2014年08月28日
(1)補綴メニューやパンフレットをいきなり見せない
私は、歯科医院向けの経営コンサルティングにおいては、
補綴のメニューやパンフレットを受付に無造作に置いておいたり、
患者さんにいきなりお見せしたりすることを控えるように指導しています。
なぜなら、患者さんはドクターやコーディネーターからいきなりパンフレットを見せられたら、値段に目がいってしまうからです。
「保険診療vs.自由診療」という本質的ではない「根源的分岐点」に目がいくのは当然のことなのです。
それでは、どのようにしていったらいいのでしょうか?
それには患者さんのニーズをより明確にしてあげること、とくに患者さんの
より高次のニーズを明確にしてあげることがもっとも重要となります。
そのための一つの手法が、ジュエリー会社で低額のアクセサリー商品から
高額のジュエリーに転換していく際に、セールスのテクニックとして
活用されている「ラダリング」というものなのです。
ラダリングとは、マーケティング戦略の中でもブランディングで活用されているフレームワークです。
それは、はしごやはしごを上っていくことを指します。
マーケティングやブランディングにおけるはしごは、
下から「ブランド名」「ブランド属性」「機能ベネフィット」
「情緒ベネフィット」「ブランド価値」の階段を上っていくはしごなのです。
そして、このフレームワークで見逃せないのが、ブランディング構築の上では、
それらすべての階層において一流であれということです。
(2)ディズニーランドに見るラダリングの例
ラダリングの説明も兼ねて、ディズニーランドを例にとって見ていきましょう。
ディズニーランドの「ブランド名」はディズニーランドです。
テーマパークといえば、すぐにディズニーランドと想起されるような認知度をもっています。
ディズニーランドの「ブランド属性」とは、テーマパークとしてのディズニーランドの特長です。
周知のように、テーマパークとして際立った特長をもっています。
ディズニーランドの「機能ベネフィット」とは、
テーマパークとしての施設や設備など、機能面の特長や価値です。
ディズニーランドが、テーマパークの中では桁外れの投資を行い、
機能ベネフィットでも、他の追随を許さないものがあります。
ディズニーランドの「情緒ベネフィット」とは、これまでのブランド特性や
機能ベネフィットを踏まえて、顧客が受ける情緒的なメリットや価値のことをいいます。
大人から子供まで、夢の国ディズニーランドで童心に返って
楽しむことができるのは、情緒ベネフィットにも優れているからです。
ディズニーランドの「ブランド価値」とは、これまでのラダリングの各階層を
受けての全体としてのブランド価値のことを指しています。
ブランド名自体の卓越した知名度、テーマパークとして他の追随を許さない
設備投資に裏づけられたブランド属性や機能ベネフィット。
そして何より人を引き寄せているのが、夢の国としての情緒ベネフィット。
これらがすべて織り合わさって、ディズニーランドのブランド価値を形成しているのです。
実はこのブランド価値というのが、これからご説明する、
人が持つもっとも高次なニーズの部分を形成しているのです。
ここからがより重要な問いかけです。
あなたには小学校2年生の男の子がいるとします。
夏休みに家族で、ディズニーランドに行くことにしました。
「あなたは、どうしてそこに決めたのでしょうか?」
実は、この問いかけに答えるものが、ラダリングのフレームワークなのです。
答えから申し上げると、お父さんが家族をディズニーランドに連れていってあげることにしたのは、
例えば「さすがパパは違うよね!」とか「パパいつもありがとう!」といってもらいたい
というのが、マーケティングにおけるもっとも高次なニーズとなります。
「子供たちから尊敬される父親になりたい」
「子供たちと一緒に楽しみたい」
「だからこそ、今月はとっても忙しいけど絶対に時間をつくってあげたい」
「だからこそ、今月のおこづかいはちょっとピンチなんだけど、
子供たちにはディズニーのお土産まで奮発してあげたい」
そして「連れていってあげる以上は、できるだけベストのところにしたい」と思うのです。
これらの高次のニーズが強く、それらに気がついたとき、お父さんは
「ブランド名」にも、「ブランド属性」にも、「機能ベネフィット」にも、
「情緒ベネフィット」にも優れたディズニーランドを選択したわけです。
(3) 自費率アップの決め手はラダリングにあり
この心理的プロセスは、とくに自費率アップのために、最重要ポイントとなります。
「患者さんが歯科医院にくるのはなぜなのか?」
「歯を治したい」というのは単なる欲求レベルです。
「気になる前歯を何とかしたい」というのは、まだ機能ベネフィットレベルです。
「老けて見られたくないから、前歯を何とかしたい」というのも、
まだ情緒ベネフィットレベルです。
「若く見えるようになって、もっと大きな自信をもちたい」
「若く見られるようになって、もっと異性にもてたい」
これらが、歯科医院における高次のニーズの事例、
そしてそれがブランド価値なのです。
これらのもっとも高次なニーズに気がつき、それを強烈に欲し、
それが歯科医療で実現できるとわかった患者さんにとって、
「保険診療vs.自由診療」という区別はもはや
「根源的分岐点」ではないはずです。
歯科医院においても、「ブランド名」「ブランド属性」「機能ベネフィット」
「情緒ベネフィット」「ブランド価値」のすべての階層を強化していくことが必要です。
その上で、「補綴にはこのような種類があります」といきなりパンフレットを
見せるのではなく、ラダリングで最上位のニーズまで明らかにしてあげながら、
その後ではしごを一緒に下がってくることが自費率アップの要諦です。
株式会社マージングポイント
代表取締役社長
経営コンサルタント
田中 道昭
⇒ http://www.dental-mp.com/