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【5】あたりまえ 5 :歯科治療はここが怖い!

2017年09月04日

こんにちは!
墨田区で開業しております、杉平(すぎひら)と申します。

このメルマガでは、サービス業としての歯科クリニック運営について、
当院で取り組んでいることをご紹介させていただきます。

当院では歯科治療が苦手な患者さん、
俗に言われる「歯科恐怖症(Dental Phobia)」の患者さんに対する治療を積極的に行っております。

歯科恐怖症には、口腔内に器具を入れると嘔吐反射が起きるような軽度なものから、
歯科クリニックに近づくだけで嘔吐してしまう重度なものまでさまざまな症状があります。

「歯医者が怖いから、なかなか行けなくて……」

と言いながら普通に処置を受けることができる患者さんは、
適切な対応をすれば何の問題もないので、ほとんどの場合問題にはなりません。

そもそも歯科恐怖症は、過去の歯科治療経験のトラウマが引き起こすものです。

重度の恐怖症であるほど、ひどい経験をされていることが多い傾向にあります。

つまり、歯科恐怖症はわれわれ歯科医師が作り出している症状です。

治療も歯科医師にしかできません。

具体的な内容については次回お話しさせていただきますが、
歯科恐怖症は大半が克服できるものです。

今回は、

「患者さんは何に対して恐怖を感じるのか?」

をお話ししたいと思います。

よく聞く話として、以下のようなものが挙げられます。

[1]痛いのが怖い
[2]キーンという音が怖い
[3]歯を削るドリルが並べられていて怖い
[4]何をされているのかわからなくて怖い
[5]麻酔の注射が怖い
[6]説明がグロテスクで怖い

少しだけ掘り下げます。

[1]痛いのが怖いのは当然として、その痛みがいつ来るかわからないのが怖いようです。
[2]タービンの音ですが、この音を聞くと痛いことをされると思うから怖いんです。
[3]患者さんの目の前に最初から切削器具を並べているクリニックは少ないと思いますが、
見ると「私はこれから痛いことをされるんだ」と思って怖くなりますよね。
[4]口腔内は鏡なしで確認することができないうえ、ドレープをかけたりすると視界が完全に奪われるので、
自分が今何をされているのかわからなくて怖くなります。
[5]注射は一般的に痛いので怖いものです。
[6]「親知らずは歯ぐきを切って骨を削って歯を砕いて抜きます」と言われたら、恐怖しか感じません。

さらに、歯科治療のなかでもとくに何が怖いのかを調べた興味深いデータがありますので紹介します。

詳細な評価方法は割愛させていただきます。

以下の項目について怖いと思う処置内容を、
歯科医師側と患者側それぞれの視点でランキングにします。

どれぐらいの怖さかも点数で表します。

・局所麻酔の注射
・普通抜歯
・埋伏歯の抜歯
・麻酔後の有髄歯切削
・無麻酔による有髄歯切削
・膿瘍切開などの小手術
・根管治療(無麻酔による根管貼薬処置)
・印象採得
・修復物合着
・麻酔なしで行える歯石の除去

結果は以下のとおりです。

まずは歯科医師側のランキングです。

[1]埋伏歯の抜歯(78)
[2]膿瘍切開などの小手術(67)
[3]無麻酔による有髄歯切削(60)
[4]局所麻酔の注射(48)
[5]麻酔後の有髄歯切削(42)
[6]麻酔なしで行える歯石の除去(36)
[7]普通抜歯(32)
[8]印象採得(25)
[9]修復物合着(18)
[10]根管治療(17)

先生方も同じ見解でしょうか。

続いて患者側のランキングです。

[1]無麻酔による有髄歯切削(71)
[2]埋伏歯の抜歯(60)
[3]膿瘍切開などの小手術(52)
[4]局所麻酔の注射(48)
[5]麻酔後の有髄歯切削(47)
[6]根管治療(42)
[7]麻酔なしで行える歯石の除去(41)
[8]普通抜歯(37)
[9]修復物合着(35)
[10]印象採得(34)

いかがでしょうか。

患者さんからすれば、麻酔をしてからの外科処置よりも、
無麻酔で歯を削られるほうがよっぽど怖いんです。

突然チクチクしたりする根管治療も、
突然襲ってくる痛みとして恐怖の対象となっています。

拷問がなぜ高い効果を発揮するのか。

人間は痛みに対して恐怖があるからです。

そしてその恐怖はトラウマとなります。

われわれ歯科医師は拷問官となってはいけません。

「痛い? ちょっと我慢して!」

この一言で、歯科恐怖症患者が1人増えます。

歯科医師は痛いことをする仕事ですが、
それが当たり前だと思ってはいけません。

患者さんに痛いことをするのは申し訳ないと思うべきです。

なるべく痛くないように工夫しようと考えるべきです。

次回は最終回になりますが、
当院が痛みに対してどのような工夫をしているのかお話しさせていただきます。

参考文献
1.間宮秀樹、一戸達也、金子譲.歯科治療のストレス評価―患者はどの治療が一番怖いのか―.日本歯科麻酔学会誌 1996;24(2):248-254.

カルミアデンタルクリニック院長
杉平 亮介
http://kalmia-dc.com/