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人を愛し敬う心をデジタル時代にどう持つか

2002年01月07日

新年、あけましておめでとうございます。

昨年は、年末に新宮御生誕という、うれしいニュースが飛び込んできました。

「愛し敬う心 大切に」という願いをこめて「敬宮愛子(としのみやあいこ)」さまとお名前と称号がおくられましたが、僭越ながら、私も、このお名前を大変素晴らしいと思います。

皇太子御夫妻のおこころざしが良く伝わり、可愛らしく、我々にも明るさをもたらしてくれそう、という意見に全く同感です。
 
 
さて、情報社会において、メディアの伝達手段は、アナログからデジタルへ移行する。

それに異論はないことを、前号までに述べました。

また一方で、メディアばかりか、ありとあらゆることが、デジタルで処理され伝達されようとしていることに、抵抗感を持っていること、もしくは慎重でありたいと考えていることも、お話したつもりです。

こういう考えは、新時代にそぐわないでしょうか。
 
 
医療分野において、厚生労働省を中心に、「保健医療情報システム検討会」なるものが設けられていますが、これはいわゆる国が推進している「IT戦略」に歩調を合わせ、医療の情報化を推進しようとすることに他なりません。

「IT戦略」では、行政の電子化と同時に、公共分野の情報化の促進が、大きな柱となっています。保健医療福祉分野は、まさしく「IT戦略」上にあ
る公共分野の代表的な一つなのです。
 
 
医療分野を情報化(いわゆる、医療情報をデジタル技術によりデータベース化する)すれば、大きなメリットがあることは、疑うべくもありません。

第2回保健医療情報システム検討会議事録より拝借すれば、「特に多様で質の高い医療サービスの提供や、効率化を行うための電子カルテをはじめ様々な対策を推進する。」ということでしょう。

すなわち、データベース化すれば記録が恒常化し、誰でもが正確に扱いやすくなる。情報開示、情報管理も容易である。医療の標準化、妥当性あるいは安全性の向上にも寄与するであろう・・・・等々、良いことづくめかもしれません。

いや、ちょっと待って下さい。

医療を通じて、患者に喜んでもらえ感謝される場面は、本当にそんなことでしょうか?

同じ会議で、ある国立病院の院長である委員が、「今までは医師(ここでは歯科医師も加えていただこう)に裁量権が与えられて、医師が良心に基づいて一生懸命やってきたんですが、結果として、医療にばらつきが出たことが明らかになってくると、医師だけにすべてを任せるわけにはいかくなって・・・・。」と発言されていることに注目したいと思います。

今日まで行われてきた反省は、もちろん必要です。

しかし、いままで医療の現場で、患者との信頼関係はデータベース化できない良心により、構築されてきたのではないでしょうか。

一方で、これだけ社会が発展し、デジタル化した情報の重要性が謳われれば、その必要性を認めざるを得ません。

しかし、データベース化できない医療現場での医師の「良心」、まさに冒頭に引用させていただいた皇太子ご夫妻のお言葉、「愛し敬う心 大切に」を維持できるかが重要に感じます。

そうでなければ「IT戦略」による医療改革が行われても、心暖まる医療を国民に提供できないと考えます。