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MAIL MAGAZINE メールマガジン

【4】あいた口がふさがらないと、ドライマウスに!

2017年11月20日

こんにちは。

日本大学松戸歯学部の遠藤眞美です。

今回のメールマガジンでは、一般歯科診療所で出会う可能性の高いドライマウスについて連載させていただいています。

第3回の前回は、口腔心身症として間違われやすいドライマウスの原因と対応について紹介しました。

今回は、唾液分泌や口腔粘膜に問題がないにもかかわらず、
「朝、起きると口がカラカラに乾く」という相談について考えてみたいと思います。

なぜ、起床時にだけ乾燥感を感じるのでしょうか。

そうです、口を開けて寝てしまっているからです。

唾液には、「安静時唾液」と「刺激時唾液」があります。

安静時唾液は、活動時に分泌される刺激時唾液に比較して、量が少なくネバネバしています。

活動していない就寝中では、唾液の分泌はほとんどありません。

とはいっても、誰もが就寝中に口腔乾燥を自覚することはありませんよね。

それは、口腔粘膜が活動中に分泌された唾液を保持して潤いをキープしているからです。

粘膜が保湿されている状態を維持しているわけです。

その状態で開口すると、粘膜表面から唾液が継続して蒸発してしまいます。

睡眠中の開口のように長時間にわたり続く場合では、過剰に蒸発(過蒸散)してしまいます。

その際、口呼吸による空気の流れによって、さらに粘膜がカラカラになってしまいます。

症状が強くなると、起床時の乾燥感だけでなく、
「口が乾いて目が覚める」ようになり、眠れないことに不安を抱き始めます。

眠れない毎日が続くと、睡眠導入剤などを服用するようになります。

すると、次回以降にご紹介する薬剤性の唾液分泌低下をともなって症状が複雑になり、対応が困難になります。

一般的に、夜間開口の原因として睡眠時無呼吸症候群などの全身疾患や鼻疾患などがあります。

しかし、私たちが出会う患者さんの多くは、
歯列や咬合異常、口唇の開閉に関連する筋などを中心とした口腔周囲筋のアンバランスさ、
加齢による顎関節の変形による脱臼といった口腔に関する原因が主です。

具体的には、口唇を閉鎖する筋力の低下による開口、
食いしばりなどによる閉口筋の過緊張に対する反動での開口、
肩こりなど舌骨下筋群の緊張による開口などです。

そこで、口腔および口腔周囲筋への対応が重要です。

閉口筋の筋力が低下している場合には、
筋力向上を目指した機能的口腔ケアを実施します。

また、無理なく閉口できるように、
日常生活における肩こりなどを含めた頭頸部周囲筋の緊張のリラックス法を指導します。

その際、リラックス効果を目的にアロマセラピーや、
血行改善のために温泉やホットタオルなどの温罨法の応用も有効です。

前回ご紹介した姿勢指導によって筋肉のバランスが整うこともあります。

咬合状態や食いしばりによる筋肉の過緊張への反動で無意識的に開口している場合では、適切な歯科治療が効果的なこともあります。

改善困難な場合には、
対症療法としてマスクの着用、部屋の加湿、口腔保湿剤の使用など、
患者さん本人が日常生活でできる何かを紹介しますが、
まずは上記に示した原因への対応が不可欠です。

最後に、唾液の過蒸散によるドライマウスは、
口腔周囲筋の廃用が原因で舌骨上筋群と舌骨下筋群のバランスが崩れて開口となっている寝たきりの要介護高齢者の方でもよく出会います。

開口量が大きく、開口時間が長いために、
口腔粘膜表面の唾液が奪われ、カピカピに皮があるように見えます。

これは、代謝して脱落していくはずの粘膜上皮が表面に残った剥離上皮膜といわれるものです。

要介護高齢者の入所施設に伺うと、
この膜を”親の仇”のように除去することに一生懸命な方がいます。

しかし、これを取ることを繰り返しても、
ドライマウスの状態が続けばまた同じ状態になります。

したがって、無理なく閉口できる筋バランスを促すという基本は同じです。

寝たきりによる活動低下や姿勢によってバランスの崩れた口腔および頸部周囲の筋肉を、
根気よくマッサージやストレッチをして口が閉じられる環境をつくっていきます。

「開いた口がふさがらない」とは、
相手の行動に呆れている際に使う表現ですが、
実際に口がふさがらないとドライマウスになることがご理解いただけたのではないでしょうか。

無意識ともいえる夜間の開口を歯科医療者が対応することは困難と考え、
“仕方がないのでがまんしましょう”と答えてきたかもしれません。

しかし、夜間開口の原因の多くは、口腔周囲筋のアンバランスさにあります。

口腔の専門家として、歯科医療者がかかわる責務があるのです。

夜間開口の患者さんに歯科医療者がかかわらないことは、
患者さんから見れば「開いた口がふさがらない」と呆れられるような事実なのです。

夜間の安眠は1日のリズムの中心となり、患者さんの笑顔につながります。

日本大学松戸歯学部障害者歯科学講座
遠藤眞美
http://www.mascat.nihon-u.ac.jp/hospital/guide/9_tokushu.html