2017年10月16日
こんにちは。
日本大学松戸歯学部の遠藤眞美です。
今回のメールマガジンでは、一般歯科診療所で出会う可能性の高いドライマウスについて連載させていただいています。
第1回目の前回は、ドライマウスで困っている方は必ずしも「口の乾き」を訴えて来院しない場合があること、
そして、ドライマウスが原因で何かしら困っている方の訴えやすい症状などについてご紹介させていただきました。
自分には関係ないと考えていた方も、
日常臨床で思いあたる患者さんを思い出されたのではないでしょうか。
では、その患者さんに、どのように対応をしましたか。
「たくさん、水を飲みましょう」と安易に対応したことはありませんか。
実際、大学病院に来院される患者さんからの訴えとして、
「口が乾くのに”喉が渇く”と勘違いされ、水を飲めば治ると相手にされなかった」
というのが非常に多いのは事実です。
また、健康になるために多くの水を飲むのが良いといった情報がメディアなどで注目されているので、医療者に相談することができずに、
患者さん自身の対応策として、心がけて多くの水を飲む工夫を行ってきていることも少なくありません。
しかし、「口のかわき」には2種類の”かわき”があり、
水を飲んだからといって必ずしも改善するとは限らないのです。
水を飲んで「かわき」が解決する状態は、
体が脱水状態で水を欲している状況と考えることは簡単だと思います。
メカニズムとしては、脳の視床下部にある口渇中枢が脱水による電解質のアンバランスに気付き、
「喉が渇いている(口渇)」と自覚させて、水を飲むようにと指令を出した結果です。
この時に感じる「喉の渇き」には、
塩分等の電解質とともに水分の補給が必要になります。
長期的な口渇は、糖尿病などの全身疾患で生じ、
全身状態の改善とともに症状が軽くなります。
しかし、明らかな原因が見当たらないにもかかわらず、
慢性的な口渇を認めることがあります。
患者さんは、「喉の渇き」と「口の乾き」の違いを区別できずに、
口腔の専門家として歯科に相談することが少なくありません。
その場合は、早期に医科受診を促すことも重要な役目といえます。
一方、脱水状態によって「口が乾く」ことはないのでしょうか。
体の循環血液量が減少する脱水では、
唾液を生成する唾液腺房細胞にも唾液分泌を抑制する作用が起きるので、
状態が悪くなったり、長期的になると「口の乾き」の症状が生じます。
したがって、飲水を指導すべきドライマウスかの見極めが大切になります。
何度も言いますが、飲水によって解決するのは「喉の渇き」なのです。
従って、「喉の渇き」をともなわない「口の乾き」には、
水を飲んだところで解決しません。
次回、詳しくご紹介しますが、原因によっては多量の飲水によって、
「口が乾く」症状がより強くなる場合もあるので注意が必要になります。
このように、生活の潤いへとつなげることのできるドライマウスへの対応は画一的ではないのです。
次回からは、「口の乾き」の原因とその対応について詳しく紹介させていただきます。
日本大学松戸歯学部障害者歯科学講座
遠藤眞美
⇒ http://www.mascat.nihon-u.ac.jp/hospital/guide/9_tokushu.html