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【第５条】　情報のコレクターになるな！

近年、歯科医院で収益を伸ばすための情報が増えています。
毎月、さまざまなところで収益アップのための勉強会やセミナーが開かれています。
また、昔は何かの情報を得ようと思えば、本を購入したり、図書館に行くか、人から話を聞くかしかありませんでしたが、インターネットの発達により、誰もが簡単に情報を手にすることができるようになっています。

こうして、さまざまな情報が出回り、それを簡単に手に入れることができるようになることで、情報に振り回される歯科医院経営者が増えているように感じます。

たとえば、どこどこの医院がこんな治療で収益を伸ばしている……といった情報を入手すると、すぐに自分のところでも導入しようとする先生がいるのです。

他にも
「これからは予防歯科だ……」
「訪問診療だ……」
「アンチエイジングだ……」
「サプリメントだ……」
というような情報を耳にされたこともあると思います。

すぐに行動を起こそうとすることはいいことです。
いつまでもグズグズと先延ばしにしている人より行動を起こすほうが、結果が出る可能性は断然高いのですから。

しかし、何でも安易に行動を起こせばいいというわけではありません。

実際、先月までサプリメントのポスターを院内に貼っていたのに、今月は新しい自費治療のポスターを貼り出しているという歯科医院があります。
サプリメントが売れなかったか、新しい治療を導入して収益を伸ばしている医院の話を聞いたので、方向転換をしたのでしょう。
行動を起こすことはいいことですが、コロコロと方向性を変えていては、患者さんの信用を失うだけです。

売れている医院は、その治療を行っているから売れているわけではなく、きちんと戦略を持っているから売れているのです。
方法論（戦術）は目に見えますが、計画（戦略）は目に見えません。
ですから、多くの人は方法論だけを真似てしまうのです。
でも、同じ方法を実行しても、戦略がなければ結果を出すことはできません。

売れている医院が、どんな方法を行っているのかという情報を知ることは素晴らしいこと。
しかし、情報は集めることに価値があるのではなく、集めた情報から、その背後にある戦略を推し量ることで、始めて価値あるものになるのです。

情報を知っているだけのコレクターになってはいけないということです。

【第６条】　自分がコントロールできないものにフォーカスするな

経営を取り巻く環境は刻々と変化していきます。
人口の減少、歯科医院数の増加、景気の低迷、ライフスタイルの変化など、経営を取り巻く環境に医院の収益は影響を受けます。
「昔はよかった……」というような環境変化に対する愚痴は、先生も耳にしたことがあると思います。

こういった経営を取り巻く環境のことを「外部環境要因」といいます。

とくに、事業に大きな影響を与える要素として
「Politics（政治面）」
「Economy（経済面）」
「Society（社会・ライフスタイル面）」
「Technology（技術面）」
の4つがあり、これらの頭文字を合わせ「PEST」と呼ばれています。

2006年に医療制度改革関連法案が成立したことで、歯科の診療平均単価は15％減少しましたが、これなどは外部環境要因の「Politics（政治面）」が変化したことで、経営が大きな影響を受けたわかりやすい例です。
こういった外部環境要因は、経営者がどんなに頑張ってもコントロールすることはできないものばかりです。

話は飛びますが、地球誕生後、大きな環境の変化が何度かありました。
生物には、変化した環境を元に戻す力はありません。
しかし、新しい環境に自分を順応させることはできます。
こうして環境に対応した生物は生き残って発展し、対応できなかった生物は滅び去ってきたのが地球の生物史だといえます。

経営も同じようなもの。
外部環境要因はコントロールすることはできませんが、内部環境要因はコントロールすることができます。
そして、刻々と変化していく外部環境要因に、内部環境要因をコントロールして対応していくことこそが経営なのです。

コントロールできないものにいくらフォーカスしても現状は変わりません。
それより自分で変化させることができる内部環境要因に集中する、そうすることで始めて出口は見えてくるものなのです。

普段、自分が何にフォーカスしているのかを振り返ってみましょう。
自分がコントロールできるものにフォーカスしているのか、自分がコントロールできないものにフォーカスしているのか。
それによって経営はまったく違ったものになってくるのです。

医療法人社団いのうえ歯科医院
理事長歯学博士・経営学博士
井上　裕之
http://www.inoue-dental.jp/