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【3】歯肉縁上歯質は必要?

2017年05月01日

皆様、こんにちは。渥美克幸です。

第3回となる本連載ですが、前回までは総論的な内容をお話ししてきました。

今までの内容を簡単におさらいしましょう。

・支台築造までが歯内療法である
・支台築造にはいくつか目的があるが、大切なものの1つに感染経路の遮断が挙げられる
・生活歯と失活歯は構造自体が異なり、後者のほうが力学的に不利になる
・支台築造体には、象牙質と同じように変形し、かつ象牙質よりも壊れにくい物性が求められるため、ポストには金属よりもファイバーを用いたほうがよい

また、予知性の高いファイバー併用レジン支台築造を行うにあたり、
私は以下の3つが最重要ポイントと考えています。

1)歯肉縁上歯質の獲得
2)ファイバーアレンジメント
3)根管象牙質との接着

今回からこのポイントを1つずつ掘り下げていきますが、
まずは一番目のポイントである歯肉縁上歯質に関して考えていきましょう。

●フェルール?帯環?

歯肉縁上歯質というと、まず皆さんが思い出すのはフェルール(ferrule)だと思います。

このフェルールという言葉ですが、杖や傘などの先端に装着する石突き、
工具の取っ手の先端を補強する金環、配水管の継ぎ手などを意味します。

もしくは、金属や竹でできた輪である箍(たが)と言ってもよいと思います。

これは桶や樽などの外側にはめて締め固めるのに用いるものですよね。

『歯科補綴学専門用語集(第3版)』では、フェルールは以下のように説明されています。

「失活歯の歯冠修復において、歯冠補綴装置が支台歯フィニッシュラインの歯冠側に存在する健康な歯質に適合し、残存歯質を抱え込む部分。フィニッシュラインの上に高さ約2㎜以上の健康な残存歯質があると、その周囲をクラウンの装着によりリング状に把持し、歯根破折を防止する効果(フェルール効果、帯環効果)がある」

ここで注目したいのは「歯冠補綴装置が残存歯質を抱え込む部分」がフェルールである、という記述です。

Academy of Prosthodontics の用語集でも以下のように説明されています。

“a metal band or ring used to fit the root or crown of a tooth ”

こちらにも「 a metal band or ring 」との記述があります。

つまり、フェルール=箍(たが)です。

歯冠補綴装置を支台歯に装着することは桶に箍をはめることと同じであり、それにより歯根破折を防止する効果が得られる、ということになります。

フェルールと歯肉縁上歯質は混同しやすいので注意が必要です。

●コア・ポスト・サービカル

さて、フェルール効果を得るためには歯肉縁上歯質(と歯冠補綴物)が必要なのですが、歯肉縁上歯質には他にも重要な役割があります。

築造が完了した歯は、その部位によってコア、ポスト、サービカルに分けることができます。

コアは歯冠部の築造体、ポストは根管内の築造体、そしてサービカルは歯肉縁上歯質を指します。

そして、それぞれが独自の機能を担っています。

まず、コアの機能は支台歯形態の回復です。

これは支台築造の補綴学的目的のところでお話ししたとおりですが、支台築造の必須要素といえます。

次にポストですが、その機能はコアの保持です。

つまり、ポストがなくてもコアが保持できるのであれば、設置の必要はないとされています(この点に関しては後ほど詳述します)。

そしてサービカル(=歯肉縁上歯質)の機能は、咬合力を支持することだといわれています。

もしこの部分が失われると、咬合力はポストに集中することになり、
楔(くさび)の原理から歯根破折等の失敗につながる可能性が高くなります。

つまり、サービカル(=歯肉縁上歯質)が失われている状態では、
何をやっても失敗する可能性が高い、ということができます。

●歯肉縁上歯質を獲得するために

日常臨床では、処置の繰り返しなどにより歯肉縁上歯質が失われているケースに遭遇することが頻繁にあります。

そのため、さまざまなオプションを駆使して、可能な限り歯肉縁上歯質を獲得していくことが重要です。

その際、当然ながら生物学的幅径に対する配慮が必要で、電気メス等で歯肉切除をして一時的に歯肉縁上歯質を獲得できたとしても、
それは根本的な解決にはなりません。

クラウンレングスニングや矯正的挺出などの技術を習得することで、予知性の高い結果を得ることができます。

それでは、どの程度の歯肉縁上歯質量が必要なのでしょうか。

さまざまな報告があり、単純に比較ができるわけではないのですが、最低でも全周に高さ1㎜、幅1㎜の歯質は必要だと考えられます。

●ポストは必ず必要なの?

歯肉縁上歯質の高さが1~2㎜存在する場合、ポストを設置しなくても高い破折強度を獲得できるとする報告があります。

しかし、歯内療法を行った後の象牙質は薬剤等の影響を受け物性が低下している可能性がありますし、
ポストを設置しない場合、物性の低下した歯肉縁上歯質に大きな負荷がかかることになりますから、
この部分にのみ頼る構造には不安が残ります。

さらにブリッジや義歯の支台歯になる場合や、
パラファンクションがある場合は、その負担がさらに増大する可能性が高くなります。

一方、歯肉縁上歯質量が少ない場合は、ポスト長を長くすることによって破折強度が増す、という報告もあります。

これらを総合し、私は基本的にすべてのケースでポストを設置しています。

●ポスト形成の基準は?

弾性係数の高い(=変形しにくい)金属系ポストを用いる場合の基本原則は、細く長くすることです。

こうすることで可及的に応力が分散され、歯根破折を回避しやすくなります。

また長くすることで保持力が増すため、接着性レジンセメントに比べて維持力の劣る
無機セメント(グラスアイオノマーセメント等)を用いて合着する場合にも有利になります。

しかしファイバーポストを用いる場合は弾性係数が象牙質と近似していること、また接着を前提としていることなどから、
金属系ポストほど長くする必要はないと考えています。

ポスト長については、私なりの(臨床的な)基準がありますが、
これは使用するファイバーシステムにもよりますので、
次回はお勧めのファイバーシステムとポスト長の基準、
そしてファイバーアレンジメントについてお話ししようと思います。

お楽しみに!

[今回のポイント]
・コアとポスト、そしてサービカルの違いを理解することが大切である。
・サービカル(=歯肉縁上歯質)が失われている状態では、何をやっても失敗する可能性が高い。

[参考文献]
1.飯島国好.脱離ならびに歯根破折から支台築造を考える.接着歯学 1999;17(2):119-124.
2.峯篤史.”2013年における”歯根破折防止策の文献的考察.日補綴会誌 2014;6(1):26-35.
3.大祢貴俊.ファイバーポスト併用レジン支台築造のポスト長に関する研究.補綴誌 2006;50(2):180-190.

デンタルクリニックK
渥美 克幸
http://www.dck2010.com/