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経管栄養だからではなく、経管栄養だからこそ・・・

2008年01月02日

先日、3歳の重度脳性麻痺児の摂食機能訓練を行おうとしたら、急に嘔吐した。
保護者に尋ねると、1時間ほど前に経鼻栄養で注入したとのこと。ところが・・・・だ。白い嘔吐物は、まったく酸っぱい臭いがしなかった。臭いがしないということは、何を意味しているのか?そう!胃液が出ていない。それでは、どうして胃液が出ないのか?そもそも、経腸栄養剤を胃に注入するだけで、消化吸収が行われるものだろうか?これを生物学的に考えると、少々無理があるように思う。

食物は、口から入り、胃や腸で消化吸収され肛門から排泄される。この一連の流れには順番がある。歯で食物を咀嚼した後、舌尖が切歯乳頭を始点にして嚥下運動が始まる。これが消化器の蠕動運動の始まりだ。

ミミズも蠕動運動によって、前に進むが、体の真ん中から動き出すなんて見たことがない。

腸管の蠕動運動も、舌から始まると考えたほうが理屈に合う。舌が動くことで、食道が動き、胃が動き、小腸が動き、大腸が動く。さらに、唾液が分泌されることで、胃液を始めとした消化液が次々に分泌される。そして蠕動運動で、食物が下部の消化管に送り込まれながら・・・・、さまざまな消化液とかき混ぜられながら・・・消化が進むのだ。

面白い研究がある。出生体重1500g以下の経管栄養児に、おしゃぶりを与えると、体重増加が著しかった。(図1,2)
 
 
図1

 
 
図2

 
 
まさに口が動くことで、すべての消化器官が活性化されることがわかる。口は出発点なのだ。経管栄養や胃瘻を行っているから、口は関係にないのではなく、行っているからこそ口を動かせるアプローチが必要なのである。視点を変えるだけで、物事の本質が見えてくる。
 
 
□■ 岡崎先生のホームペ-ジ http://leo.or.jp/Dr.okazaki/