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医療法等改正 ~その5~ 『任意後見』

2007年02月05日

日本の総人口に対するお年寄りの割合は、少子化とあいまって年々増加しており、子供のない夫婦にとっては、老後の生活に関する不安は深刻です。

そんな時代背景を反映し、平成12年4月に成年後見に関する制度の法改正が行なわれました。大きく変わった点は従来からあった法定後見人制度に加えて任意後見人制度が定められたことです。これは、身寄りがない人だけでなく家族の世話になりたくない、認知症になりこれから病状が悪化しそうである、子供に知的障害があり心配である・・・という様な場合にも安心して生活することが出来る様、信頼できる人に後見人になってもらうという制度です。

具体的には本人の意思判断能力がはっきりしている間にまず本人が信頼できる家族、友人、弁護士、司法書士などと任意後見契約を締結し、これについて公正証書を作成します。これは法務局に備えられた後見人登記簿に登記されるのです。このように個人のプライベート保護の為、戸籍とは別に編集されているので戸籍をみてもわからないことになっています。

本人は契約の時に特定の事務や財産管理についてのみ委託することもでき、又、複数の後見人にそれぞれの分担を定めて委託することも出来ます。最終的には本人、任意後見人を引き受けた者、4親等内の親族が家庭裁判所に後見監督人の選任を申し立て、その選任がなされた後に正式に後見が開始することになります。

いくら信頼していたり、社会的地位のある人物であってもやはり、後見人だけでは判断をあやまることもある為、常に後見監督人が管理を見守ることになっている訳です。そして後見監督人と後見人が結託して本人の財産を脅かすことを防ぐ為、後見人の配偶者や子供、兄弟姉妹は後見監督人にはなれないことになっています。更に本人の住居として使用している不動産を売ったり、貸したりする場合は必ず家庭裁判所の許可も必要になります。

この様に様々な工夫を施して日本の抱える社会問題を解決しようとする制度改正ではありますが、まだまだ問題が沢山あります。

例えば認知症などの病気の場合、正気のときに依頼していたことも、発作がおきると忘れてしまい大騒ぎになるという話はよく耳にします。又、管理をまかされている人が心の誘惑に負けて、判断能力のない被後見人の財産を横領してしまうという事件も起こりやすくなります。

この様な問題を解決する為に複数の後見人を選任して監視しあうというのもひとつの方法かもしれません。

せっかく身寄りのないお年寄りや、障害を抱えた人を守るためにつくられた制度ですから、これを少しでも多くの人が安心して利用できる制度に育てる様心がけたいものです。