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カール・ルイス選手は何故,矯正をしていたのだろう?

2007年06月18日

カール・ルイス選手は、4回のオリンピックに出場し100メートル走や走り幅跳びで計9個の金メダルを獲得した。なかでもソウルオリンピックでは、矯正をしながら出場したことは有名だ。(図1)
 
 
図1
カール・ルイス
 
 
彼は、コンマ1秒を争うために矯正したと言われている。でも本当なのだろうか?正中離開以外、歯並びに問題はなさそうだ。だから、そこまでする理由がどう考えてもわからない。矯正をすることで、それだけ成績がアップするものだろうか?そこで、大胆な仮説をたててみた。

さて広い公園で目を閉じてまっすぐに歩いてみる。しばらくして眼を開けると左右に大きくずれていることがわかる。これは、足腰にトラブルがある場合でも起こるだろうが、咬合が関係することは明白である。ためしに、目を閉じて顎を右側に偏位させて歩く。そうするといつのまにか、右に傾いて歩いている。反対の場合でも同様だ。これは、歯が身体の左右バランスに影響していることがわかる。

さて100mを走るとき、第1歩が5度ずれてダッシュすると仮定する。これを計算すると、その選手は100m40cm。つまり40cm余分に走らなければならない。この調子で10度ずれると1.6m、20度では6.5m、30度では15.5mとなる。計算は、三角関数のコサインの逆数を求めればよい。

さらに100mを10秒で走る選手であれば、5度ずれれば10秒04、10度では10秒16、20度では10秒65、30度では11秒55かかることになる。左右のバランスが悪いことが、100m走の記録に影響するかもしれない。

これは試験勉強を考えればわかりやすい。例えば平均60点を目指すのであれば、一夜漬けでも取れるだろう。しかし平均70点を取ろうと思うと、日ごろからよく勉強する必要がある。それでは80点をコンスタントに取るためには、どうだろう?70点の数倍の勉強量が必要だ。さらに90点以上では、どうだろう?1点アップするための努力は、生半可なものではない。オリンピックでは、人間の可能性の限界に挑戦している。だから記録をアップさせるすべての可能性を考え、その一つが矯正だったのかもしれない。

さて、ここから先は余談である。この計算をした時、高校時代に習った三角関数が始めて役立った。学生時代、「これが将来どのように役に立つのだろう?」と思ったことはないだろうか?そもそも何故、三角関数を教えなければならなかったのだろう?

実は、これ・・・戦争に関係があったのだ。例えば、何キロ先の敵陣に砲弾を撃つためには、何度の角度で弾を撃てば当たるか・・。この計算のためには、タンジェントの知識が必要だ。戦争中は、これを暗算で計算し砲弾を撃っていたそうだ。

さらに三角関数で面白い話がある。明治時代、東洋の小国である日本が大国ロシアに勝った。これによって日本の名前が、全世界に知れ渡った。この戦争の転機となったのは、日本海海戦。東郷元帥の率いる連合艦隊が、ロシアのバルチック艦隊に勝利を収めた。この理由が、三角関数にあるという説がある。動いている船に向って弾を打つと、着弾する頃には船は遠くに行ってしまう。
12000m先だと弾が届くまでに25秒以上かかる。これではまっすぐに打っても当たらない。そこで敵艦の位置や向きそれに速度、さらには砲弾を打つ角度など、三角関数を用いて計算する。実際、日本軍の命中率は高かったのだが、バルチック艦隊の砲弾は,ほとんど当たらなかった。これ勝敗を分けた・・・つまり数学教育の差が、勝利をもたらしたのである。どうやら、この延長で現在でも、高校で教えられているようだ。こんな話題を聞きながら三角関数を教えてもらったら、よくわかったのにと思うと、いささか残念だ。
 
 
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