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歯科医院経営でやってはいけない10か条 /【第3条】「時間」という資産をムダづかいしない!【第4条】人間に対する興味も研究心も持たない

2012年05月24日

【第3条】 「時間」という資産をムダづかいしない!

残念ながら、世の中は平等ではありません。
歯科医院経営でも、開業資金を親が協力してくれる人もいれば、自分ですべて段取りをしなければいけない人もいます。
当然、両者では開業後の負担は違います。
また、同じような実力を持っていても、立地や地域性などによって収益は変わってきます。
他にも、生まれ持った才能や能力、それに家庭環境やめぐり合う人など、世の中は不平等なことばかりです。
しかし、どんな人にも平等なものがあります。

そのひとつが「時間」です。
当たり前の話ですが、どんな人も1日の時間は24時間。
この持ち時間は、どんな人も変わりませんし、変えることもできません。
そして、時間は何にも換えることができない「資産」でもあります。
この大切な資産を何に投資するのかを決める権利も、すべての人に与えられている数少ない平等のひとつです。
そして、何につぎ込むのかによって、人生も経営もまったく違うものになるのです。
こんなに重要な時間なのに、ほとんどの人は、その価値を意識することなく生きています。
自分でなくてもできること、自分でなくてもいいことに、重要な時間をムダにつぎ込み、作業したことで、仕事をしたと自己満足しながら日々を過ごしているのです。

経営者は、スタッフと時給が違います。
同じ作業でも、経営者がするのとスタッフがするのでは、コストが違うのです。
何でも自分でしないと気がすまないという方がいます。
そういった人は、貴重な時間の投資先を間違えることで、ムダなコストを垂れ流しているのです。
大切な時間を、自分しかできないことに集中させましょう。
何でも自分が率先して行えば、スタッフがその後姿を見て頑張るようになる・・・と考えているのなら、それは間違いです。
院長がやっていると「自分はやらなくていい」と考えるだけです。
これではスタッフは成長しないので、結局、その人もダメにするし、組織もダメにしてしまいます。
もちろん、自分がやったほうが綺麗に早くできるということもあるでしょう。
しかし、そういったものでも、勇気を持って任せることは、スタッフの成長につながるのです。

スタッフの機嫌や外注の費用など、目先のことにとらわれるのではなく、中長期的に医院のことを考え、任せるべきことは任せ、できた時間を経営者にしかできない仕事に投資する。それが平等に与えられた資源を最大限に活かす、賢い経営のあり方なのです。

【第4条】 人間に対する興味も研究心も持たない

最近、さまざまなところで話題に上っているFace book。
利用者数も増え、個人だけでなく、企業や商店などで活用するところも増えています。
歯科医師が集まり、情報交換をしているサイトもたくさん出てきているようです。
お誘いを受け、そういったサイトを見にいくと、必ずといっていいほど残念な思いをします。

なぜなら、交換されている情報が、治療や医療機器に関することばかりだからです。
歯科医師なのですから、治療やそれを支える医療機器に関心を持つのは当然のこと。

しかし、高い医療技術という「商品」があったとしても、「顧客」が不在であれば、経営は成り立たないからです。
ピーター・ドラッカーは、企業にとっての顧客は、内部と外部にいるといっています。
そして、この両方の顧客のニーズを知って満たすか、まだ本人も気づいていないニーズを知り、それを満たすのが経営だと。
これは歯科医院も同じです。
歯科医院にとっての顧客とは「患者さん」と「スタッフ」であり、この両者のニーズを満たしていくのが歯科医院経営なのです。
そのためには、人間に興味を持つということが重要になります。

たとえば「患者様は何を求めて治療を受けられているのだろうか・・・」ということを考えているでしょうか?痛みを改善したり、快適になるため。
もちろん、それは間違いではないでしょう。
でも、100点満点でいえば、30点の答えですね。

だって患者さんにとって、治療は手段であって目的ではないのですから。
このことが本当にわかれば、医療の提案や患者さんへの対応が変り、自費率やリコール患者数を増やすことができます。
そして、スタッフは何を求めて仕事をしているのでしょうか?
お金や福利厚生だけを求めて仕事をしているわけではないのです。
この答えがわかれば、スタッフへの対応や教育が変り、目的を達成することに高いモチベーションをもった強い組織ができます。
医療とはヒューマンビジネスです。
形ある商品を販売しているわけではなく、人から人へ、形のない医療というものを媒体にして、価値を提供する仕事です。
だからこそ、歯科医院経営者は、もっと人間に関心を持ち、研究していく姿勢が必要なのです。

医療法人社団いのうえ歯科医院
理事長歯学博士・経営学博士
井上 裕之
⇒ http://www.inoue-dental.jp/