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【5】スタッフのやる気と健康増進的働き方

2016年09月05日

こんにちは。

前回までは、主として、生活者や患者さんの行動変容を成功裏に導く、健康増進型歯科医院(以下、健康増進型DC)の取り組みについてお話ししました。

今回は、健康増進型DCの原動力であるスタッフ自身の取り組みについてお話しします。

1)スタッフのやる気

これは、健康増進型DCの重要性を理解させることに尽きます。

当院では、ミーティングなどの時間に、訪問診療で見聞きした事例などを紹介し、健康やヘルスコーチングへの関心を高めています。

われわれ歯科医院のミッションは、歯科医師法で歯科医療とヘルスコーチング(保健指導)と謳われています。

しかし、業務のほとんどを歯科医療に費やしている、というのが実情です。

ですから、平素から、ヘルスコーチングや健康増進の重要性を説くことが何より大切です。

2)スタッフのやる気へのサポート

スタッフのやる気は2通りあります。

1つは研鑽に対するやる気、もう1つはクライアントに伝えるためのやる気です。

研鑽に対するやる気をサポートするため、勤務時間内にスタッフが学習する時間を設けています。

毎日2人、それぞれ1~2時間程度、比較的空いている時間を見計らって、学習してもらいます。

内容としては、保健指導内容、健康ブログ更新、ヘルスコーチングなどです。

学習した内容は月1回のPOPS研究会で発表してもらったり、ブログを更新して、みんなでシェアします。

クライアントに伝えるためのサポートとしては、当院が健康志向の医院であると思える雰囲気づくりと、
ヘルスコーチングの導入がしやすくなる環境づくりですが、とりわけ、ヘルスコーチとしての気構えをはぐくむことが重要です。

気構えの構築でもっとも大切なことは、承認欲求の払拭です。

前回、クライアントの褒められたい欲求(承認欲求)の必要性についてお話ししましたが、
だからといって、ヘルスコーチが承認欲求に執着することは避けるべきです。

ひたすら、誠意をもって、クライアントと向き合います。

たとえば、家事をやる私を誰も褒めてくれないとき、
「周囲の人たちがくつろいでいるのに、どうして自分だけが皿洗いをしているのか」と思うとつらくなります。

だから、「家族のために役立っている」という貢献感をもって、家事をこなします。

ヘルスコーチの心構えとしても、承認欲求を捨て、貢献感を感じ、クライアントと向き合うのです。

3)健康増進的働き方

スタッフは医院の宝です。

その宝に、何をもって報えばいいのでしょう? 

高給ですか。

休日ですか。

はたまたレクリエーションでしょうか。

これらは違わずそれなりの回答でしょうが、健康増進型DCでは、それに加えて“健康増進的働き方”をめざします。

従来の働き方では、働くほど疲労がたまります。
(図1)
スライド1

当院の追及する職場は、“働くほど元気になる職場”です。

働けば働くほど健康度が上がるので、平日働くことで、健康度が蓄えられ、週末の遊び疲れが、平日の仕事の中で回復されます。
(図2)
スライド2

では、どのようにすれば健康増進型働き方に導けるのでしょうか? 

苦と楽が逆転するほどの命題に見えなくもありませんが、方法はいたって簡単。

クライアントに普段伝えていることをスタッフ自らが実践するだけのことです。

そう、前回紹介した「ワカサコソホシ」が、その回答です。

加えて、歯科医院という職場で、考慮するべきことがあと3つあります。

[1]共感脳

職場において人間関係は重要です。

しかしながら、キャリア、経験年数、性格の差異から、あらゆる場面で衝突するリスクをはらんでいます。

解消法として、自分の心をコントロールすることが難しくなった時は、ひと呼吸おいて、「相手の立場に立つ」ようにスタッフには伝えています。

この共感脳は、前回お話したテキパキの仕事脳とともに、人類特有の脳である前頭葉の領域にあります。

この2つが高揚することで疲労が感じにくくなります。

とりわけ複数のスタッフのなかで、疲労感なくスムーズに仕事をこなすには共感脳を高めることが不可欠です。

[2]サーカディアンリズム

動物は体内時計をもち、それによって、24時間周期で睡眠や摂食のパターンが定まります。

このリズムをサーカディアンリズムと呼びますが、これが崩れる危険性が職場にあります。

それが、ほかでもない残業です。

勤務による拘束時間は、通勤時間をも含めると、1日の大半です。

その勤務時間が残業などによりずれこむと、まわりまわって、就寝時間に影響を及ぼし、体内時間を狂わせ、心身の健康度を低下させます。

当院ではパートさんを終業時間付近に余裕をもって配置し、定時に退社できるようにしています。

[3]断捨離

断捨離がなぜ健康増進なのでしょうか。

このことによって、ムダ(スペース、間違い)がなくなり、効率が上がります。

視覚に不要なものが目に入らなくなります。

また動線に障害物が入らず、動きやすくなります。
(動線は90センチ幅が一番快適と言われています)

たとえば、人ごみの繁華街は通り抜けるだけで疲れますが、何ら障害物のない遊歩道は、同じ距離を歩いても、疲れるどころか気持ちがいいものです。

断捨離を意識しないと知らず知らずに荷物が増え、ついには交通整理がきかなくなります。

よって、不要と思えるものから「捨てる」を意識します。

健康増進型働き方はスタッフ教育にもつながります。

こうした働き方は、スタッフ教育のための方法としては、目新しいというほどのものではありませんが、
「健康増進のため」という目的が明確である場合、無限の広がりが期待できます。

何のためにテキパキ仕事をするのか。

仕事効率をあげて売り上げを向上するためというのは経営者の都合でありますが、あくまでも「健康」をスタッフに意識させます。

テキパキの仕事脳を高めると、仕事の効率が上がりますし、音もしませんし、心が穏やかでいられます。

ダラダラやバタバタは疲労感を増すことを知ります。

つまり、テキパキの仕事脳は「会社のため」と同時に「自分のため」を意識させます。

では、健康増進型働き方をクリニック全体で常日頃意識するにはどのようにしたらいいのでしょうか。

院長である私が神経をとがらせ、
「○○さん、姿勢!」、「患者さんの前では笑顔」
と声高に訴えれば、スタッフから疎ましがられること請け合いです。

真面目なスタッフは、第4回でお話したフィンランド症候群に陥り、健康度は逆に落ちます。

健康増進的働き方もヘルスコーチングと同様、自ら感じて動くことが大事です。

週に一度、風紀の週報を用いて、その用紙にその週に実際に行ったことを1~2行、簡単に寄せ書きをして、
みんなでそれぞれの行動変容をシェアしています。
(図3)
スライド1

みんなでシェアすることで健康増進型への所属意識も芽生え、行動変容の強化にもつながります。

このように、健康増進型DCでは、患者さんのための健康増進に対するスタッフのやる気を高めると同時に、スタッフの健康増進型働き方もサポートします。

結果、患者さんや生活者も健康増進型DCに通えば通うほど元気になり、スタッフも働けば働くほど元気になります。

健康増進型DCを継続性のあるものにするには、健全な経営基盤が不可欠です。

最終回では、当院で取り組んだ健康増進型のアクションが経営にどのように反映されているか。

また、健康増進型DCでの院長の心構えについて、お話ししたいと思います。

お楽しみに!

大阪府大阪市開業・ツインデンタルクリニック
呉 沢哲
http://www.twin-dc.com/