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明日の臨床に生かせる歯髄保存のHOW TO【5】どの材料を使って直接覆髄するのか?

2018年08月31日

研修医「いよいよ、テクニック編! 待っていました~」

院 長「待たせたな。治る歯髄だと診断できたら、あとは、それをいかに助けるか、技術が必要になるね」
研修医「研修医としては、技術的な不安があるので、コツ的なものを知りたいです!」
院 長「『ローマは一日にしてならず』だ。技術の上達に近道はない。毎日しっかりとトレーニングすることだな」
研修医「そんなぁ~。期待させておいてそれですか……」
院 長「しょうがないんだよ。歯科治療はどの分野にも言えるけど、技術的な要素に左右される。特に直接覆髄の成功率が非常にばらつく原因はそうだ。これを解決する1つの方法はマイクロスコープを使うことかな」
研修医「また、マイクロですか。それもちょっとハードル高いですね……」
院 長「じゃあ、できればルーペ」
研修医「わかりました。まずはルーペからトライしてみます。でも、それしか方法がないんですか?」
院 長「そうだな、興味深い研究結果がある。そう、以前、質問があったが、MTAを使えば直接覆髄の成功率は上がると思う?」
研修医「そう思っていたのですが、話の流れからすると、もしかして成功率は上がらないとか……」
院 長「だんだん私の話のパターンが読めるようになってきたな。そうなんだよ。MTAと水酸化カルシウム、どちらを直接覆髄に使えば歯髄が治癒するかを調べたランダム化比較試験(RCT)がいくつかあるんだが、その多くは差がない結果になっているんだ。次の図を見てくれ」

研修医「ええ~! 話の流れから予想できたとはいえ意外ですし、MTAを使えば何とかなるんじゃないかって思ってました……。でも、MTAのほうが水酸化カルシウムより優れているという話をよく聞きますが……」
院 長「そのとおり。MTAは材料として優れた特徴をたくさんもっている。でも、それが必ずしも水酸化カルシウムより歯髄保存の確率を高めるとは限らない。一般的には、RCTという研究デザインは、正しい結果を示している可能性が高いんだよ」
研修医「そうなんですね。研究デザインによって、結果の信頼度が変わるということですか」
院 長「ちなみに私の経験的にも、直接覆髄剤の違いで予後が変わるとはあまり感じないんだよ」
研修医「なんだかガッカリです……」
院 長「そう落ち込むなって。研究結果を見ていると興味深いのが、MTAの成功率は一貫して高いけれども、水酸化カルシウムの成功率はバラツキがあるんだ。KundzinaらのRCTの水酸化カルシウム群の成功率は51%になってるけど、私の臨床ではありえない数値だよね」
研修医「ふーん、院長は自分が上手だって自慢したいんですか?」
院 長「いやいや。そうじゃなくて、同じ研究のMTA群の成功率は高いから、MTAのほうが技術的要素に左右されにくいのかもしれないと思うんだ。Hiltonらの報告でも、ある術者の水酸化カルシウム群の成功率が非常に低くて、全失敗の31%を占めていたという記載もある」
研修医「なるほど。ということは、研修医的にはMTAを使ったほうが無難ということでしょうか」
院 長「あくまで私の想像だけど、水酸化カルシウムを使った直接覆髄がうまくいかないと感じる場合は、MTAを使ってみるのもありかもしれないね」
研修医「わかりました!明日から、MTAで直接覆髄します!」
院 長「でも、MTAにも欠点がある」
研修医「え!? MTA、ダメな場合があるんですか?」
院 長「いま、発売されているMTAの多くは歯を黒く変色させるんだ。つまり、審美領域にMTAを使う場合は、変色を起こさないMTAを選択しなければならない」
研修医「わかりました。今回は、明日から使えそうな内容で、勉強になりました」
院 長「今回はって……。でも安心するのはまだ早いぞ。うまく直接覆髄ができても、歯髄壊死が生じる可能性は、まだまだあるんだ」
研修医「もしかして……その内容は次回ですか?」
院 長「よくわかっているな。次回は最終回だし、楽しみに待っててくれ」

今回のポイント
「MTAと水酸化カルシウムでは、直接覆髄の成功率に差がない可能性がある」
「ただし、MTAはテクニカルエラーを減らしてくれる可能性がある」
「筆者の経験では、技術的な要素がもっとも大きく、マイクロスコープを用い、治療ができれば、材料による差はないと感じる」

参考文献
1. Qudeimat MA,Barrieshi-Nusair KM,Owais AI.Calcium hydroxide vs mineral trioxide aggregates for partial pulpotomy of permanent molars with deep caries. Eur Arch Paediatr Dent 2007;8(2):99-104.
2. Hilton TJ,Ferracane JL,Mancl L.Comparison of CaOH with MTA for direct pulp capping: a PBRN randomized clinical trial.J Dent Res 2013;92(7 Suppl):16S-22S.
3. Chailertvanitkul P,Paphangkorakit J,Sooksantisakoonchai N,Pumas N, Pairojamornyoot W,Leela-Apiradee N,Abbott PV.Randomized control trial comparing calcium hydroxide and mineral trioxide aggregate for partial pulpotomies in cariously exposed pulps of permanent molars.Int Endod J 2014;47(9):835-842.
4. Brizuela C,Orme?o A,Cabrera C,Cabezas R,Silva CI,Ram?rez V,Mercade M.Direct Pulp Capping with Calcium Hydroxide, Mineral Trioxide Aggregate, and Biodentine in Permanent Young Teeth with Caries: A Randomized Clinical Trial. J Endod 2017 ;43(11):1776-1780.
5. Kundzina R,Stangvaltaite L,Eriksen HM,Kerosuo E.Capping carious exposures in adults: a randomized controlled trial investigating mineral trioxide aggregate versus calcium hydroxide.Int Endod J 2017 ;50(10):924-932.

西本歯科医院
泉 英之