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歯科医院経営でやってはいけない10か条 /【第7条】スキルとモチベーションはイコールと考えるな【第8条】飲みニケーションでは組織力アップにならない

2012年06月22日

 

【第7条】 スキルとモチベーションはイコールと考えるな

治療技術に関すること、自費率などの増患に関すること、そしてスタッフに関すること――これが歯科医院経営者の方からよく受ける相談です。

とくに当院に見学にこられた方に質問されるのが、モチベーションの高さについてです。

スタッフがとてもいい顔で笑っている、非常にてきぱきと働いている、ムダな動きがないなど、お褒めの言葉をいただくことも少なくありません。
確かに当院のスタッフは、業務に対して積極的で、チームワークを大切にする人間が多いと思います。
しかし、こういったモチベーションの高いスタッフは、自然にできたわけではありません。

多くの歯科医院は、スタッフのスキルアップに努力しています。
歯科治療に関することから、接遇やカウンセリング手法に関することまで、積極的に研修やセミナーに参加させている歯科医院も増えました。
しかし、スキルが高くなるというのと、モチベーションが高くなるというのはまったくの別物。
スキルが高いスタッフが、積極的に業務に取り組むわけではありません。。

歯科医院はヒューマンビジネス。
つまり、そこに所属する1人ひとりの人間力によって収益が作り出されるビジネスモデルです。
ですから、収益が上がる強い経営をするには、業務はもちろん、それを通して人間的に成長することに対して、高いモチベーションを持った組織にする必要があります。

それなのに、スキルアップには熱心だけど、スタッフのモチベーションを高めることには取り組めていない歯科医院が多いようです。
これでは、いくら治療技術を高めたり、自費率などの増患に取り組んでも、強い経営ができるようにはなりません。

心のどこかに、「給料を支払っているのだから一生懸命働いて当たり前」という感覚を持っていないでしょうか?

確かにそれは正論です。
しかし、それだけで仕事や仕事を通して自己成長することに高いモチベーションを持つことができる人間は、精神的に自立できているほんの一握りの人間だけ。
ほとんどのスタッフは、そんなに強い人間ではないのです。
強い経営をしたいのなら、それが実現できる強い組織を持つこと。
そのためにはスタッフのモチベーションを高めることに真摯に向かい合い、取り組むこと。
それを忘れてはいけないのです。

【第8条】 飲みニケーションでは組織力アップにならない

全体目標を達成することに対して、高いモチベーションを持ったチーム。
それが強い組織だと私は考えています。

理念を持つことと、組織フレームを作ることの重要性は、以前にお話させていただきましたが、これが組織の原型となります。
どんなに組織論を学んでも、組織自体が存在しなければ強化することはできません。
強い組織を作るために、まずは医院をしっかりと組織化するところからとりかかるべきです。

その上で、私が重要だと考えているのは「コミュニケーション」です。
最近は、収益を伸ばすためにマーケティングに興味をもたれている歯科医院経営者も増えていますが、実はマーケティングには2つの種類あるのをご存知でしょうか?

ひとつは、皆さんがよく目にする顧客(患者)を対象にしたマーケティング。
これを正式にはエクスターナルマーケティングといいます。
そしてもうひとつが、内部スタッフに対して行われるマーケティングで、インターナルマーケティングといいます。

エクスターナルマーケティングとインターナルマーケティングは、車の両輪のようなもので、両方をバランスよく行って初めて収益を伸ばすことができるものです。

歯科医院では、口コミが一番の集客方法です。
マーケティングの一環として患者満足度を高めるために、積極的に患者様とのコミュニケーションとっている医院は多くあります。

しかし、インターナルマーケティングで、スタッフとのコミュニケーションに心を砕いている経営者は意外と少ないのが現実です。
これでは強い組織を作るどころか、片輪だけ大きくなると、車が同じところをグルグル回って前には進めないように、経営が空回りしてしまうでしょう。

スタッフと食事や飲みに行くことも大切でしょう。
いわゆる「飲みニケーション」というやつですね。
でも、それだけで十分なコミュニケーションがとれていると思ってはダメです。
お酒を飲むことで仲良くなることはできますが、組織力を高めることはできないからです。
プロ野球だって、たまには選手全員で飲みに行くこともあるのでしょうが、それだけでチーム力が結束されて優勝したなんて話は聴いたことがありません。

実際、いのうえ歯科医院では、飲みニケーションなんてほとんどやりませんが、強い組織を作ることができています。
強い組織を作りたければ、そのためのコミュニケーションをとればいいのです。

インターナルマーケティングとして、スタッフとのコミュニケーションに取り組むこと。

仲良くなるコミュニケーションではなく、組織力を高めるコミュニケーションをとることこそ、重要な部分なので、忘れないようにしてください。

 医療法人社団いのうえ歯科医院
理事長  歯学博士・経営学博士  
井上 裕之 ⇒ http://www.inoue-dental.jp/