2012年06月22日
この連載では、今後歯科医院が伸びていくために欠かせない「説明力向上」についてお伝えしております。
今回はもっとも重要な説得力をアップするコツをご紹介します。
説得力をあげるためには、これまでお伝えした説明前の準備・説明の順番・説明のコツに加え、【事実】と【推察・意見】を分けて伝えるように心がけることがポイントです。
【事実】と【推察・意見】が入りまじった説明は、混乱を招きやすくなり、伝えたいことがストレートに伝わらなくなってしまうからです。
まず、わかりにくい説明の例をあげてみます。
「Aさん、むし歯ができているんじゃないかなと思っていたのですが、しばらく放置していたのでむし歯が増えています。歯磨きはもちろんしていたとは思いますけど、むし歯が1年で3本できていますよ」
この例の場合、【推察】→【事実】→【推察】→【事実】というように、推察と事実が入りまじっています。
次に事実と推察を分け、事実を先に述べる例をあげてみましょう。
「Aさん、むし歯が増えています。(具体的に申し上げると)1年で3本むし歯になっています。ここからは私の推察ですが、非常にお忙しかったのではありませんか?」
この例の場合は、【事実】→【事実】→【推察】となっています。
事実と推察、事実と意見をはっきり分けると、患者さんの頭に説明がすんなり入っていきやすくなります。
さらに、内容により
「一般的には~と考えられています」
「当院では~と考えています」
「これは私の個人的な意見ですが~」
などと加えると、誠実な態度も伝わり、説得力が増します。
震災後、情報の根拠や情報源の提示を求める人たちがあらゆる場面で増えてきました。
さまざまな情報が氾濫している昨今、その情報の信憑性を個人が判断しなければならなくなったからでしょう。
歯科の関係でも、ステルスマーケティング(消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること)が行われているとの報道もあり、患者さんのチェックは厳しくなっています。
説得力のある説明をするためには、その根拠や情報源を具体的に示すことが、今まで以上に重要になってきています。
たとえば、患者さんに対して
「歯周病の人って多いんですよ」と伝えるのと、
「厚生労働省のHPによると、50歳の時点で、進行した歯周病の人が4分の1以上だそうです」(平成23年度【「健康日本21」最終評価】)と
伝えるのでは、伝わり方が違います。
さらに、図やグラフで示すことができれば、より説得力は増します。
患者さんに説明するときには、主観的評価は避け、根拠のある話、情報源がはっきりしている話をするように、院内でスタッフを含めて確認しておきましょう。
根拠を示せる話をする習慣が自信につながり、それは態度にも自然に表れ、説得力が増していきます。
NHK学園専任講師
山岸 弘子