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低出生体重児と生活習慣病

2007年07月17日

最近、歯周病が早産や低出生体重児の原因となっている可能性が指摘されている。アメリカ・ノースカロライナ大学のオッフェンバッハは、歯肉の健康な妊婦に比べ中・重度歯周病に罹患している場合では、早産や低出生体重児出産のリスクが7倍高いとしている。ちなみに低出生体重児とは、2500グラム未満の新生児である。

さて30年前、筆者が学生時代の頃、平均出生体重は3200グラムと習った。
しかし、平均出生体重は減り続け、現在の教科書では3000グラムとなっている。

これに伴って低出生体重児の割合は1975年には男児4.7%・女児5.5%であったのが、2000年にはそれぞれ7.8%、9.5%まで増加している。この増加原因の一つは、過剰なダイエットである。もう一つが女性の喫煙率の増加や受動喫煙だ。友人の産婦人科医によれば、超音波検査で見ると妊婦が喫煙した瞬間に、ニコチンにより子宮が収縮し、胎児への血液の供給が止まると言う。

ところで低出生体重児は、どのような問題があるのだろう。誕生の瞬間にはダイナミックに世界が変わる。身体が小さいと適応力が弱くなることは言うまでもない。
 
 
(図1)
出生児体重と生活習慣病のオッズ比
 
 
さて最近注目されている説がある。それは生活習慣病との関連だ。生活習慣病といえば、食事や運動との関わりあいを思い浮かべるが、それだけではない。
イギリス・サウザンプトン大学のバーカーは、低出生体重児は成人後、生活習慣病に対するリスクが高くなることを見出した。どうして、数十年も経てから問題が起こるのだろうか?考えられることは、誕生時の身体の状況である。

胎児への栄養は、胎盤を経由して送られる。しかし栄養は、胎児の身体に均等に送られるのではない。優先順位があるのだ。まず生命保持のためのエネルギーが必要だ。次には脳を発達させなければならない。一方、胎児は筋肉を使わないし、老廃物も胎盤を通じて排泄される。そのため筋肉や腎臓への供給は後回しになる。しかも、これらの細胞は出生後増えることはない。そのため細胞数が少ないまま誕生する。腎臓におけるネフロンの数は、100万個といわれているが、低出生体重児では、ひどい場合は約1/3しかないのだ。これでは尿を濾過する時、過重負担になりネフロンが壊される。そうすると血圧が高くなり、またネフロンが壊される。この悪循環が、腎機能を低下させる。

一方、出生時体重の少ないものほど、筋肉にインスリン抵抗性ができやすい。
理屈はこうだ。インスリンは、血液中のブドウ糖を筋肉に送り込むことで血糖値を下げる。しかしインスリン抵抗性があれば、ブドウ糖の供給が少なくても血糖値は一定に維持できる。このような状態の元で、過食が続けばどうなるだろう?血糖値が高くなり、二型の糖尿病を誘発する。

このことから低出生体重児は、出生時だけの問題でなく、長い人生にも影響することがわかる。歯科医師は、歯周病予防や禁煙指導を行うことで、低出生体重児を減らことができる立場にあるのだ。

 

参考:胎内で成人病は始まっている
デヴィット・バーカー著 ソニーマガジンズ
 
 
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