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もしも、スタッフが院長の立場に立ったなら・・・~スタッフの視点で、歯科医院のマネジメントを考える~【2】チームワークのアップが医院力をアップさせる

2014年01月31日

歯科医院のコンサルティングの中でも、ISO審査の現場においても、スタッフの方と話している中で、「何とかしたいと思っているのですが・・・」という言葉がよく出てきます。

その言葉の背景はさまざまですが、「現状を改善したい」「自分ができること、何か役に立つことはないか」という問題解決意識は、根っこのところで共通しているように感じます。

そこで、私から「では、〇〇さんが、経営者(院長・社長)であればどう考えますか?」という

経営者視点に立った発想で物事をとらえることをお話します。

経営者の視点に立つことで、立ち位置が変わり、今まで見えなかったものが、見えたり、気づいたりするもので、意外と自由に、しかも本質的な意見が出やすい状況にもなるようです。

「うちの医院、まとまりがなくて・・・」

「他の医院では、どうやってチーム力をつけているのですか?」

中には、名指しで「〇〇歯科医院のような医院をつくりたい」と明確な相談を、院長からもスタッフからも受けることがよくあります。

(1) I(自分)からWe(自分たち)への意識の転換がチームワークの基礎

正月恒例の「箱根駅伝」に胸が熱くなり、ドラマを感じられた方も多いのではないでしょうか。
そのドラマに、理想形に近い「チームワーク」を学ぶことができます。

出場するランナーや監督のみならず、出場できなかったランナーたちが裏方となり、選手の食事の管理、体調管理、荷物の管理、選手の移動や時間などのスケジュール管理などいろいろな仕事があり、どれも重要であり、チームを全力でサポートしている姿には、「チーム一丸となって頑張ろう!」という意気込みが伝わり、本当に心を打たれました。

「繰上げスタート」「シード権」というルールに、「襷をつなぐ」という言葉が生まれた原点を感じるほどでもあります。
多くの場面から、主語は「I(自分)」ではなく「We(自分たち)」で、「チームワークの大切さ」というメッセージが伝わってきます。

歯科医院でも「チーム」を考えるときに、箱根駅伝の話しと同じく、主語は「I(自分)」ではなく「We(自分たち)」と意識することがキーポイントになります。

日常発生している問題や課題について、

「目の前の課題を自分ひとりで解決するのではなく、他のスタッフたちと皆で考えて、取り組む」

「自分たちはどう考え、どう行動し、全員でどのような結果を出すべきなのか」

という観点で考えられることが重要なのです。

そのような考え方ができれば、そこから「私は知らない~」とか、「それは〇〇さんの仕事だから~」とか、「自分は頑張っているけど、院長はわかっていない~」という発言は生まれにくくなります。

主語は「I(自分)」ではなく「We(自分たち)」という考え方のできる人が増えれば、徐々に、医院に一体感も芽生えてきて、「チームワークがある医院」と第三者からも感じられることでしょう。

「立ち位置を変えてみる」「We(自分たち)」で考えることができれば、自然と「院長ならこう考える」とか「院長が期待していること」という経営者視点で、物事を考える習慣がつくようになります。

だだ、ここで、注意をしたいことは、「We」ということで、「他のスタッフに頼ってばかり」「当事者意識がなく、何も考えない~」という依頼心・依存型の思考にならないように、「自分自身で考え、行動することができる」という日々の努力は必要です。

ここでいう「We」の原点は「自分の役割を認識し、かつ、医院全体のことを常に視野に入れて、考え行動できること」であり、「歯科医院の仕事は“歯科医師>歯科衛生士>受付”ではなく、全員の協力が必要不可欠であること」「“院長VSスタッフ”という対立した関係ではなく、“院長&スタッフ”あるということ」を表面的でなく、心底から理解することです。

(2)こうしてチームワークをアップさせた

以前、ある歯科医院でこんな取り組みをしたことがあります。

その医院は、レセプトの提出前になると、受付スタッフがイライラすることが続いていました。

「院長、レセプト提出しますから、確認してください」

院長は「わかったよ」といいながらも、いっこうにやる気配がありません。
これが2、3日続き、

「院長、今日が提出期限なので、出してもいいですか?」

「ちょっと、待ってよ」となり、数枚の修正が入り、受付スタッフが鬼の形相に変わり、結局、提出期限ギリギリとなるのが恒例となっていました。

「もし、スタッフが院長だったら、絶対に提出期日の前日までに終わらせる」ということで、院長改造を試みました。

院長の性格から「事務的なことが苦手」「何事にも面倒くさがる」「他のことでも、期限が遅れることがしばしばある」「段取ることはなく、お尻に火が付かないと行動しない」というわけで、催促しても、うるさがられてしまうのは、日頃から実証されているようなものです。

そこで、ある歯科衛生士の「強制的に、レセプト点検の時間を確保するようにしたら・・・」「効率を下げなければ、問題ないでしょう」という提案から、他のスタッフが加わって、アポイントの取り方などに工夫をこらしました。

時間帯は、集中力の持続する午前中の2、3時間を確保するスケジュールを立て、効率を下げないような診療内容でのアポイント調整をしたのです。

その結果「治療が忙しくて、できない!」という院長の“できない理由”はなくなりました。院長による“レセプト点検の時間”はルーティン化され、受付スタッフのストレスは解消されたようです。

これは、すぐにできそうな工夫のようにも見えますが、自分の得意なこと・苦手なこと、院長の得意なこと・苦手なことを正しく理解し、チーム全体でどのように補完するかをイメージすることができたから工夫できたのです。

受付スタッフが「レセプトは私の仕事だから、仕方ないこと」と一人で仕事を抱え込んでいたり、受付以外のスタッフが「それは、受付の仕事だから、仕方ないでしょう」という“所詮他人ごと”としていたら、「なんで、わざわざアポイント調整までするの?」とか「面倒くさい」という不満が出てきてしまうものです。そして、院長自身が、一切聞く耳をもたない頑な姿勢であれば、改善には至らなかったでしょう。

歯科医院のチーム力は、一朝一夕ではできません。
こうした日常の積み重ねがあるからこそ、大きな結果に結びつくものと思います。

 株式会社ディネット取締役
 品質マネジメントシステム審査員
  三浦 綾子 
 ⇒ http://www.dnet-inc.com