ですから、人びとの食生活を支えているともいえる「歯科医」は、人びとの幸福を支えているともいえます。
(3) 運気のあるほうへ旅をする方違(かたたがえ)で開運を
また、水野南北だけでなく、昔の人の知恵を振り返ってみることも効果があるでしょう。
どんな分野でも、近代的な技術や新しい合理的な考え方が注目されていきますが、それでも行き詰ってしまうことはあります。
そんなときに、過去の知恵を振り返ってみることがヒントになります。
源氏物語を読んでみると、よく「方違」(かたたがえ)という言葉が出てきます。
「イヤなことが続いたので、運を変えるために吉方の方角へ旅をした」などと述べられています。
「方違」とは、平安時代に、悪い方角に旅をしたり、外出しなければならないときに行われた開運の方法なのです。
旅の前日に、自分にとっていいといわれる方角を経由してから、目的の場所へ出かけるという方法が行われていました。
昔の日本では、貴族や高貴な人たちが旅をすることによって開運するといったことを、日常頻繁に実行していたのです。
イライラしたり、不安なことが続いてムシャクシャするときには、とにかく外に出てみることで、元気を取り戻せます。
日本の昔からの占いの中に、その人にとっていい運にあたる方角に旅行したり、いい方角の湧き水を汲んできて、それを飲むといった開運の方法があります。
旅をすれば確かに気分も変わり、日常のストレスが解消されます。
いつもの生活スタイルをガラリと変えることで、気持ちも好転し、やる気を取り戻すことが可能なのです。
ビルの谷間のような都会の雑踏の中で、コンピュータを前にして単調な生活を続けている人が、緑と湖のある高原で暮らしてみると、ものの見方や考え方も変わってきます。
今までテレビの天気予報で「天気」を知っていた人が、大自然の中で雲や空の様子で天気の移り変わりを見ていると、ものの見方が変わってくるのも当然です。
心理療法や病気治療の方法のひとつに、転地療法というのがあります。
寝起きする生活環境を変えることは、心やからだの病気を快復させる最良の方法のひとつなのです。
いい方角に旅をすると運が好転するという開運法は、日本では「気学」と呼ばれている占いで、よく行われてきたものです。
生まれ年によって、プラスの方角・マイナスの方角があり、どちらの方角に旅をするかによって、運が変化するというものです。
また、どうしてもその方角に移動できない人のためには、プラスの方角の水を飲んで、運を好転させるというのもあります。
人間の悩みの原因のひとつは、生き方がマンネリになり、慣れすぎることです。
生活に新鮮さや変化がなくなってくるために、心が燃え上がらないのです。
この日常の悩みを解決する最良の方法は、変化のないマンネリ状態から脱出すること!
その脱出法のひとつが「旅」なのです。
今まで行ったことのない未知の場所への旅は、心を活性化し、マンネリ脱出への大きなエネルギーになります。
旅は、自分を変えるプラスの動機づけなのです。
日本占術協会名誉会長
浅野 八郎
⇒ http://www.asano-8.jp