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もしも、スタッフが院長の立場に立ったなら・・・~スタッフの視点で、歯科医院のマネジメントを考える~【1】スタッフ視点で院内の問題を絞り込む

2014年01月17日

みなさま、はじめまして。三浦綾子です。

これから、スタッフの視点に立った歯科医院のマネジメントについて、みなさんとご一緒に考えていくことにします。

ここ数年、開業時に内覧会を開催するクリニックが多くなりました。

先日、知人が「はじめて歯科医院の内覧会に行ってきた」といい、内覧会でどんなことをしていたとか、お土産をもらったとか、詳しく話していました。

私の仕事柄、知人にその内覧会の率直な感想を聞いたところ、

「新しくてきれい、ショールームのようね」

「院長先生やスタッフの方と触れ合うことで、親近感が持てて良かったわ」

と、なかなか良い評価でした。

しかし一方で、「医院でもらったパンフレットや外の看板には“一般歯科・口腔外科・審美歯科・予防歯科・インプラント・ホワイトニング・矯正歯科・小児歯科”と書いてあり、たしか矯正の日は、専門医の先生がくるといっていたけれど、矯正以外は、全部院長先生が担当するのかしら?何でもできちゃう先生なのね(笑)」

といい、話しの締めくくりには「でも、総花的で、これっ!というインパクトをあまり感じなかったわ・・・」といっていました。

たしかに、知人のいうような「総花的な」表現の歯科医院の看板やホームページをよく見かけます。

「総花的」というと、辞書では「関係者すべてに利益・恩恵を与えるやり方。多く、否定的な意をこめて用いられる」とあり、「すべて同じ重さで、もれることなく盛り込まれている状態」「めりはりがない」「焦点がはっきりしない」ことをいいます。

それでは、なぜ「総花的」ではいけないのでしょうか?

一見、すべての診療科目が網羅されており、完成度の高い歯科医院に見えるかもしれません。

院長先生の「診療科目は書いておきたい」「書いておかないと心配・・・」という気持ちが、もしあれば、それは理解できます。
しかし、「他の歯科医院と、どこが、どう違うのだろう?」という疑問は、やはりぬぐいきれません。

大病院なら別なのかもしれませんが、“どんぐりの背比べ”のように「一般歯科・口腔外科・審美歯科・予防歯科・インプラント・ホワイトニング・矯正歯科・小児歯科」と、並べられていると、かえってメリハリがない、特色がない、どこも同じ歯科医院のように見えてしまうのです。

であれば、「うちの医院は“これっ!”」と言い切ることができるように、思い切って絞り込むことが必要です。

たとえば、こんなケースは皆さんもよく出くわしているはずです。

「蕎麦屋」と書いてあって、外観の見た目は、何となく品の良さそうな内装のお店なのに、そこのメニューに、「そば」「うどん」「定食」「カレーライス」「ラーメン」と書いてあったら、「ここは、本当に蕎麦屋?」「お店の外観のイメージと随分ギャップがある」と、注文をせずにその場から帰りたくなってしまうでしょう。

それよりも、頑固なくらいに、「うちでは、蕎麦は“もり”か“ざる”しか出さない!」というほうが、職人気質たっぷりで、美味しい蕎麦を味わえるような気がしますし、日本独特の伝統を感じられる蕎麦屋さんのように思います。

ただ、院長に迷いがあれば、絞り込むことへの不安や抵抗があるかもしれません。

大切なことは、医院の方向性を指し示すために、明確な根拠をもって絞り込むことです。
そのためには、医院の“強み”・“弱み”、患者さんのニーズを徹底的に洗い出すことが重要です。

そこで、「あなたの医院の“強み”・“弱み”は何ですか?」と自問自答してください。

院内ミーティングで、院長先生とスタッフとで、じっくり時間をかけて話し合うことが、「急がば回れ」で、最善の方法といえます。

ある医院のコンサルティングの中で、“強み”・“弱み”について話し合ったところ、まずは各自の強み・弱みを整理するために、自分にできること・できないこと、うまくできたこと・できなかったこと、成果があがったこと・あがらなかったことをいろいろな観点で洗い出してみました。

たくさんの意見が上げられ、最終的にまとめると、

「私たちの医院の強みは、審美やホワイトニングに力を入れていること。弱みは、もっと予防に力を入れたいが、歯科衛生士の採用ができずに人材不足であること」

このように、しっかりと把握したところで、

「“強み”・“弱み”」→「スタッフのコアなスキルを再確認」→「今、何をすべきか?」ということが明確に絞り込まれました。

院長の視点では、なかなか見えてこないことも、スタッフの視点に立つと見えてくることもあります。
逆に、スタッフの視点では見えないことも、院長の視点に立てれば見えてくることもたくさんあります。

私の師匠としている大手企業の経営者の方は「戦略とは絞り込むことだ」ともいっています。
インパクト、重要性を見極めながら、メリハリをもってスタッフとともに取り組むことが、成功の秘訣だと思います。

株式会社ディネット取締役
品質マネジメントシステム審査員
 三浦 綾子
 ⇒ http://www.dnet-inc.com