2006年12月18日
一見似ているイメージの言葉ですが民法の条文では違った位置づけがされており、条文の場所も離れたところに書いてあるということをご存知でしようか?
そもそも死因贈与は債権法として「贈与」の中に位置づけられており、契約の一種とされています。契約とは・・・つまり当事者の意思表示により権利の目的物が移転する為の当事者双方の意思の合致により成立するものなのです。つまり贈与契約は贈与者が自己の財産を無償で与えると相手方に伝え、相手方がそれを受諾して初めて成立する有名契約(民法が特に典型的なものとして条文に挙げている契約のこと)なのです。そして死因贈与は贈与契約の条件として贈与者が志望することを条件とする特別のものを言うのです。例えば日頃から面倒をみてくれている次男にすまないと思い「私が死んだらこの預金通帳に入っているお金と金庫にある株券はお前にやるよ!」などと言っていた場合これが遺言に書き留められていなかったとしてもこれを次男が受諾すれば死因贈与契約自体は成立しているわけです。もちろんそれを形のあるものにしておかないと第三者に証明することが出来ず、他の相続人に財産の取得を主張することが出来なくなってしまうのは言うまでもありません。
一方遺贈は民法の親族編にある遺言の規定により定められているもので、死者の最後の意志を尊重するという観点から死者が単独で行うことが出来るものです。つまり受贈者の意思とはかかわりなく成立するのです。但しあくまで遺言の存在が不可欠で、しかも遺言には様々な厳格とも言える有効要件があり、遺言書が民法上の成立用件をみたしていないと無効となってしまいます。簡単に遺言といっても、公正証書遺言や秘密証書遺言を作るには公証役場に言って手続きをしなくてはならないし、費用もかかります。自筆証書遺言はその様な手間や費用はかかりませんが、書き間違えた時の訂正方法が難しかったり、全文、日付、氏名を自筆し、捺印をするという要件を満たさないとなりません。開封についても勝手にすることは出来ず裁判所の介入を要する事になります。しかも保管方法がむずかしく、隠しておけばおいたで誰にもみつからないまま遺産分割が行なわれてしまうということも考えられるのです。
その様に考えると贈与者と受贈者を明らかにし、条件もつけることが出来る(例えば扶養の義務を条件として贈与する・・・といったものです)死因贈与契約は場合によっては、簡単で便利なものであるともいえるでしょう。もちろん死因贈与契約に関しても死をもって契約の効力を生ずるという性質上死者の最後の意志を尊重して、贈与者はいつでも取り消すことができます。
どちらの方法をとるかはよく検討して状況によって決定すべきですが、贈与の場合は贈与税が発生することから一般的にはやはり遺贈が多いようです。